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傷ついた心、君のせい

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傷ついた心、君のせい

40 - 第40話 涙の理由

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2025年04月25日

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卒業式の日。三咲は制服のまま、校舎裏の桜の木の下に立っていた。舞い落ちる花びらが、まるで祝福のようにも、別れの涙のようにも見える。


そこへ、智也がやってきた。彼もまた、最後の言葉を伝えに来たのだ。


「……三咲。」

「……来ないと思ってた。」


三咲は微笑んだけれど、その目にはすでに涙が溜まっていた。


「卒業、おめでとう。」

「ありがとう。でも、素直に喜べない。」


智也は少しうつむいて、ぽつりと口を開いた。


「俺さ、ずっと逃げてた。自分の気持ちからも、現実からも、責任からも……。でも今やっと気づいたんだ。好きって気持ちだけじゃ、人を幸せにできないんだって。」


三咲はゆっくりと首を横に振った。


「違うよ。私は……あなたに出会って、たくさん泣いて、たくさん笑って、それでも後悔してない。」


その瞬間、智也の目にも涙が浮かんだ。


「俺はもう、君にふさわしくない。だから——」

「バカだね、最後まで。ふさわしいかどうかなんて、私が決めるのに。」


そう言って、三咲はそっと彼の手を握った。でも、その手はすぐに離れた。


「……でも、もういいの。好きって気持ちだけじゃ、やっぱり一緒にはいられないよね。」


言い終わったと同時に、三咲の頬を涙が伝った。それは、初めて素直に流した、彼への最後の涙だった。


「……ありがとう。大好きだったよ、智也。」


智也は何も言えず、ただその場に立ち尽くした。彼の胸に残ったのは、悔いと愛と、そして、失ったものの大きさだった。


三咲は背を向けて、桜のトンネルの中を歩き出した。


涙の理由は、悲しみだけじゃない。

あの日、本気で人を愛した証が、今の自分をつくっている——

そう信じながら、彼女は春の光の中に消えていった。

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