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紫陽花 / nksr

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紫陽花 / nksr

1 - 紫陽花 / nksr

♥

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2024年08月04日

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onkn / nksr

梅雨って夏なのか春なのか戦争ありますよね。

私は夏だと思ってます。

梅雨はじめじめして苦手ですけど、紫陽花を見るのが好きです。

でも梅雨も終わりなので紫陽花がどんどん枯れてますね。

なんならもうあまり見ないです。外出る機会も減ったもんで。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「雨だね…」

春も過ぎ、梅雨が来た。


「やな…」

彼は雨があまり好きじゃないのか、退屈そうに外を眺めている。

まあ子供ならまだしも、雨が好きという成人はあまりいないだろう。出勤とか大変だろうし。


彼が外に出ないというのは置いといて。


「あ…、」

俺はと言うと、


頬杖をつきながら窓の外を見る彼の目があまりにも綺麗で、好きか苦手かどころではなかった。


「ん?」

見とれていると、気づかれてしまった。目が合って時間が止まる。


「…ふ、っ、…」

しばらく見つめ合った後、彼は優しく笑った。


「…なに…、」

「いや?僕の顔好きなんだなーって」

「好きちゃうわアホ」

「じゃあなんでそんなに見てたの?」

「…なんだってええやろ…、」


言い返せない。勘づかれている。

確かに事実だしな。

彼は楽しそうに笑った後、窓の外をまた眺めていた。


「ニキー早くしろー」

「待ってー…」

買い出しに行くはずがぐずって中々家から出ようとしない。どんだけ雨苦手なんだ。


「はよ行くぞー…」

「やだ!無理!待って!」

「ガキじゃねえ。いくぞ」

「うわあ…」


駄々をこねる彼を無視して外に出る。

振り向くと相当嫌な顔をしていた。


「…もう傘へし折りたい。」

「何言うてん、はよ行くぞ」

「あ、待って」


傘を持とうとする手を止められた。

俺の傘へし折られるのか。まじか。


あることないことを考えていると、横で傘が開く音がした。


「はい、入って」

「え?」

彼が開いた傘を差し出して手招きしている。


「いや、俺、自分の傘…」

「いーじゃん、来てよ、一緒に行くんでしょ?なら一つでもいいよね?」


「そういう問題か…?」

「ぐずぐずしてると傘折るよ!」


「しゃーねーな…」

ぐずぐずしてるのはどっちだよ、と言おうとしたけど面倒臭くなりそうで言葉をひっこめた。





「…あ、」

声がしたので目線を横にずらすと、彼が紫陽花をじっと見ていた。


「好きなん?紫陽花。」

「んー?まあね。花言葉って知ってる?紫陽花の」


彼って花言葉とか知ってるんやな。



意外。



「んー、知らん」

「まじ?ボビーにぴったりの言葉だよ」


俺にぴったり?余計にわからない。

色のことか?目の前の紫陽花は青と紫。

確かにイメージカラー近くはあるが、ここまで薄くは無いし。


「正解はね…」

考えているとニキが思考を遮った。

正解言ってくれるやつなんだ、これ。


「飽き性。」

「馬鹿にしてます?」

確かに飽き性かもしれないが。


「あとは移り気、浮気…」

「どこが俺にぴったりや」


へへ、と憎ったらしいが憎めない笑顔で笑った。

お前に関してはだいぶ一途だと思うんだ が。



伝わんねえな。





まだ彼は紫陽花を見ていたいのか、その場から動こうとしない。


その場で二人でしばらく紫陽花を眺めていた。

動いたら傘一本だから濡れるし。


そんな中、少し彼の目線が気になった。さっきから、紫陽花を見ているようで見てないようで

見ていない、と言うよりかは俺が見ているものと同じものを見ていないかのような目をして、優しく笑っていた。




ある日、彼があまりに爆睡して起きないので放置したままひとりで買い物に来た。




「…、」

前にニキが言っていた紫陽花。

ふと気になって足を止めた。

よく見ると、白い紫陽花が小さく咲いていた。


彼の目線が合わなかったのはこれを見ていたからだと確認した。


白い紫陽花。


色によって色が変わると、彼は言っていた。白にも意味があるのだろうか。


今は時間ないし、帰ったら彼に聞こうと、その場を後にした。







「暑いよー!!干からびる!!」

「朝からうるせえな…」

もうすっかり梅雨は通り過ぎた。

なんなら暑すぎてもう忘れそうだ。


「ほら、買い出し行くから立て」

「やだ。無理!!」

梅雨が明けても引きこもりは所詮引きこもり。


「ほら行くぞー…」

まるで散歩から帰ることを拒否する犬みたいだ。


こいつの場合は逆なんだが。





「あ、紫陽花…懐かしい」

「あー、確かにな」


「もうほとんど枯れかけてるね…」

「枯れかけてる割には嬉しそうやな…」

枯れかけた紫陽花は色が抜けたように、ほとんど白くなっていた。


白い紫陽花。


「…あ、」


「ねえ、白い紫陽花の花言葉って知ってる?」


聞きそびれて今聞こうとしたことを、質問された。タイミングが凄い。


「ええ…んー、」

「…これもボビーにぴったりだよ。」


「なんやまたいじりか?」

「んー?さあね…」


絶対なんか企んでる。怖。



「ほら、行くよー」

「あ、はい…」

気づくとニキが足を前に踏み出していた。

それの後ろに俺はついて、二人で横並びで歩いた。




家に帰って、ふとさっきのことを思い出した。

何となくで検索をかけた。




白い紫陽花の花言葉。

寛容。



一途な愛情。









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コメント

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新作が出るたびに過去一を更新していくのでほんと尊敬です

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