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ここは侍の国大和。地域は首都であり帝の住む京と、剣豪集う里の武蔵、農耕の里の吉備、雪山の里の羽奥、漁業の里の荘嶋、猛獣の里の足柄に分かれていた。荘嶋の浜から15町ほど(約1649メートル)離れた場所には鬼牙島といういかにも鬼が住んでそうな無人島がある。物語は吉備から始まる。
吉備にはおじいさんとおばあさんが住んでいた。おじいさんは山へ竹を取りに、おばあさんは川へ洗濯をしに行った。二人の姓は茂竹。周りからは茂竹の翁や茂竹の媼と呼ばれていた。
茂竹の翁「やれやれ。山を歩くだけでこれほど疲れるとはすっかり体の衰えを感じるのう。お、あそこにいるのは花咲じゃないか。お~い。花咲~。」
花咲とは、茂竹の親友であり、ポチという犬を飼っているおじいさんである。
花咲の翁「これはこれは茂竹ではないか。こんなところで会うなんて奇遇だな。竹細工の仕事はどうだ?たくさん儲かっているのではないか?」
茂竹の翁「いやぁ、最近は体力の衰えからか、竹をとるのは一日に一回が限界じゃ。それに、最近は手が思ったように動かず、納得の品を作ることができん。昔は武蔵の侍も気にいる品も作れたが、その依頼もないし、もう潮時かもしれんな。そういえば、ポチが掘り当てた金銀財宝はどうした?」
花咲の翁「いやあ、わしが持つのも申し訳ないから京に献上したよ。その方が国のためになるじゃろう。」
茂竹の翁「それもそうか。」
二人は身の上話で盛り上がった。一方そのころ茂竹の媼は…。
茂竹の媼「おや、鈴芽さん。珍しいねぇ。旦那さんといるなんて…。」
鈴芽の媼「この人最近痛い目を見たようなので少しおとなしくなったんです。」
鈴芽の翁「だって…お前が小さいつづらを選んで大判小判を得たなら、大きい方を選べばもっと手に入るかと思ったのに…。」
鈴芽の媼「もとはといえばあんたが鈴ちゃん(スズメ)の舌を切ったからじゃないか。小指で済んでよかったわね。私が止めなかったら腕ごと消えていたわ。」
鈴芽の翁「何度も煩いと注意したのに一向に静まらないスズメが悪いんだろうが!わしは悪くない!」
鈴芽の媼「なら家から出ていけばいいじゃない!」
鈴芽の翁「わしに野宿させるつもりか!」
茂竹の媼(何があったのこの二人。)
その時不思議なことが起こった。
茂竹の翁のいる山にて…
茂竹の翁「そういえば花咲。今日はどうしてこんな山奥に?もしや二匹目のドジョウを狙っているのかい?」
花咲の翁「別にそういうわけではない。ただポチがここまで散歩したいだけだ。ずっと何かの臭いをかいではいるけど。」
?「もしもーし。誰かいませんかぁ。」
ポチが臭いをかいでいる方向から女の子の声が聞こえた。翁たちが振り向くとそこには根本が怪しく光る竹があった。この二人はすぐさまこう思うしかなかった。
茂竹の翁・花咲の翁(竹が喋っとる。)
茂竹の媼がいる川では、それぞれの身の上話をしている間にドンブラコドンブラコと大きな桃が流れてきた。
茂竹の媼「何じゃあのでかい桃は!」
鈴芽の翁「待ってろわしが人呼んでくる!」
鈴芽の媼「子供一人は入れそうじゃな。」
鈴芽の翁「ぼさっとしてないで手伝え!」
大勢の村人の助けを得て、桃は岸に運ばれた。
花咲の翁「お前の竹切技術の見せどころじゃないのか?」
茂竹の翁「バカいえ!それで中の者まで切れたらどうする!」
声の主「いえいえお気になさらず。光っている部分の上の節より高いところを切ればいいだけです。節くらいは自分で破れるので。」
その声に従って切ってみると、節を破って三寸ほどの大きさの女の子が飛び出してきた。翁二人は腰を抜かした。
岸に運ばれた桃を鉈で切ろうとした時、今度は男の子の声が聞こえた。
声の主「待った待った!一旦鉈を振り下ろす手を止めてくれ!勢い任せに切ったら俺が死ぬからさぁ!せめて種子を傷つけない斬り方にしてくれない!?」
その声の言う通りに桃を切ったら、種皮を破って元気な男の子が飛び出してきた。
村人たちは腰を抜かした。数分で人間ほどの大きさになった女の子を連れた茂竹の翁と数分で青年のようになった男の子を連れた茂竹の媼が合流し、各々何があったかを話した。
竹から飛び出た少女も桃から飛び出た少年も何やら知り合いの様子。兄妹のような仲の良さだ。竹の少女はカグヤと、桃の少年はモモタロウと名乗り、茂竹の夫妻の家にお邪魔することを伝えた。当然夫妻は困惑したが、自分たちの手伝いをしてくれるのならという条件付きで住まわせてもらうことにした。
因みに、モモタロウが入っていた桃をみんなで食べてみたら、翌日60歳の者は45歳に、40歳の者は30歳にというように元の年齢の四分の三になるように見た目や体力が若返るという不思議なことが起こった。これらの騒動があってからか、モモタロウとカグヤは吉備中で一躍有名となった。
茂竹の夫妻は吉備の間では有名だった。その要因は翁の竹技術と媼の団子作りの上手さにあろう。
まず、竹について。この里は元々農具に木が使われていたのだが、木は育つのに時間がかかるし理想的な太さの物は切るのに時間と労力を要する。その上、細かい加工がしずらいし種類によって湿気や気温など配慮すべき点が違うところが当時の農民達は面倒に感じていた。
そこで若き日の翁は竹に目を付けた。竹は一日で一メートル育つほどに成長速度が速い。なおかつ切りやすく細かい加工がしやすい。翁はそれを農具や籠などに加工しようとした。始めはうまくできず、周囲からバカにされもした。
だが、己を励まし共に頑張ってくれる仲間や、自分の作品を気に入った京や武蔵の権力者の応援を受け、御年60歳、苦節三十年以上かけて、竹細工の匠[茂竹のみやつこ]と言われるほどになった。
媼は元々京の小さな団子屋の看板娘だったが、父の代わりに団子の原料である米を貰いに行こうとしていた時に、父が奴隷かのように扱っていた農民から襲われそうになったところを助けられたことが理由で当時の茂竹の翁に一目ぼれ。
大和は税として吉備から米を徴収していたのに、団子用としてさらに奪われては生活に困るという理由を襲ってきた暴漢たちから聞き、どうしようかと思いながら翁の竹取を手伝っているときに偶然見つけたキビを見て、これを団子に用いようとひらめいた。
キビは稲と異なり干ばつに強くやせた土地でも育ちやすい。なおかつ京に税として徴収されずに済むという点で理想的であったが、育てやすいゆえに米より安い値段で売らざるを得なくなるという理由から父に猛反対。
もうやっていけないと思い、キビへ逃げ、現在の茂竹の媼として旦那を支え続けた。因みに団子作りの腕は母に磨いてもらったらしい。
なお、これらの竹やキビの情報は一部某検索サイトG参照である。
これらのこともあってか、茂竹夫妻は吉備の中でも大分慕われている。始めはただただ疑いの目を向けてきた村人たちもすぐに二人を受け入れるほどに。それからモモタロウとカグヤは波乱万丈な生活を過ごした。
二日目にしてモモタロウが花咲の翁の飼い犬のポチに懐かれたり、鈴芽夫妻の近所の柿を独り占めする猿を懲らしめ子分にしたり、カグヤのうわさを聞き付け求婚してきた五人の貴族を追い払ったり、京から逃げてきてカグヤに一目ぼれした帝がモモタロウに真剣を振りかざしたり、その帝が連れてきたけがした雉をカグヤが治癒し、モモタロウの子分にしたり、帝がモモタロウを義兄さんと呼ぶようになり茂竹の家に住み着くようになったりとまさに混沌の日々である。
そんなある上弦の半月が上る夜。草むらにて…
モモタロウ「いろいろあったけど、なんだかんだ楽しかったなぁ。カグヤ。」
カグヤ「そうですね。お兄様。けど、私たちのことはみんなには隠しておいた方がいいですよね。」
モモタロウ「それもそうだよなぁ。正直俺らが普通の人間じゃないなんてとうの昔に勘づかれているだろうけど、全て話してみんなから心配されたくはないよ。特にお前の旦那を名乗り俺の義弟を名乗ってくるバカ帝にはさぁ。」
カグヤ「まぁ、あの人も多分私たちと同じような境遇にあるでしょうから気持ちは分かります。けど、とても素敵な人だとは思いますよ。故郷のみんなに会わせたいくらいです。」
モモタロウ「故郷かぁ…。元気にしているかなぁ。月のみんなは…。」
そう言いながら月を見上げる二人。現存する日本最古の物語である竹取物語の主人公であるかぐや姫が月出身であるのは有名な話だが、この大和列伝の主人公である二人もまた月の民であった。二人はここに来る前に月の王である父から国賊が現れたと聞き、命を守るために止む無く大和へ送り出された月の王子と姫である。
カグヤ「国賊のことは怖いと思うけど、私たちには月都の英雄のあの人がいるから大丈夫じゃないかな?」
モモタロウ「…そうだといいけど。」
釈然としないモモタロウ。モヤモヤしたまま夜は開ける。
時は少しさかのぼり、月の中心部[月都]。その中枢を担い、月の王スメラギが住む月王城にて…
スメラギ「何故だ!何故よりにもよってお前がやったとでもいうのだ!ウラ!」
ウラ「三日…。これは単独で月都を殲滅するのにかかった時間。本気を出してないうえ、手駒を集める時間もあったが遅すぎる。あまりにも遅すぎる。」
その声の主は額から二本の角を生やし、1丈4尺(約4.2メートル)程の大きさを誇る。スメラギの周りは血だらけで倒れている兵士たち。スメラギ自身も出血がひどく、声を出すのもやっとだった。
スメラギ「質問に答えろ!何故こんなことをしたのか聞いているんだ!もしや、我々の態度が良くなかったとでも言うのか!お前に頼りすぎたのが良くなかったのか!」
ウラ「月の民たちは何も悪くないさ。ただ弱さを悔いて弱さを憎んだだけのこと。」
スメラギ「…分からない。これまで単独でこの月の平穏を脅かしかねない隕石をほぼすべて壊してきた月都の英雄たるお前に己の弱さを悔いる必要はないはずだ。もしや、私たちが弱いのがいけないのか?それならすまなかった。お前には及ばないが、我々も強くなるからどうか、こんなバカげたことをやめてくれないか。」
ウラ「何もわかってないのだな。まぁいい。お前らにすべてを打ち明けなかった私が悪いからな。だが、これだけは言わせてほしい。何も月の民に対し恨みは微塵もない。私を弟のように面倒を見てくれたお前にも、英雄として慕ってくれた王子たちにもありがたいと思ってはいる。それなのに私がこんな凶行に及んだ理由は分かるか?」
スメラギ「…なんだそれは。」
するとウラは笑ってこう言った。
ウラ「声が聞こえたからだ。はらわたが煮えくり返るほど憎たらしい耳障りな声がな。」
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