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※本作は救いのない結末を含みます。戦争下における人間の弱さや欲望、暴力的な描写、裏切りが描かれています。明るい物語を求める方、これらの表現が苦手な方はご注意ください。※
昔から二人は仲良しでした。
でも、どうしようもないくらい差がありました。
片割れの一人、熊は美男美女と称される父と母の元に産まれました。
両親はともに熊を「これ以上ないくらい美しい子供に育つ」と期待して育てました。
愛情をたっぷり注ぎ、何不自由ない暮らしをしていました。子供の頃は。
熊が大きくなるとともに、両親の期待は裏切られました。
熊はどちらの血も強く受け継がず。
しかし、はたから見れば熊は美しい顔立ちをしていました。
それでも、その顔は両親の期待のものではありませんでした。
だから、両親は熊を完全によその子として育てました。
よその子として見ると、”まだ”悪くない。
片割れのもう一方、猿は平凡な家庭の元産まれました。
両親の顔立ちもずば抜けて綺麗なわけではありませんでした。しかし、猿は綺麗な顔をして生まれてきました。
熊とは対照的に、まさに正統派の顔立ち。
猿の両親は猿の顔しか見なくなりました。
結果はどうでもいい。猿の顔によって周りから褒められることを好みました。
いわば育児放棄のような状態。猿はまともな性格には育ちませんでした。
友好関係もなく、いつも一人でした。
そんな孤独な二人が出会うのは、必然ともいえるほど運命的でした。
二人はなるべくしてすぐに仲の良い友人になりました。
幼い彼らは木の枝を持って、兵隊ごっこをします。
二人は純粋に楽しみました。
まだ幼いため、自身らの生い立ちは気にせず、無邪気に走り回りました。
「たっち!くま、鬼んなった!」
「おにごっこー?」
猿が熊をタッチします。すると熊は楽しそうにわらって猿を追いかけます。
こんな日々が毎日でした。
二人が学生になりました。
本格的に人との交流が始まります。
もちろん、二人に友達はできませんでした。それどころか、嫌がらせもありました。
二人は土手に座り込みます。
「学校ヤだなぁー」
猿がそう言うと、熊は猿の方を見た。
何も答えませんでした。
猿がより育児放棄されて行く一方、熊の母は熊に近づくようになりました。
熊が大きくなってきたからです。
熊の顔は大人に近づき、体格も大人になってきました。
完全に熊を他人として見ている母には「親子」の一線が引かれていません。
熊が家に帰ると、今日も強い香水の香りがしました。甘い匂い。
「あなた、おかえり。」
母は優しい顔で微笑みかけてきます。気持ち悪い。
熊は眉間を寄せ、言います。
「気持ち悪い。やめてください。」
すると母はひどく傷ついた顔になり、大げさに声を荒げました。
「何てこと言うの!?」
すると母は父を呼びました。母は父に言いつけました。
すると父は熊に拳を向けます。
─?
熊はすぐに理解しました。拒絶は死を意味する、と。
だから、従順な人形になりました。
父が熊を他人扱いし、殴り、ストレスのはけ口にする一方。
母は熊を恋人扱いし、寄りかかり、都合の良い人形にしました。
熊の顔は傷だらけになりました。刃物で裂かれたような傷が何本も。
熊が反抗したときに母は熊を「所有物」ということを認識させるため、深く切り裂きます。
それなのに、その傷だらけの顔を「汚い」と言うこともありました。
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#軍人
また、二人が土手に座り込んでいるとき、猿が呟きました。
「お前は、構ってもらえていいじゃん。」
その一言が、熊の地雷を踏みました。
熊は言い返します。
「お前は、ちやほやされて、良いモン食えてんだろ!!」
それはお互いの傷でした。傷で傷を抉り合いました。
「被害者ぶるなよ。」
猿の冷たい一言のあと、すぐに土手には誰もいなくなりました。
二人はそれ以降話すことはありませんでした。
あるときから、日本の情勢が急激に傾きました。
それまで平和だった日常は、一つの令で壊されました。
徴兵令が出されたのです。
国民の目に届いていなかった恐怖が、一夜にして届き、陥れました。
猿と熊の両親は、躊躇うことなく子を戦地に送り込みました。
猿の両親は猿を「英雄」にするため。
熊の両親は熊を「道具」にするため。
戦場で、二人は本物の銃を持ちました。
木の枝ではなく、本物の。
二人は泥水をすする思いで生き延びていました。
いや、本当に泥水をすすらなければ生きられませんでした。
戦地では常に人が死にます。
上官でも、一般兵でも。
つまり、生き延びさえすれば偉い立場にはすぐになれました。
二人は上等兵という立場にすぐ上り詰めました。
二人はそこで初めて、軍人として出会いました。
「久しぶり」
猿が言います。喧嘩したことなんて忘れているような口ぶりでした。
「ああ」
熊はそれだけ答えました。
─エピソードゼロ_終わり
一応救いのない結末として注意書きはしてますが、多分普段は明るいギャグ全開になると思います。
たまにクソ重シリアス混ぜつつ、くらいかな。温度差で風邪ひかないように気をつけてください。