山本麹はテーブルに突っ伏しながら、五条を睨んでいた。
「……先生、ふざけてますよね?」
五条悟はおしゃれなカフェラテを飲みながらニッコリ笑う。
「え?何が?」
七海建人が淡々と説明する。
「今回の作戦内容は、呪霊たちの間で話題になっている『呪霊限定婚活パーティ』 に潜入し、宿儺の指を持つ呪霊を探すというものだ。」
山本は泣きそうな顔で叫ぶ。
「なんで俺が変装して参加しなきゃならないんですか!? どう見ても普通の人間ですよ!?」
五条が優雅に頷く。
「そこは安心して!用意しておいたから、”呪霊専用”の変装キットをね!」
五条はカバンから不気味な布を取り出す。
「じゃーん!この*呪霊スーツ”を着れば、誰でも特級呪霊に早変わり!」
山本は手に取ると、絶句した。
「え…ただのボロボロの布切れじゃないですか…?」
五条がサムズアップをしながら言う。
「見た目はね!でも呪力を込めると…”不気味さ3割増し”!」
七海が腕を組んで無表情のまま言う。
「五条先生、3割増しではなく、100%呪霊に見せかける方法はないのですか?」
五条はニッコリと笑い、爽やかに答える。
「呪霊の世界にも”自信を持つこと”が大事なんだよ。」
山本は泣きそうになりながら服を着る。
「…もうどうにでもなれ。」
会場は、薄暗い廃ホテルの一室。壁には「運命の呪縁を見つけよう!」と書かれた垂れ幕がかかっている。中にはさまざまな呪霊が集まり、自己紹介タイムが始まろうとしていた。
山本はボロ布を被り、ぎこちなく会場へ入る。
「ご…ごきげんよう、みなさん…。」
会場にいる呪霊たちが彼をじろじろと見る。
「どちら様?」
「えっと、俺は…“特級呪霊・破滅の影”です…。」
ざわめく呪霊たち。
「おお、特級!?見た目地味だけど、力はあるのか?」
「……ある…よ」
五条の隠しマイクが入る。
『大丈夫大丈夫、堂々として!』
山本は深呼吸し、無理やり自信を持つ。
「俺は…この世のすべてを…滅ぼす…かも?」
呪霊たちが満足げに頷いた。
「いいじゃねぇか、気に入ったぜ!」
司会の呪霊がベルを鳴らす。
「では、自己紹介も済んだところで、婚活スタート!カップリング成立目指して頑張りましょう!」
山本は戦慄する。
(なんで呪霊たちが真剣に婚活してるんだよ…!)
最初にやってきたのは、異様にベタベタした呪霊・粘鬼(ねんき)。
「ねえねえ♡ どんな呪い方するの?」
「えっと…その、呪術、初心者です…。」
「ダメだね、それじゃ。バイバイ。」
次に現れたのは、異常にマッチョな呪霊・腕滅(うでめつ)。
「特級って、筋力すごいのか?」
「いや、僕は…こう…メンタル系で…。」
「ダメだな。次だ!」
(くっ…普通に婚活ムズいじゃん…!)
そんな中、ついにターゲットと思われる呪霊が現れる。
「宿儺の指を持っている」と噂される呪霊・縛呪(ばくじゅ) が山本に近づいた。
「君、特級にしては呪力が弱いな…何か隠しているだろう?」
五条のマイクが指示を出す。
『適当に誤魔化して、宿儺の指のありかを聞き出すんだ!』
山本は震えながらも、精一杯の笑顔を作る。
「そ、そんなことないですよ!ところで…君、噂で聞いたんだけど…宿儺の指とか持ってるの?」
縛呪はニヤリと笑い、ポケットから黒ずんだ指を取り出した。
「フフ…よく分かったな。そう、これが宿儺の指だ。」
山本は内心ガッツポーズをしながら、震える手で指を指差す。
「へぇ~…すごいねぇ…。」
その瞬間、五条の声が無線から響く。
『よし、回収だ!』
会場の天井が突如吹き飛び、五条と七海が乱入。
五条がサングラスをキラリと光らせる。
「はいはーい、指の回収に来ました!」
縛呪が叫ぶ。
「貴様ら、騙したな!!」
山本は全力で叫ぶ。
「騙すも何も、俺、人間だーーー!!」
七海が即座に戦闘態勢に入り、縛呪を拘束。五条が指をさっさと回収する。
「山本くん、婚活はどうだった?」
山本が崩れ落ちながら答える。
「二度とやりたくないです…。」
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