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その民宿で私は、無料で泊まっていいことになった。
「いらっしゃいませー」
やる気があるようにもないようにも思えない普通の仲居さんが部屋に案内してくれた。部屋は和室で、低めの木のテーブルが置いてある。窓は大きくて外の自然が見えた。
「すごい」
奈々はボソッとつぶやく。
「では奈々様、こちらのルールをお守りの上、“民宿 イロノ”をご利用ください。では、失礼します」
仲居さんはそう言うと、革張りの本をテーブルに置いて出て行った。座布団に座り、早速目を通す。
“ポイ捨て禁止、花火禁止、夜間の騒音禁止、自然を破壊するような行為禁止(例・無駄に水を使う、不必要に石鹸を使う)、ご飯は残さず食べる(アレルギー除く)、川を汚さない、村人とケンカをしない、この村のことは外部に絶対に話さない。 詛村の自然を守るためにもよろしくお願いいたします。村役場”
「わあ…環境に配慮してるなー。SDGs実行自治体としてアピールすればいいのに…」
奈々はそうつぶやく。でも、何かしら事情があるのだろう。例えば…… 村長が気難しい性格で、問題を起こしまくってるとか。オーバーツーリズム?を心配してるとか。
でも、それほど観光客はいない。というか奈々以外宿泊客がいない。
土日なんだから、1人くらいいてもいいのに。と、ノックがあった。ドアを開けると、仲居さんがいた。
「お食事をお持ちしました〜」
夕食はご飯、さんまの焼き魚、味噌汁、野菜の煮物だった。
全部好きな食べ物だったため、奈々は目を輝かせた。
脂の乗ったさんまの焼き魚も、赤味噌の味噌汁も、味の染みた煮物も全部ご飯に合って美味しかった。
もちろん残さずペロリと平らげた。
「ご飯おいしかったです!で、お手洗いはどこにありますか?」
「あー、お手洗いですね。部屋の外の廊下にございます。ただ、深夜2時から深夜3時には行かないでください」
変な注意点、と思いながら奈々はお手洗いへ。ついでにお風呂に入ることにした。
「あのー、パジャマとかタオルとか持ってきてないんですけど…」
「ああ、民宿の方でご用意いたします。あと、今日着てきたパジャマはこちらでお洗濯いたします」
うわあ、いい場所やんここ!と心の中で叫びながら大浴場へ。 湯船は源泉で、肩こりや疲労回復、美肌に効くらしい。風呂もすごく気持ちよかった。
「最高かよこの旅館」
奈々は布団に入って今日のことを思い出していた。布団も柔らかくて重みがあって気持ちいい。
遭難は散々だったけど、遭難したおかげで最高ななんちゃら村に着いたわけだし、不幸中の幸いってやつだ。
(でも、他にもお客さんいればいいのに…)
そう思いながら、奈々は眠りについた。