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8 - 第7話「過去の話をしよう」

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2023年08月21日

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優side


『君のせいだよ』


俺の方をみてそう言った。冷たい言葉とは裏腹に、目はどこまでも優しく、でも必要以上の感情は遮断されている。


天音だけど、天音じゃない。


天音)君が天音を名前で呼ぶから、混乱した。自分が分からなくなった


優)……


天音)安心して。一瞬だけだから


優)…天音は、二重人格なのか?


天音)違うよ。ただ、最大限に俯瞰してるだけ


俯瞰。高いところから見おろすこと。全体を上から見ること。ビジネスでは、ものごとの一部ではなく、全体を見る事として使われる。


今の天音は、そういう状態……。自分を客観視してるって解釈の方が飲み込みやすいな。


優)…分からない


天音)何が分からないの?


優)天音のことだよ。いくら取り乱したところを見られてしまったとはいえ、昨日会ったばかりの俺にそこまでさらけ出して良かったのか?


あの取り乱し方。ただ混乱しただけなのか、もしくは過去に何かしらに巻き込まれたのか……。


天音)それは……


優)クラスメイトを見た感じ、こっちの天音を知らないんだろ?先生はどうか分からないけど


天音)……


優)どうなんだ


天音)そんなに問い詰めないでよ。私も色々と頭の中を整理してるの


優)っ、悪い……


少し焦り過ぎたな。落ち着こう。


天音)気にしてない


天音)君の考えは合ってるよ。付け足すなら、先生はこのことを知ってる。全員じゃないけどね


優)…担任か


天音)正解。あとは校長先生もだよ


優)え、校長も?


予想外の人物に耳を疑うが、ここで天音が嘘をつくとも思えなかったから、疑問を飲み込む。


天音)うん。これは中学3年生の頃に起こったことだしね


優)受験期に何かあったのか?


天音)いや、それは関係ない


優)じゃあ、何が原因なんだ?


天音)私、中高一貫の学校に通ってたんだけど、その時の先生が……


不自然に言葉が途切れた。天音は俯いていて表情が見えないが、身体が震えているのが分かる。


優)…天音、話したくないなら無理に話そうとするな。これは尋問じゃない


優しく語りかけるように言う。暫くして天音も落ち着いてきたのか、天音はそっと顔を上げた。顔色は悪そうだが、震えは止まったようだ。


天音)っ……ありがとう。でも、話すよ


天音)優くんなら、私も変えてくれるかもしれない存在だから


優)それって、どういう…?


天音)続けるね。その先生は、ある生徒に対して凄く執着してて───


天音の口から出たのは、あまりにも惨い出来事だった。



優)……それは、酷いな


天音の話はたどたどしく、何度も同じことを繰り返して言っていて分かりにくかったから、簡潔にまとめる。


・その生徒は精神を壊したこと

・今も病院で入院してること

・学校がトラウマになってしまったこと

・筆記用具を触れなくなってしまったこと


中学生にやることじゃない。想像しただけでも吐きそうになる。


優)その先生はどうなった


天音)普通に教職員として働いているよ


優)それ、大丈夫なのかよ


天音)暫くは監視もあるよ。確かに、人としてどうかと思うけど、教え方はかなり上手だからね


優)そうかもしれないけど……!


───納得いかない。


第三者である俺は何も言えない。何かしら動いたとしても軽くあしらわれるだけだろう。


天音)ねぇ、優くん!


優)うおっ……なんだいきなり


てか、抱きついてくんなよ。これが高校生の距離感なのか?


天音)明日はお仕事ある?


優)ある


天音)えー!そこは嘘でも『ない』って言ってよ!


優)耳元で叫ぶな。仕事なんだから、仕方ないだろ


天音)うぅ……そうだけど〜!


やだやだと駄々っ子のように暴れる天音に呆れながら、少しは元気になったことに安堵する。それはそれとして、うるさいけどな。


優)…来週の日曜なら、空けておくから


天音)えっ!?


優)…なに


天音)い、良いの……?


急に遠慮すんなよ。なんだ、あんなに駄々こねてたのは演技なのか。女優にでもなる?


優)今までは友達がいな……かったこともないけど、仕事の方を優先してたからな。マネージャーに頼めば、プライベートを優先させてもらえる


俺にも友達はいる。いる……よな?


天音)優くん、有名人じゃないもんね!


優)うるさいっての。これから有名になるし



天音side


ふと、優くんの言葉をもう一度脳内で再生する。


『今までは友達がいなかったから、仕事の方を優先してたからな。マネージャーに頼めば、プライベートを優先させてもらえる。』


天音)……はっ!


友達いない→「天音は友達」

仕事優先→「天音の方が大事」

プライベート→「天音といると落ち着く」


<天音、俺と結婚しよう!>


……なるほど!優くんは私と結婚したいんだね!


天音)優くん……!


優)なんか変な方向に行ってない?


天音)私のことをそんなに愛してくれてたなんて!


優)おい、どうしてそうなった


天音)大丈夫!優くんを幸せにするよ!


ぎゅっと優くんの両手を握ると、何故か諦めた顔をした。


優)…うん。それで良いや


その言葉と共に、チャイムが鳴る。慌てて時計を見ると、授業開始まであと5分しかなかった。


天音)えっ、もう5分前!?


優)急ぐか


天音)うん!



優side


───元気そうだな。このままだと良いが……。


優)いや、今気にしても仕方ないな


「すーぐーるーくーん!!!!!」


優)走るの速いな!?


生徒会なのに、意外と廊下走るんだな。



「へぇ…楽しそうに学校生活遅れてるじゃん」


走っていく優の後ろ姿ををみて、嬉しそうに目を細めた人がいた。




続く

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優くんはツンデレなのか……(??)

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