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月白
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#コメディ時々暗闇
奏音•*¨*•.¸¸♬︎💙
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「……くっ、この重圧……マジで重いって!!」装甲の内側で、僕は歯を食いしばった。
見た目はゴツい漆黒のヒーロー(魔道士カブト)として格好良く構えているものの、生身の身体にかかる圧力はハンパじゃない。足元の道路がバリバリと音を立てて陥没していく。
目の前にそびえ立つ四本腕の巨漢怪異――そいつの拳を受け止めている胸部装甲からは、バチバチと紫色の重力スパークが弾けていた。
『おい太一! 踏ん張れボケ! 威勢のいいこと言っておいて押し切られたら笑いものだぞ!』
右肩に固定されたカブーが、耳元でガミガミと叫ぶ。
「わ、分かってるよ! でもこれ、相手の重力が重すぎて……反動を跳ね返すのに全身の魔力が持っていかれそうなんだ!」
「無駄よ」
上空、巨漢の肩に乗った巫女服の少女――ミレイが、冷酷な瞳で僕を見下ろしていた。
「私たちの重力は、絶望と怨嗟の重み。魔法少女なんていう甘い妄想に浸ったあなたの『軽い願い』で受け止めきれる筋合いのものではないわ。そのまま押し潰されなさい」
ぐぐぐ、と巨漢の残りの三本の腕が持ち上がり、僕の頭上から同時に振り下ろされる!
(くそっ……! 絶望とか怨嗟とか、知るかよ……!)
視界の端で、さっきまで僕が呑気に飲んでいたジュースの紙パックが、無残にペシャンコになっているのが見えた。
――思い出せ。僕がずっと憧れてきた魔法少女たちの姿を。
彼女たちはいつだってそうだった。
どんなに強大な悪が絶望を押し付けてこようと、どんなに理不尽な重圧に晒されようと。
「可憐な笑顔」と「絶対に諦めない心」で、その絶望をまるごと光に変えて跳ね返してきたんだ!
僕の姿は、フリルもレースもないゴツい仮面ライダーかもしれない。
だけど――**心まで絶望に屈してたまるか!!**
「僕の願いは……軽いんじゃない! **どんな重さにも負けないくらい、輝いてるんだよぉぉぉぉっ!!**」
僕の叫びに応えるように、胸の奥から湧き上がったのは、ドロドロした重力魔力……ではなく、バカみたいに真っ直ぐでピュアな「魔法少女への情熱」だった。
**ドゴォォォォンッ!!!!!**
「なっ……!?」
ミレイの目が見開かれる。
振り下ろされた巨漢の三本の拳が、僕の頭上数センチの「空間」に触れた瞬間――。
僕が展開した重力場(ヴェクター・カウンター)が、限界を超えて虹色(※本人の主観)の閃光を放った。
『重力偏位・絶対反発(グラビティ・ヴェクター・バースト)!!』
カブーの叫びとともに、巨漢が放っていた膨大な「絶望の重力」が、そのまま丸ごと『真上』へとベクトルを反転されて弾け跳んだ。
「グギャアアアアアッ!?」
巨漢の四本の腕が、自らのパワーの反動で一瞬にして逆方向にへし折れる!
それだけじゃない。反転した衝撃波は、巨漢の巨体ごと上空へ向かって激しく吹き飛ばした。
「くっ……!?」
ミレイも浮遊魔法で間一髪、巨漢の肩から飛び退く。
空中に打ち上げられ、無防備に体勢を崩した巨大な怪異。
「カブー! 今だ、空へ飛ばして!!」
『チッ、言われなくても分かってわ! 魔力残量注意しろよアホ!!』
**フワッ……!!**
足元を縛り付けていた重力が消え、僕の身体が無重力状態になる。
重厚な黒い装甲のまま、僕はロケットのような勢いで空へ跳躍した。
風を切り、夕焼けの空を舞う。
地上から見れば、ただの黒い鉄塊が高速移動しているようにしか見えないかもしれない。
でも、この瞬間――空中を自在に滑空するこの感覚だけは、間違いなく僕の憧れた「魔法少女」の軌道だ!
「手加減なしだ……! **プリティ・グラビティ・ドロップーーーッ!!**」
「だから技名がダサいし似合わねぇんだよ!!」
上空から、無重力を解除すると同時に全重力を自分と敵の真上へ集中させる。
彗星のような勢いで急降下し、空中で身悶えする巨漢の脳天へ、重力圧を乗せた踵落としを叩き込んだ!
**バチィィィィィンッ!!!!**
**ズドォォォォォォンッ!!!!!**
空中で炸裂した重力波が、巨漢の身体を木端微塵に粉砕する。
黒い霧となって消滅していく怪異の残骸を置き去りに、僕は地上へと舞い降りた。
(着地……! 今度はちゃんと着地する……!)
ドスン、と両足で地面を踏みしめる。
今度は頭から突き刺さることなく、スタイリッシュなヒーロー着地を決めることができた。
「ハァ……ハァ……! 見たかカブー! 完璧な勝利だ!」
『……へっ。最後の蹴りだけは、まあまあだったんじゃねえの』
肩の上で、カブーがフンと鼻で笑うように角を鳴らした。
満足感に浸りながら振り返ると、少し離れたビルの屋上に、黒い巫女服の少女――ミレイが降り立っていた。
彼女は驚愕と、どこか忌々しそうな表情で僕を見つめている。
「……信じられない。怨嗟の重力を……ただの『妄想の軽さ』で上書きして跳ね返すなんて……」
「ミレイ……さん、だっけ?」
僕の装甲の複眼バイザーが、彼女をまっすぐ見据える。
「君たちがどんな『重い事情』を抱えてるのかは知らないけど……! 誰かの日常を壊すような絶望なんて、僕が全部跳ね返してみせる! だってそれが、僕の憧れた魔法少女(ヒーロー)だからね!」
「……フン」
ミレイは冷ややかに鼻を鳴らすと、黒いローブの裾をひるがえした。
「言っておくわ、狭間太一。今のはほんの挨拶代わり。私たちの主……『虚重の魔王グラヴィア様』の絶望は、そんな甘い言葉で跳ね返せるほど軽くはないわ」
空間に不気味な紫色の亀裂が走り、彼女の身体を呑み込んでいく。
「また会いましょう、哀れな仮面使い」
残捨てられた言葉とともに、彼女の気配は完全に消え去った。
◇
「……ふぅぁぁぁぁぁ疲れたぁぁぁぁぁ!!」
変身を解除した瞬間、僕はその場にヘタッと座り込んだ。
全身の筋肉が悲鳴を上げている。魔力もすっからかんだ。
「もうダメ……お腹空いた……歩けない……」
『情けねぇ声出すなボウズ。ほら立て、ルミナス庁の監査官が来ちまうぞ』
「無理だよカブー……肩貸して……」
『俺はカブトムシだぞバカ! 潰れるわ!』
夕暮れの街で、僕と毒舌虫の不毛な口喧嘩が再び始まる。
敵サイドに完全に目をつけられたこと。
そして「魔王」なんていうヤバそうな存在がいること。
これからの戦いがどんどん苛烈になっていく予感に身震いしながらも、僕はポケットの中のカブーをそっと撫でた。
(……でも、ちょっとだけ『魔法少女』に近づけた気がするな)
「おい太一、何ニヤついてんだキモいぞ」
「ニヤついてないやい! 早く帰って焼きそばパンの残りの食べるの!」
憧れと現実の狭間で揉まれながら、僕の「魔道士カブト」としての戦いは、まだまだ続いていくのだった。
コメント
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うわ、めっちゃ熱かった…! 重力を跳ね返すシーン、鳥肌立ちましたよ。「心まで絶望に屈してたまるか」の叫びが、まさに主人公の信念そのもので。ゴツい見た目でも魔法少女の魂は本物って感じがたまらなかったです。カブーの毒舌も相変わらず良い味出してますね。次回、魔王グラヴィアとの戦いがどうなるか、もう気になって仕方ないです!