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呼吸が荒い。 足も腕も鉛のように重くなっていた。
前方から二体、背後から一体。
魔人たちの白濁した眼球が、暗闇の中で不気味に光る。
(数が……増えてる)
汗が顎を伝い、地面に落ちる音すらやけに大きく響く。
足元の黒いエーテルが、じわじわと視界を侵食してくるようだった。
【残り時間:0分05秒】
前の二体が同時に跳びかかってくる。
咄嗟に腕を上げ、首元への爪撃を逸らす──が、衝撃が肩に残り、体勢が崩れた。
【残り時間:0分02秒】
(もう一撃来る──)
【残り時間:0分00秒】
次の瞬間、世界が無音になった。
魔人たちの動きが、糸で吊られた人形のように停止する。
【サブシナリオ〈途切れた橋〉が終了しました】
【生存者数:5名】
淡い光のパネルが目の前に浮かび、そこに無機質な文字が並んでいく。
【あなたは生命を3体殺害しました】
内訳:魔人 3体
【追加報酬:コイン+300】
【今回までの総獲得コイン:3100】(※前シナリオ分含む)
(……まあ、悪くない)
だが俺は、パネルを閉じた。
ここで安易に使えば、次のシナリオで詰む。
(契約拒否で支援は少ない。なら、使いどころはもっと先だ)
【一部の観測者が、あなたの慎重な選択に感心しています】
再び音が戻る。
気づけば、魔人たちの姿はすべて霧散して消えていた。
代わりに、耳障りなほど甲高い声が響く。
ドゲ「おめでとうございます、生き残った皆さん! いやぁ、予想以上でしたよ〜」
軽い口調とは裏腹に、その目は冷たく光っていた。