テラーノベル
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それでは、
どうぞっ。
ーーーーー
あの日から、來亜の体調は嘘のように安定していた。
胸を締め付けていた痛みもない。
突然息苦しくなることもない。
病院で受けた検査も、特に異常は見つからなかった。
🤍「もう大丈夫なのかな……」
そう思えるくらい、何も起こらなかった。
けれど、來亜には一つだけ気になることがあった。
あの夢。
――残り30日。
あれから一度も見ていない。
それなのに、数字だけは頭の中から消えなかった。
🩵「來亜?」
声をかけられて振り返る。
そこには柚葉が立っていた。
🤍「どうしたの?」
🩵「ぼーっとしてたから。」
🤍「少し考え事してただけ、…」
🩵「そう…」
柚葉は小さく笑った。
いつも通りの、綺麗な笑顔。
けれど來亜は、その笑顔にほんの少し違和感を覚えた。
🤍「……柚葉、顔色悪くない?」
🩵「え?」
🤍「なんか、白い」
🩵「そう?」
🤍「うん。」
🩵「昨日ちょっと寝るのが遅かっただけだよ。」
🤍「ちゃんと寝なきゃ駄目だよ。」
🩵「分かってますー笑笑」
柚葉はそう言って笑った。
けれど、その直後。
🩵「……っ」
一瞬だけ、柚葉の表情が歪んだ。
🤍「柚葉?」
🩵「……大丈夫。」
🤍「今、痛かった?」
🩵「何もないよ。」
🤍「でも――」
🩵「本当に大丈夫…、」
少し強い口調だった。
來亜が黙る。
柚葉は一度目を伏せてから、何事もなかったように笑った。
🩵「心配しすぎ。」
🤍「……ならいいけど」
ーーーーー
その日の帰り道。
柚葉は來亜と別れたあと、一人で歩いていた。
数分前まで普通に話していたのに、急に視界がぼやける。
足元がふらつく。
🩵「……また?」
こめかみを押さえる。
頭の奥が、ズキズキと痛む。
昨日より強い。
それでも、柚葉は立ち止まらなかった。
あの店へ行かなければならない。
路地裏へ入り、古びた扉を開ける。
カラン
『いらっしゃい。』
店員は、柚葉を見るなり静かに言った。
『少しずつ代償が出てきましたね。』
🩵「……大丈夫です」
『無理をしているように見えますが』
🩵「まだ、60日ありますよね?」
店員は答えなかった。
柚葉は店の奥に並ぶ不思議な品々を見る。
瓶の中には、誰かの「昨日」。
小さな箱には、誰かの「夢」。
そして、棚の一番上には数字の刻まれた砂時計が並んでいる。
🩵「もう一度、契約したら……もっと延ばせますか?」
『できます。』
🩵「どれくらい?」
『30日』
柚葉は少しだけ考える。
🩵「お願いします」
『あなたの未来が、また減りますよ』
🩵「分かっています。」
『それでも?』
🩵「……はい」
店員は黙って契約書を差し出した。
柚葉が名前を書こうとした、その瞬間。
頭に強い痛みが走った。
🩵「……っ!」
手からペンが落ちる。
視界が真っ白になる。
『柚葉さん』
🩵「大丈夫……です」
『本当に?』
🩵「大丈夫です」
震える手でペンを拾い、もう一度名前を書く。
契約が成立した。
店内の時計が一斉に鳴る。
カチ、カチ、カチ。
同じ頃。
來亜の腕時計の表示が変わる。
「残り60日」から――
「残り90日」。
來亜はその数字を見て、眉を寄せた。
🤍「……90日?」
自分の腕時計に、そんな表示はない。
そもそも、昨日までそんなものは存在しなかった。
なのに、確かに見えた。
数字はすぐに消えた。
🤍「……なんだったんだろう。」
一方、店を出た柚葉は、ふらつきながら歩いていた。
数歩進んだところで、突然足から力が抜ける。
🩵「……っ」
そのまま地面に膝をつく。
意識が遠のいていく。
誰かの声が聞こえた気がした。
ー大丈夫ですか?
でも、答えることができない。
そして次に目を開けたとき。
柚葉は自分の部屋のベッドにいた。
🩵「……?」
どうやって帰ってきたのか、覚えていない。
時計を見る。
深夜二時。
🩵「私……何してたんだっけ。」
思い出そうとすると、また頭が痛む。
柚葉は目を閉じた。
このまま隠し続けるのは、きっと難しい。
それでも――
「残り90日」。
その数字だけを胸に抱えて、柚葉は眠りについた。
next.
もののあはれ
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くとです。
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コメント
1件
うわあ、続きが気になりすぎます…!體調が安定した來亜ちゃんの代わりに、今度は柚葉さんが苦しそうで胸が締め付けられました。あの古びた店の「昨日」や「夢」が瓶詰めされている情景、すごく印象的でゾクゾクしました。それにしても「残り90日」…意味が二転三転してて続きが待ちきれないです🕊️✨ 柚葉さんの強がりが切なくて、どうか二人が幸せになってほしい…。素敵な物語をありがとうございます。次も楽しみにしています!