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び ~ ふ ? or チ キ ン ¿
不自然なほど静まり返った機内。
窓の外にはまるで、
俺たちの行く末を暗示するかのように
どんよりとした灰色の雲海が広がっている。
メンバー全員で行く
待ちに待った “はず” のグループ旅行
周りの席では
メンバーたちが楽しそうに旅の計画を話したり、
のんびりと動画を見たりしている。
けれど、俺の周りだけは
まるで世界の底に沈んだかのように
重苦しい空気が澱んでいた。
その原因は
隣の席からのしかかってくる
異様な熱気と
視線だ。
『ねえ、うり。…さっきから何見てるの?』
低く、ひび割れたような声が耳元に届く。
さっきからずっと、
ゆあんの手が俺の右手を
握り潰さんばかりの強さで掴んでいた。
彼の手のひらは異常に熱く、
じっとりと汗ばんでいる。
痛いと言っても、絶対に離してくれない。
「……何って、L_NEだけど」
『誰としてるの?』
『じゃぱぱ?それともなおきりさん?』
『 ……ねえ、旅行中くらいさ』
『俺だけのうりでいてよ』
『なんで他の奴のメッセージなんか気にしてんの?』
濁った瞳が、至近距離で俺の横顔を凝視する。
普段動画で見せるような
あの無邪気で明るい笑顔はどこにもない。
最近の彼は異常だった。
俺が他のメンバーと一言挨拶を交わしただけで、
その日の夜に
『なんであいつと楽しそうに笑ってたの?』
と狂ったように電話をかけてきては、
泣きつくようになっていた。
その歪んだ執着と独占欲は、
この飛行機という、高度一万メートルの密室の中で
さらに濃度を増している。
「ゆあん、痛いってッ、…」
「みんなも近くにいるんだから、静かにしてくれ」
『みんななんて関係ないよ』
『うりには、俺だけがいればいいんだから』
『他の奴らの声なんて、聴かなくていい』
『うりの世界には、俺の言葉だけが響いてればいいんだよ_♥ 』
ゾッとするほど冷徹な声。
ゆあんくんは俺の指を一本ずつ愛おしそうに、
けれど絶対に逃がさないという明確な意思を込め、
強く
深く絡め取っていく。
爪が食い込んで白い痕が残る。
その時
通路の向こうから、
この窒息しそうな空気を切り裂くように
機内食のカートが近づいてきた。
《お待たせいたしました。お食事の案内をいたします》
にこやかな笑顔を浮かべたCAさんが
俺たちの席の前で足を止める。
だが、ゆあんくんの身体から放たれる異様なオーラと
俺の青ざめた表情を察したのか、
彼女の笑みがわずかに引きつった。
《お食事は、ビーフとチキン、どちらにいたしますか?》
その問いかけを耳にした瞬間
ゆあんくんの口元が不気味に歪に釣り上がった。
『…ねえ、うりはどっちがいい?』
「え、? じゃあビーフで…」
『ダメ』
ゆあんくんがピシャリと言い放った。
遮られた言葉が喉の奥に引っかかり、
俺の背筋に冷たい戦慄が走る。
『うりはチキン。俺もチキン 』
『だって、うりがビーフを選んだらさ?』
『俺たち “違うもの” を食べることになるでしょ? 』
『俺と別々のものを身体に取り入れて、』
『別々の血肉にするなんて許さない。』
『うりは、俺と同じものだけで満たされてなきゃダメなんだよ。』
『そうやって、中身から俺と同じになっていってよ』
狂気を孕んだその理屈に
CAさんが息を呑むのが分かった。
ゆあんくんはCAさんのことなど一切視界に入れていない。
ただひたすらに俺の顔だけを見つめながら、
じわじわと唇が触れそうなほどに顔を近づけていく。
『それともさ……機内食なんかじゃなくて』
『俺の “肉” が食べたい?』
『ならすぐに、うりに俺の全部を刻み込んであげる。』
『…それか、俺がうりを骨の髄まで食べ尽くして』
『一つの生き物にしてあげようか?』
『それなら、二度と他の奴に怯えなくて済むもんね_♥』
耳元で優しく囁かれる、
退路の断たれた愛の言葉。
それは優しさなどという生ぬるいものではなく
俺という人間の自由を
尊厳を
存在そのものを完全に監禁し、
支配しようとする呪縛そのものだった。
「ゆあんッ、もうやめないッ、、?」
『やめないよ?』
『うりが俺以外の世界を見ようとするから』
『俺をこんな風に怒らせるんだよ?』
『うりの髪も、肌も、心も、全部俺のものなんだから。』
『ねえ、分かってるでしょ?』
有無を言わせない強圧的な態度で
ゆあんくんは空いている方の手で俺の顎を掴み、
強制的に自分のほうへと向けさせた。
拒絶の許されない
彼の瞳の奥にある深い闇に
俺は自分が完全に飲み込まれ、
窒息していくのを感じていた。
もう、この男から逃げる術はないのだと
心のどこかで諦めが這い上がってくる。
『すみません、チキンを二つ 』
“まったく同じモノを与えてください_♥ ”
テーブルの上に手際よく配られた
二つの同じチキン。
逃げられない空の上。
逃げられない隣の席。
俺は震える手でスプーンを握りながら、
これから始まる終わりのない旅路の中で、
一生この底なしの重い愛から
抜け出せないことを嫌というほど
思い知らされていた。
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ぎた︵🎸
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コメント
8件
好きです🫶
え、やばい、…バカ好きなんだけど❓‼️‼️‼️ ya裙重いの最高すぎる✨️✨️ まじで好きだ😭💕💕💕
このお話は1話完結です。 長旅、ご苦労さまでした_♥