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誰もいない空き教室に
時間がズレた時計の秒針の音だけが響く。
手に持ったスマホを見ると
〝17:31〟と表示された。
その数字から君の誕生日を連想してしまう。
そんなことを君に伝えれば
少し眉を下げて笑って
頭を掻きながら
『 そんなに俺のこと好きなの? 』
『 めっちゃ嬉しい。 』
なんて言うんだろうな。
暫くして
人が少なくなった学校には
似つかわしくない
激しい足音が聞こえてくる。
近づいてくる足音の持ち主を予想しながら
教室の入口を見つめた。
そして
ドアが勢い良く開けられた。
「 結衣っ…! 」
ドアに手を掛けながら
肩で息をする君を見る。
「 今日は早いね。 」
待ち合わせの時間より
40分遅れているけど。
なんて台詞は押し殺して
微笑んでみせた。
「 ごめん、遅くなって。 」
息を整えた君が
お決まりの言葉を言った。
昨日と何一つ変わらない会話。
でも君と話せるなら と、
退屈だなんて気持ちは隅に追いやった。
「 いいよ。帰ろう。 」
「 汐音。 」
鞄を手に取って席を立つ。
君がポケットに手を突っ込むのを見て
なんとも言えない気持ちになった。
君が遅れてきた理由を
考えだそうとする脳がもどかしくて
でも知りたい と感じる好奇心が
胸の中をずっと渦巻いていた。
―――――――――
「 謝り癖があって、嘘をつくのが下手な
そんな君が嫌いで
そんな君に恋してたの。 」
篠森 結衣/しのもり ゆい
―――――――――
「 ごめん、最低だな 俺
今まで ほんとごめん。 」
佐々木 汐音/ささき しおん
―――――――――
「 ―――。 」
そんなの
とっくの前に気付いてたよ。
♡×50
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