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「美紀ちゃん・・・・君はなぜハリー・ポッターが、ヴォルデモートに勝てたと思う?」
アリスが聞いたことが無いほどの、温かみのある北斗の声だ
「ハリーの方がヴォルデモートより強かったからよ」
「うん・・・話の筋ではそれが正解なんだけど、そこには深い解釈が入っているんだ、ハリーが赤ちゃんの時に強力な魔法を
お母さんがかけたんだよ・・・・たとえば・・・あの花瓶のお花は誰が持ってきたの?」
北斗がテレビの上の花瓶に生けてある、ピンクのガーベラを指差して言う
「・・・ママよ? 」
「じゃぁ・・・そのパジャマは?誰が買ってきたの?」
北斗の問いに少女が自分のバービー人形の、プリントのピンクのパジャマをひっぱって言った
「これもママよ、バービーがいいって言ったら買ってきてくれたの、ママは毎日来てくれるわ、仕事も忙しいのに、それに週末は泊まってくれるの」
「優しいお母さんだね」
「うん!私ママ大好き!パパも大好き!」
「ハリー・ポッターは最終的にお母さんに「愛」の魔法をかけられたんだ。こればっかりはあの闇の帝王のヴォルデモートも勝てなかった、ダンブルドアはそれを知っていたんだ、なぜなら「愛」に勝るものはこの世には何もないんだよ」
北斗は彼女の個室を眺めまわした
花瓶の花以外にも壁にはハリー・ポッターのポスター、バービー人形や沢山のアニメのDVD、漫画、この子がここで退屈しないように、親からこの子に沢山の配慮が見られた
ネグレクトの親に育った北斗だからわかる。「愛」の対極にあるものは「無関心」だ、北斗は幼少期を両親にほったらかしにされて育った
「俺にはわかるよ・・・・君はお母さんやここにいるみんなに、「愛」の魔法をかけられている 」
海に面した小高い丘にこの病院が建っているため、空気の換気に少し開けている、窓から波の音が聞こえる
天気の良い日はこの部屋の景色は最高だった、きっとこの場所も彼女の親御さんが選んだのだろう
「生まれた時から苦労を乗り越えて来た君が、こんなことで負けたりするものか、君の体の中のヴォルデモードは、もう小さく小さくなっているよ、今にきっと無くなる」
少女はにっこり微笑んだ、なんだか頬に少し赤みが指したような気がする
北斗が続ける
「いいことも悪いこともすべて含めて人生さ、今は苦しくて辛いけど、それは今だけだ、幸せはすぐやってくる 」
北斗が優しく少女の手を取る
「辛くなったら俺の言葉を思い出して、君は一人じゃない、俺にはわかる、君はみんなに愛されている」
「どうしてわかるの?」
「内緒にしておいてほしんだけど、実は俺も魔法使いだからさ」
「どんな魔法を使うの?」
「小さな可愛い女の子を勇気づける魔法」
少女は少し目を見開いて言う
「効いてるわ!」
「だろう?」
それから二人はクスクス笑いながら暫く楽しく過ごした、その女の子は北斗に冷蔵庫に入っている、自分のヤクルトまで振舞ってくれた
淡路の海から吹いてくる風が優しく二人を包み、ピンクのカーテンはいつまでもゆらゆらと揺れた
アリスはそのカーテンの裏に隠れ、二人の話をじっと聞いたまま、なぜか溢れる涙を堪えることが出来なかった
最初はほんの思いつきだった、成宮牧場を取られたくなかった、鬼龍院打倒の為に彼を周防町会議長に推薦した・・・
でも今は
彼ほどこの町の議長にふさわしい人はいない
北斗さんを勝たせてあげたい、そしてこの町の将来を一緒に考えていきたい
今は自分達だけじゃなく、この町に住む、全ての人の幸せの為に・・・・
アリスはそっと心の中で祈った
ああ・・・・神様・・・・
心からお願いします
:*゚..:。:. .:*゚:.。