星南.VS.愛羅 星南編_本気
[目的地に到着しました]
安心してナビを切る。
かやさんと何度かドライブをした愛車を、都合よくあったパーキングエリアに停める。
かやさんを56したあの日が蘇る。
気持ち悪くなる感覚、乗り物酔いだ、きっと。そうだ、そのはずなんだ。
外に出ると薄暗い峠が広がっていた。
ゆっくりと冷や汗が額を伝い、地面に落ちる。
ポケットに手を突っ込むと、”お守り”と小型ナイフが手に当たる。
お守り…かやさんの左手の薬指の骨が入っている。
星南「この指に…結婚指輪…はめたかったな」
同性婚も認められない馬鹿げた世の中に対する愚痴と、叶いもしない願望を吐き出す。
お守りをそっと奥に入れ込み、小型ナイフをポケットの中で握る。
たっぷりと手汗がついた手のせいで、小型ナイフの持ち手は、水に落としたかのようにベトベトになっていた。
心臓の音と同じ速さで呼吸が進む。
ガタガタと情けなく震える自分の足。
ごくりと唾をのみ、峠に一歩を踏み出した。
星南「急がないとッ…愛の花がッ…」
カサッ ギギギッ
星南「ッ!?何!?」
不気味な峠の中から聞こえてくる、変な音。
嫌な予感とふつふつと殺気が沸いてくるのを感じる。
小型ナイフを握り、構える。
愛羅「ッあ…?こ、こんにち…は」
見るとそこには気弱そうな女の子。
峠に入る前の私と…いや、今の私と同じように足がガタガタと震えていた。
星南「あっ…こんにちはぁ!」
「ちょっと~迷っちゃって!」
咄嗟に苦しい言い訳をし、無理やり口角を吊り上げ顔を歪ませた。
相手も同じように顔を歪ませたが、随分と下手な笑顔だった。動揺しているようだ。
愛羅「そそッそうなんですねッ!わ、私は探し物をッ…」
探し物。
その言葉には突っ掛かるものがあった。
かやさんが、取られる。
心を表す白の紙には墨がぐちゃぐちゃに広がっていった。
グザッ
愛羅「ッあ゛ッ…!?なん、で…?」
いつの間にか自分は女の子を刺していた。
ボタボタと流れ落ちる血は、どろりと赤黒く、鼻を刺激する生臭さは、あの時と、かやさんのときと同じ匂いだった。
星南「隙を見せたのが悪いんだよ」
バタりと倒れる”人間だった”肉塊に死体撃ちをするかのように言葉を吐き捨てる。
星南「あんたになんて、絶対、愛の花は渡さない」
「関係ない人ならごめんね」
なんて言葉は一切出てこなかった。
もう真っ黒で隙間もなくなった自分の心には、自分と愛人しかいなくなっている。
愛羅「すごいな…」
ボソボソと肉塊が口を動かしている。
だが、抗う様子もなく、はっきりと聞き取れるような声でこういった。
愛羅「愛人のために、本気になれて、いいなぁ…」
やはり愛の花が目当てらしかった。
それにしても馬鹿げたことを言うんだな、この死体は。
一番初めに出てきた言葉を浴びせる。
星南「愛人のために本気になれない奴なんて、愛の花を求める資格すらない」
そういって彼女のカッターを取り上げ、ポケットに突っ込んだ。
顔を覗き込むと、生気を失った目から涙が流れていた。気持ち悪い。
星南「じゃね、死体と話すだけ無駄だから」
「愛に薄情な奴が、自分に勝てるわけないから」
そう吐き捨てて、また一歩踏み出す。
罪悪感、という感情はなくなり、汚い…違う…違う違う、一途な愛という感情以外は捨て去っていた。
欲望で埋め尽くされた心で、かやさんが嬉しそうにこちらを見つめていた。
さっき小さな女の子がこちらを見ていたのは気のせいかな?
?「人って愛だけでこんなにかわっちゃうんだねぇ!おもしろーい」
「これからはもっと面白くなってくれるかな~!」
愛羅_4亡
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コメント
30件
容赦なく♡♡♡てて笑ったww 出会って3秒で死…恐ろしや…
人が死んじゃった…でもこういうグロいのじゃないと興奮しないよね〜☆
うちの子!!!!うちの子が解釈一致!!! いや申し訳ないななんか、、 舞台がいい味出してらっしゃる