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「ど……、どうしてこうなったんだ……」
夜の山道を歩きながら、土井半助はうっすらと汗ばんだ額をぬぐった。手には懐中電灯。傍らには、制服のポケットに手を突っ込んだまま無言で歩く高校三年生──山田利吉。
空には星がちらつき、虫の声が静かに響いている。が、それらの風情も台無しになるほどに、あたりの空気は不気味だった。
すべては、夕食後の学園長のひとことから始まった。
『夏といえば肝試しだろう! 先生方も参加して、楽しい思い出を作ってきなさいっ!』
──って、楽しい思い出どころじゃないだろ!
教師陣も生徒も突然の指令に困惑したものの、学園長のご機嫌を損ねるわけにもいかず。仕方なく急ごしらえの肝試し大会が開かれることになった。
さらに輪をかけてひどいのが、
『ペアはくじ引きで決めるぞ! 公平にな!』
その“公平なくじ”で、土井半助は高校三年の生徒・山田利吉と組まされてしまったのである。
「……利吉くん、肝試しとか、平気な方?」
そっと声をかけてみると、利吉はほんの一瞬だけ、目をそらした。
「……まあ、大丈夫だと思います」
その“思います”がすごく不安なんだが──。
土井は苦笑しながらも、内心では「頼れるのは君だけなんだからな……」と必死に自分を奮い立たせるのだった。
しかし、数分後。風に揺れたカーテンがふわりと彼らの視界に入った瞬間──
「うわああっ!!」
「ひゃっ……!?」
叫び声が夜の山中にこだました。
土井は利吉の腕にしがみつき、利吉は土井の袖をぎゅっと掴んでいた。
「ど、土井先生、今のは布です……カーテンです……!」
「わ、分かってるよ利吉くん! でも急に揺れたらびっくりするだろ!?」
「わ、私だって……怖いんですよぉ……!」
互いの腕をがっちりと掴み合ったまま、震える2人。
学園長が言う「楽しい思い出」は、すでにトラウマ案件になりつつあった──。
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