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春  の  花  を  摘  ん  で _

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春 の 花 を 摘 ん で _

6 - 第6話 #6

♥

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2025年09月24日

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⚠長い











侑視点






「侑はそのままでええよ。いつか分からせたるから」

「はぁ?なんやねん、それ」


少しの沈黙のあと、治がお客さんに呼ばれてパタパタと厨房を出る。


「今行きますー!」


時計を見るとまだ6時前で、今から混む時間なのに一人で店を回すのは大変やろなと勝手に同情する。

早くバイトを雇えばええのに。忙しいから彼女も作れん言うとったやん。


「侑」


先程の客の会計が終わったようだ。


「簡単なことでええから、ちょっと店手伝ってくれん?今日バイトくん休みなんよ。飯も食い終わったやろ?」

「え、バイト雇ってたん?」

「おん。そっちの方が侑との時間もできるやろ?」


はぁ?コイツほんまに…


「お前思わせぶりえぐいで。だからしょっちゅう豚に連絡先聞かれんねん」

「侑にしか言わへんよ。思わせぶりちゃうし」

「意味わからん..」

「で、やるか?」

「おん、暇やし。そん代わり明日もおにぎり握ってな」

「元からそのつもりや」


そう言い残し、厨房の奥へ消えていく。少しして戻ってきた治は、黒い服とキャップを手に持っていた。


「これ着て欲しいんやけど」

「おぉ..✨」

「おに宮の服一式。侑は接客とか会計とかやってもらうから、嫌やったら帽子は被らんでもええよ。俺のサイズやから、でかいかもしれへんけど我慢してな」


ワクワクしながら服を受け取る。かっこええなってちょっと憧れとったから、着れるのは嬉しかった。




「どお?」

「……あかん」

「え、似合ってへん?俺的には結構ええと思うけど…ちょっとTシャツはでかいけど」

「いや、似合っとるで。でも似合いすぎやねん」

「?じゃあええやん」

「…..まあ今回は着替えてもうたからええよ。でももう一生着させん。着んなよ」


ぐわんぐわんと真顔で肩を揺らしてくる。遠心力?で首もげそうや。パワー4なのは今でも衰えていないようだ。


「わかった!わかったからやめろ!」

「お前にはちゃんと釘刺しとかへんと」


食ったばっかでそんなに揺らしたら吐くて!

俺の気持ちを感じ取ったかのように、ピタリと手が止まる。


「あ!こんなことしてられへん!はよ準備せなお客さん来る」


そう言い、またもや厨房の奥へと消えていく。全く忙しないやっちゃな。

せっかくおに宮の手伝いを任されたのだ、俺も何かやろう。店内を見回すと、さっき店を出ていった客が使った皿が放置されていた。まずはあれから片付けるとするか。

家ではほとんど家事はしないかが、流石に皿洗いくらいはできる。


治の居ない厨房でがちゃがちゃと食器の音が響く。水を出し、食器用洗剤をスポンジに垂らす。

始めようとしたその時、後方から手が伸びてきて、俺の腕を掴んだ。


「侑!危ないからやめえや」

「おさむ..」


突然な至近距離に身構えてしまう。てか皿洗いが危ないってどゆこと?


「心配せんでも皿洗いくらいできるっちゅーねん。いくつだと思とるん」


さっきのやつと言えど、バカにしすぎやねん。


「セッターなんやったら、手ぇ大事にせえや。洗剤で手荒れてまうよ。それにもし皿割れて怪我でもしたらどないするん。俺はそんくらい侑を大事にしてるんやで 」


“ 侑を大事にしてるんやで “

このワンフレーズが脳内で何度も繰り返される。治は少し荒れてカサついた手で俺の頭を撫でる。どの口が言っとんねん。自分の手も大事にできてないくせに。

それとも、自分よりも俺のことが大事だと言うのか。勝手な解釈だとは分かっているが、少し期待してしまった。

あぁ、ほんまにずるい。治の甘い沼にずるずると引き込まれる。ちゃんと決心してきたはずやのに。あかんなぁ..


「テーブル拭き頼める..って、ふっふ、..顔りんごみたいになっとるで」

「う、っさい」

「嬉しかったん?照れとる侑も可愛ええ」

「は、はぁ?お前ほんまに、人でなしや..」

「ほんまのこと言っただけなんやけどなぁ。ほれ、はよ動かんとお客さん来てまうで 」

「お、おん」


布巾を俺に手渡し、食器を洗い進めていく。機嫌がいいのか、鼻歌まで歌いながら。




がらがらっ


ちょうどテーブルを拭き終えたところに、お客さんが2名入ってきた。


「あらぁ〜、治くん、この子弟さん?すんごい似とんなぁ。お店のお手伝いなんて偉いなあ 」

「そうなんです、7つ下で。今日は特別に手伝ってもろてるんですよ」

「ええな〜、兄弟仲良おくて!」


60代くらいに見えるこの女性らは、きっと常連客なのだろう。ヒョウ柄の服は、なんとも関西人を彷彿とさせる。


がらがらっ


立て続けに3組ほどお客さんが来店する。そのあともどんどんとお客さんが来て、休む暇なく働いた。


客足が少なくなったのは午後9時頃で、もうすぐ店を閉める時間だった。


「ふー、侑、お疲れさん。今日はありがとぉな」

「結構疲れたわ」


︎︎ぐぅぅ…


「腹減ったん?」

「あぁ、いっぱい動いたからな」


ぐごぉぅぅ…


「治の腹の虫えぐ…」

「いっぱい働いたからなぁ。余りもんでええなら出すで」

「食いたい!」


出されたのはだし巻き玉子と、さっき食べ損ねたピリ辛きゅうり。2つとも俺のお気に入りメニューだ。


「米も食いたかったらあるけど?」

「ほしい!」


もんもんと湯気がたつ真っ白な米。ますます腹減ってきた。


「「いただきます!」」


2人で向かい合って手を合わせる。治は相変わらず1口がでかい。1口が大きい分、口を大きく開けるから、口内がチラリと見える。綺麗な歯並びに、真っ赤な舌。目が惹き付けられてしまう。


「ん、どしたん?」

「ぁっ、いや、なんでも…」

「そおか。侑もどんどん食べてや。自分で言うのもなんやけど、美味いで」

「お、おんっ!」


まずはだし巻き玉子を1口。じゅわっと口の中で溶ける。


「んふっ..うまぁ…」

「ふっふ。美味いやろ?…俺、美味そぉに飯食う子が好きやねん」

「そ、そおなん」


治もいっぱい食うもん。そぉいう子なら、お似合いやろな。


「治ならすぐいい人見つけられるやろ。はよ彼女作りや」


そしたらきっと


「そろそろ歳なんやし」


忘れられるから_


「俺に彼女できてええの?」

「..え?」

「ほんまに彼女作ってまうけど、ええの?」

「ぁ、いや、..ええけど 」


そう聞いてくるってことは、やっぱりええ人がいるってことなんかな。

じゃあ、さっきのはなに?俺のためにバイト雇ったり、大袈裟なほど俺のことを大事にしてくれたり。思ってもないこと口にしてたん?どおなん治…


「俺な、好きな子おんねん」

「..うん 、  」


そんな話聞きたない..


「その子な、バレーやってんねん。元気で、よく食べて。俺の飯が世界一や言うてくれたこともあんねん。でもちょっと抜けとるとこもあるんや。バレー以外ではほんまにポンコツやし、人の好意にも気づけんくらい鈍感なんやで。そんなところも可愛ええけど(微笑む」

「…そ、その子にアピール、しとんの?」


本当は聞くべきではなかったのかもしれない。どうしても気になってしまったのだ。


「アピールの真っ最中や。この前は一緒に寝たしな」

「へぇ…もう、付き合えるやん…」


治にアタックされて落ちない女は居ない。それほどいい男なのだ。男で、さらに兄弟の俺も見事に沼にはまった。そんな治に猛アタックされて。その女は幸せやろなぁ。そんなやつより俺の方が治を愛しとるって、胸張って言えたらええのに。この世界も、治も、みんな残酷や。


「侑、なに泣きそうなってんねん〜、どしたん?」

「ずびっ…泣きそうになってへんし.. 」


治のことなると情緒おかしなるわ、俺..


「この話されて泣くほど嫌だったん?…ほんま可愛ええ..」

「ふざけんなや、勘違いも甚だしいで…ずずっ」

「そろそろ正直になれや、自分の気持ちに。やないと、俺どっかに行ってまうよ?」

「..なんのことやねん…」


はぁ、と大きいため息ひとつ。次の瞬間、目の前が治の顔でいっぱいになる。ハッとした時にはもう遅かった。ちゅうっと口を塞がれる。


「んッ_!?…..治、?」

「…ゆでだこ(笑」

「は、はぁ?..なんで、キス..//」

「好きな人にアピールしたらあかんの?」

「えっ..治、俺んこと、好きなん?」


やっと気づいたんや、って知らんわボケ。え、じゃあ俺、考えすぎてただけなん?


「早く言えや..」

「やってなぁ?色々悩んどる侑も可愛かったで」

「なっ..!ほんま性格悪い!」

「そんな怒らんでや。折角両思いになれたんやし、」


もっかいちゅうする?


「…する、..// 」


やはり治には敵わない。


ふっふ、一生離してやらんからな?


って、それはお互い様や。


俺だって、一生離してやれん。


せいぜい惚れたことを恨んでや


侑♡

治♡








END










やっと書き終えましたぁー!この1話でめっちゃ時間かかった笑

過去一長かったかも(約4000字)


最後の

侑♡

治♡

ってあるじゃないですか?分かりにくかったと思うんですけど、「せいぜい惚れたことを恨んでや」というのを2人が心の中で言っているのが書きたかったんです😣どう書けばいいか分からなかった…さーせん


次の投稿は「𓏸𓏸×治侑」のリクか、「ホントノキモチ_.」の続編ですね!


新作もだんだん考えてるんですけど、ひとつみんなに聞きたいことがあって..

侑くんの女体化が苦手な人いますか?人魚パロとか、色々書こうと思ってるんですけど、どうかなーって思いました。

ぜひ、答えてくれたら嬉しいです😭


じゃあ、ばいばーい👋










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