やっと第3話と第4話の展開を思いついた那賀酸です。本日は3話と4話の2話をお届けします。
第3話「汚名と終焉」
王としての生活にも少しずつ慣れ始めていた神谷蓮だったが、心の奥底にある違和感は消えるどころか、むしろ増していた。彼が「異世界の王」という地位に就いてから数カ月、政務や議会の調整は依然として彼にとって重荷だった。しかし、国民の平和を守るために責務を果たすと決意し、ひたむきに努力を続けていた。
そんな彼の日常を、ある日突然の報せが引き裂いた。
裏切りの序章
「蓮様、急いでこちらへ……大変なことが起きております!」 侍従の慌ただしい声が王宮内に響き渡る。部屋を飛び出した蓮は、城の廊下を駆け抜けながら、侍従から詳細を聞き取ろうとする。話によると、王国の倉庫から食料や軍需物資が盗まれ、それが敵国に流れているという証拠が見つかったという。
「それが俺と何の関係がある?」と尋ねる蓮に、侍従は言いづらそうに続けた。「実は……その計画を主導したとされるのが、陛下、あなたなのです。」
「……何だと?」
蓮は耳を疑った。自分には全く身に覚えのないことだ。それでも、敵国に流れたとされる物資の名簿には、確かに彼の署名が記されていた。この事実により、国民の間では蓮への不信感が急速に広まりつつあった。
名誉を取り戻すための戦い
蓮はすぐに調査を開始し、自分の無実を証明しようと奔走した。しかし、宮廷内では彼を支持する者よりも反対する者が増え、彼の孤立は深まっていった。仲間であったはずの貴族たちも、次第に距離を置くようになる。唯一、セラは蓮の側に残り、彼の潔白を信じて励まし続けた。
「蓮様、絶対に諦めてはいけません。この世界であなたほど真っ直ぐな人を私は知りません。」セラの言葉は蓮を一時的に勇気づけたが、現実は厳しかった。
さらに追い討ちをかけるように、国中で反乱が起き始める。民衆は蓮が裏切り者であると信じ込み、王座から引きずり下ろそうと動き出した。その動きの中心には、王国の中で密かに蓮の排除を狙っていた派閥がいた。
最期の戦い
反乱軍が城を包囲する中、蓮は最後の決断を迫られていた。民衆と戦い、王としての立場を守るのか、それとも全てを捨てて逃げ出すのか。しかし、どちらの選択肢も彼にとっては納得のいくものではなかった。
「俺が何をした?ただ、皆を守りたかっただけなのに……。」
そのとき、蓮はふと幼い頃の父との記憶を思い出した。父が家を出て行ったとき、蓮にはそれを止める術がなかった。そして今、自分もまた家族のように愛してきたこの国から追放されようとしている。理不尽さと無力感が彼の心を支配する。
最期の瞬間、城内に突入した反乱軍との戦いで蓮は剣を振るい続けた。彼は自分の信念を守るため、最後の一息まで戦い抜いた。しかし、多勢に無勢――彼は次第に追い詰められていった。
「これが俺の終わりか……。こんな形で終わるなんて……。」
薄れゆく意識の中で、蓮はある確信を得る。「この世界は何かがおかしい――これが現実ではないのかもしれない」と。
新たなループの始まり
光が消え、深い闇に包まれる感覚の中で蓮は目を覚ました。そこは、また見知らぬ地であった。彼の手には剣が握られており、再び冒険者としての装備を身に付けている。
「またか……。俺は死んだはずじゃなかったのか?」
蓮は混乱しながらも、自分が再び異世界の冒険者として転生したことを理解した。このループが何を意味しているのか、そして自分がなぜこの運命を繰り返しているのかを突き止める決意を胸に秘め、彼の新たな冒険が始まった。