斜陽が差し込む教室。
頬杖をついて所在なくグラウンドを眺める。
このだだっ広い空間に俺は1人、大好きな人を待っていた。
心地よい眠気で午睡に引き込まれそうになっていたその時、
「遅くなってごめんね、待ったでしょ」
頭上から降ってくる優しい声で意識が呼び戻された。
「遅いよ、大森せんせー」
「ごめんごめん、今始めるから」
いかにも重そうな大量の教材を無造作に机の上へ置き、そのまま俺の隣に座る。
「…にしてもさぁ、毎日毎日補講って、…
滉斗くんはこのままでいいわけ?」
「部活もあるだろうに、そろそろ嫌になってくる頃なんじゃ…」
俺は数学が大の苦手。
それを見かねた数学教師の大森先生から声がかかり、放課後にいろいろ教えてもらっているのになかなか成績が上がらない。
「あ、また始まったよ〜せんせーの小言」
「心配してるんだよ俺は!!アンタがあんまりにも数学できないから!!!」
「へへ、ごめん」
「全く、」
これだけ毎日数学の補講を受けているのに成績が上がらないのには理由がある。
俺が、大森先生を好きだからだ。
毎日の補講の時間はいっつも好きすぎて内心ドキドキだし、内容もほぼ入ってこない。
勉強が大っ嫌いなので補講なんてバックれてやろうとも思ったけど、大好きな大森先生に教えてもらいたいという完全な下心でここまでやってきた。
はじめは俺の他に数人くらい受講してるやつがいたけど、いつしか数学ができない馬鹿野郎は俺一人だけになってしまって、 大森先生とふたりきりの空間が出来上がった。
でも俺は補講の時間がなにより好きだし、この為に学校に来てると言っても過言じゃない。
ちょっと怒った顔も、最高に可愛くて。
日に日に近くなる椅子同士の距離も、
親しい人だけにしか見せない子犬のような笑顔も、
たまーに小テストなどで良い点が取れるとご褒美で俺の頭を撫でてくれるゴツい手も、
ぜんぶぜんぶ愛おしくてキラキラしてるんだ。
叶わない恋なのは分かっている。
けどいつか、この想いだけでも伝えられたらな。
「おーい滉斗くん?聞いてる?」
「すんません、もう一回…」
「……仕方ないなぁ、」
思考もほどほどにして、俺は仕方なく大森先生の解説に耳を傾けた。
next!!!!!
コメント
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💙🎸さん…。分かるぞその気持ち、リアコではないけど。てかなんでそんなに語彙力あるわけ!?すかんでぃなびあさんやばいよ!?
好きです続き気になっちゃいますー…😭💟 すかんでぃなびあさんの書く作品全部好きです泣泣🥹