テラーノベル
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リュウたちは目を覚ました。そこは、冷たい独房ではなく、ソラの執務室だった。
「おはよう。」
「ここどこだよ…」
目の前にはソラが立っていたが、窓を眺めてこちらに顔を向けない。
「ここなら、監視カメラも無い。ゆっくり話せる。」
「なぁ、どういう事だよ…もう、よく分かんねぇよ。」
「なんで、独房じゃなくて…ここに?」
ソラは息を整えた。
「みんなにお願いがあって、連れてきた。」
「お願い?」
「今、パラサイトとパワーたちがエージェントを引連れて街に住む能力者を無差別に攻撃している。」
「何?」
リュウたちの顔が引きつった。
「そこで…街を守って欲しい。お願いします。」
ソラは土下座した。組織のリーダーがヒーロー部の同年代の少年少女達に土下座している。傍から見ればこの空間は異様だ。リュウはため息をついてソラの前に立った。
「顔上げろ。」
「…。」
「いいから顔上げろ!!」
リュウはソラの方を掴んで無理矢理顔を上げた。
「何を今更…。俺たちは仲間で友達だろ?」
「…!」
「そうですよ! 先輩らしくないです!私たち何のためにここに来たと思ってるんですか?」
「それは…」
「アンタを連れて帰るため。それだけよ。」
スカイのツンとした態度には、どこか好きな人を思う優しさが隠れていた。
「おら、ソラも。」
3人が手を合わせ円陣を組む。その中に、ソラの枠があった。ソラは恐る恐る腕を伸ばすと、スカイが空いた手で背中を押した。ほぼ抱き寄せに近い。
「俺たちは4人でヒーロー部だ。これは変わんねぇ。…絶対にアイツらを止めるぞ!!! 」
一同が声を上げた。その声は執務室の外にまで響いたが、誰にも聞かれていなかった。
街は既に火の海だった。エージェント達によって倒されていく、罪のない能力者と一般市民。それを食い止めるために、ヒーロー協会のソルジャーとヒーローたちが戦っている。戦争だ。
「オラァ!!!くたばれ!!!」
パワーの一撃で地面が揺れ、ヒーローたちが倒されていく。パラサイトは倒れたヒーローの体に乗り移っては捨て、乗り移っては捨てを繰り返す。完全に捨て駒のように利用している。
「ヒーローなど、この程度か…。」
「そこまでだ! 」
スカイたちがエージェントたちの前に立つ。
「き、君たちは…ヒーロー部の…危険だ!!逃げろ!!」
S級ヒーローが声を上げた。しかし、スカイ達は振り向きもせず、ただエージェントたちを睨んでいる。
「これ以上、好きにはさせない!!」
「俺たちで止める!」
「3人で何ができる?」
パワーが言った。
「3人じゃない…心強い味方がいる。」
スカイが言うとその後ろから、ソラが歩いてくる。ソラの姿にソルジャーやヒーローたちはザワついた。
「ルールブック第38条 裏切り・反逆行為及び無差別処分したエージェントは、階級等の有無に関わらず処分又は殺害して良い。」
ソラがスカイ達の前に立つ。
「ほう。俺たちを止めるってのか?」
「違うな。お前たちをこの手で処分する。」
4人対大勢。数なら不利だが、今の4人ならやれる。確信していた。
「いくぞ!!!」
ソラの一声で4人が突撃する。下級エージェントたちが次々になぎ倒されていく。
「オラァ!!」
リュウの波動弾が炸裂。それに合わせてアイリが銃撃していく。この2人は安定した動きを見せている。
「はぁぁぁっ!!」
スカイは1人で突撃した。相変わらずの無鉄砲さ…だが、それがエージェント達には予想できなかったのかあっという間に数十、百とたくさんのエージェントたちが倒されていく。
残るはパワーとパラサイトの2人。
「ガキ共がァ…調子に乗るなよ!!!」
パワーはスカイに襲いかかる。しかし、ソラは咄嗟にパワーの腕を掴み取り押さえ、首元に鎮静弾を放つ。
「大人しくしていろ。」
さすがはエージェントであり、ロードのリーダー。強さも飛び抜けていた。
「パワーがやられたか…ふっ」
パラサイトが触手を伸ばすと、パワーと生き延びたエージェントを取り込み、人から怪人の姿へと変化していった。
「能力を取り込み過ぎて体が変化している…?!」
「パラサイト・パワー。これが、究極の力だ。」
パラサイトは戦車や装甲車を操り、ソラたちを攻撃する。
「…ッ!」
「アイリ!」
アイリに向かってミサイル弾が発射される。機動力の無いアイリにとっては避けることも難し。リュウは走った全力だ。だが、ミサイルの方が速い…追い付けない…このままじゃ、リュウは諦めなかった。リュウの傍をソラが駆け抜けた。親友の恋人を守る、ソラなりの罪滅ぼしだろうか…。
「…お前に託すわ! 行け!!」
波動で押し出しアイリまで吹き飛ばす。ソラはアイリを押しのけ、ミサイルの攻撃からアイリを守った。だが、着弾した爆風でソラは瓦礫に吹き飛ばされ、鉄の棒が肩を貫通した。
「ぐぁぁっ!!!!?」
「ソラ…!!ソラ!!!」
スカイが駆け寄る。最高戦力が、鉄の棒ごときで負傷して気を失った。
「そ、ソラ先輩…!!」
「アイリ!ソラの応急処置だ!! スカイ、アイツを倒すぞ…」
リュウの言葉に、スカイは顔を上げパラサイトを睨み付ける。
「許さない…!」
スカイの聖騎士の光が、黒く光る…闇、そのものだ。
「暗黒騎士…?ほう。覚醒したか!」
「黙れ。…ソラを傷付けた事…許さない!!闇に飲まれ消えろ!!」
スカイは真っ黒な大槍を振りかざす。
「グングニル。」
装甲車、戦車の車体が切り裂かれ鉄塊になる。ありえない威力に、パラサイトは驚いた。
「予想以上だ…!」
パラサイトは、取り込んだパワーの力を使い地面をえぐる。地面が割れる…!しかし、スカイの前には無力だった。
「消えろ…!」
グングニルがパラサイトの身体を貫いた。その拍子に、パラサイトと繋がっていたパワー、エージェント達が離れ地面に倒れた。
「おのれ…!!聖騎士のガキが!!」
「黙れ。ソラを傷付けたこと…その命で償え。」
口調がいつもと違うことに、リュウ、アイリは恐怖していた。
「まさか…!スカイよせ!!」
スカイはグングニルを振り上げパラサイトの心臓目掛けて突き刺そうとしていた。
銃声が響いた。アイリがスカイの槍を持つ手に狙撃していた。
「アイリ?何をするつもり?あなたも、消えたいの?」
ターゲットがアイリに向いた。
「せ、せんぱ…」
「消えたいの?」
槍がアイリを向いている。怖い。逃げたい。アイリは腰が抜けて尻もちを着いた。
「やめろ!スカイ!」
恋人を目の前にして、リュウはスカイを睨んでいる。右手が波動を貯めている。
「撃たせるな…!」
波動弾の構えを取る。受けたらスカイですら吹き飛ぶ事をリュウを知っていた。
「スカイ…先輩、私、怖いです。今の先輩、先輩じゃ無いみたいです…。」
「何を言ってるの?私は私。用がないなら、私にアイツのトドメを刺させて。」
冷徹な声に2人の背筋が凍った。スカイが振り向いて、パラサイトに近付く。
「時間取らせた。すぐに終わる。」
槍を振り上げる。すると、スカイの手が撃たれた。その拍子に槍が落ち闇に消える。
「何して…ッ!」
スカイが振り向いた方向には、肩を押さえて銃を向けるソラがいた。
「ソラ、どうして…!」
「先輩…!」
「そこまでしろとは、言ってない。」
スカイは俯いた。
「元に戻ってくれ。俺は元気だからさ、ね?」
「でも!あなたを…失いたくないの…!」
暴走した力にスカイはどんどん飲み込まれていく。
「お、おい!スカイ!」
「ハハッ、力も私に味方してる…覚醒したんだやっと…ソラを守れる力が…!」
聖騎士から暗黒騎士への能力変化、今までに類を見ない覚醒だった。ソラは足を庇うように動かしながら、1歩ずつ歩んでいく。
「今のスカイ…俺の知るスカイじゃない…!戻ってよ…お願い。帰ってきてよ。」
「もう、昔の私はいないの。あなたを守る為の力…この力に歯向かうなら、ソラ。あなただって消してあげるわ。」
グングニルがソラを向いた。明らかな殺意が、ソラに向けられている。
「…スカイがその気なら。分かったよ」
「ソラ先輩まさか…!」
「戦う。」
「無茶言うな!相手は未知の能力だぞ!それに、間違えればスカイだって…」
「これは、俺と彼女の問題だから。」
そう言って銃を引き抜いた。鎮静弾は残り60発。十分だ。
「絶対助ける。」
ソラはスカイに戦いを挑んだ。
ソラはエージェント時代から培ったその体術で、スカイを翻弄。そしてあっという間に背後を取った。
「ここ!」
背中を狙い銃口を構え放ったが、オーラによって跳ね返される。
「ッ!」
「何をしているの?大人しくすれば、ソラは私が守るのに。」
ソラは諦めず、何度も距離を詰めては何度も攻撃した。だが、どれも跳ね返され体力と弾数だけが減っていく。
「諦めなさい。私に勝てないの。」
「いや…諦めねぇよ…。スカイを救うためなら!」
銃撃しながら突撃する。グングニルを動かし、弾丸を防ぐスカイに、ソラは弾を失った銃を投げ飛ばした。予想外の攻撃に、スカイはよろめいき、ソラはその瞬間に懐へ潜り込み能力イレイスでスカイの暗黒騎士を消そうと試みた。
「何をしている!!離せ!」
「嫌だ!いつものスカイに戻れ!!」
最初は懐へ手のひらをかざすだけだったが、攻撃が激高する度にソラは、スカイに抱き着く姿勢をとっていた。
「離すもんか…!大切な人を連れて帰る。それが俺のミッションだ!」
ギューッと抱きついた。その熱が伝わったのか、スカイの顔が緩んだ気がした。
「邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ!!!」
グングニルを振り回しソラを吹き飛ばした。
「ぐぁっ…!?」
その様子を後ろから見ていた、リュウたちは立ち上がりソラの元へ走る。
「先輩!もう。ボロボロですよ!」
「無理すんな!! 」
「やる…やる、おれが…スカイを救う…!」
ヨロヨロと立ち上がり、スカイに微笑む。
「お願い…戻ってきて…」
「その顔…ッ!」
リュウもアイリも立ち上がり、ソラと並ぶ。
「無理すんな。俺たちはヒーロー部。この街を守るヒーローだ!」
「そうですよ! 今回の任務は、スカイ先輩の救出!ですね! 」
「俺たちは4人でヒーロー部だ…絶対連れて帰るぞ!」
3人はスカイの前に立つ。
「3人がかりで?構わないわ。返り討ちにしてあげる。」
能力の暴走か、誰か判別する機能が衰えているようだ。
「リュウ、アイリ!援護頼むよ!」
ソラが突撃すると、それに合わせてスカイから闇の波動が飛ばされる。
「させません!」
アイリの的確な射撃によって、玉が破壊される。
「オラァ!」
リュウの波動が、スカイのオーラをぶち破り直接攻撃できそうだ。決めるなら…今しかない!
「戻ってこい…!!!千尋!!!!」
ソラの声にスカイが顔を上げた。一瞬だけ引き戻された千尋という素顔の面が、スカイの抵抗力を無にし、ソラを受け入れるように腕を広げた。
「能力なんて…消えてしまえばいい!」
イレイスフルパワー。相手の能力を消すと同時に、自らの能力も消す大技であり、ロードのボスだけが組織を隠蔽する為に使われる技だ。
スカイに抱きついたソラは、スカイの体にイレイスの力を流し込む。ゆっくり、ゆっくり、暗黒騎士という強大な力を消し去っていく。
「ぐっ…やめろ…!そ、ら…やめ…!!! たす…けて…!!」
たすけて。その言葉にソラの抱く力が強くなった。絶対に救う。それが、ソラのヒーローとしての初のミッション、絶対に成功させたかった。絶対に救い出したいから!
「一緒に帰ろう!!」
ソラとスカイの間に、オレンジ色の光が放たれた。リュウたちが目を開けると、そこには倒れたスカイを抱き抱えるソラがいた。
「終わった…のか?」
「ミッション、コンプリート…」
「そ、ソラ先輩?スカイ先輩は?」
「寝ているさ。本当に愛らしい寝顔だよ。」
スカイは気絶してソラに体を委ねている。
「良かった…スカイ先輩死んだのかと…。」
「おい、アイリ。」
リュウがアイリを小突いた。
「死なせないさ。彼女は…俺の大切な人だから。」
ソラのスカイへの思いが、今初めてリュウたちの前で明かされた。エージェントになって、戦って心苦しい夜も、ヒーロー部のひとりとして嘘を隠しながら戦った昼も、ソラはスカイだけを考えていた。
「帰ろう。俺たちの、部室へ。」
そう言って、4人はいつもの居場所へ戻って行った…。
あの激闘から数ヶ月後…。
「え、えぇ!?ロードとヒーロー協会が合併!?」
「ど、どういうことですか!!敵対してたハズ…」
「まぁ、まて…その件は、適任者から話してもらう。」
部室の扉が開くと、ソラが入ってきた。
「ソラ先輩!ヒーロー協会とロードが合併って、どういうことですか!?」
「その件か。俺からお願いした。一応ロードのボスだし。すっげー、頭を下げたし、めっちゃ奉仕活動したよ。ガチで刑務作業って感じ(やったことないけど)」
ソラは笑った。
「で、なんで合併なんか?」
「あぁ。ロードって裏から能力犯罪者を見てきただろ?それがヒーロー協会にも認められたらしくて、だったらヒーロー協会の管轄としてロードを引き入れたらいいんじゃない?って話しなった。」
「じ、じゃあ…どうなるの?」
「活動内容は今までと同じ。ただ、ロードのボスは一応俺だからさ、やり方をロード側が変えた。ヒーロー協会のルールに従って命令を出す。不要な対象者処分は無し。それだけ。」
ソラは軽く話した。そして、ポケットからスマホを取り出しスクリーンに繋いだ。
「それと、3人にはこれから、ヒーロー協会 ヒーロー部のS級ヒーローとして活動してもらう。」
「え、えええぇぇっ!?S級!?」
ヒーローたちの中でも最高ランク。それが、ただの高校生に与えられたのだ。リュウとアイリは盛り上がっているが、スカイは不安そうだった。あの戦いで能力を失った。なのに、S級ヒーロー…不甲斐ない所見せてしまいそうで怖かった。
「千尋、俺がサポートするから。」
その言葉に、スカイは、千尋は笑顔になった。
「ふんっ、別にアンタの力無しでも…それに、アンタだって能力ナシでしょ?リーダーやれるの?」
「やれます〜!」
その何気ないやり取りに、アイリは大笑いした。
「アハハっ!! ホント、お似合いですね!2人とも!」
「だな!」
千尋は赤面した。
「うるさい!アンタらは黙っててよ!!」
「キャー!スカイ先輩が、怒ったー!」
ソラはこの瞬間に愛おしさを感じていた。やっと戻ってこれた、何気ない至って平凡な日常に。
「おい。泣いてんのか?」
「え?」
目を拭った。
「やっぱり、お前を入部させて正解だった。これからもよろしくな、相棒。」
リュウはグータッチを求めた。
「あぁ!」
ソラもリュウにグータッチした。男同士の熱い友情。今まで感じたことの無い感情に、ソラは嬉しく微笑んだ。
「あ、そうだ…」
アイリはリュウたちを集め耳打ちした。
「ハハッ、そうだな…!」
「そうね。」
3人はソラに向き直り、
「おかえりなさい!」
_____ただいま!
ソラの優しい返事が、4人の友情をさらに深めたのだった。
END
ぽちたん
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コメント
1件
第6話、一気に読んじゃいました…!ソラが土下座するシーン、胸がぎゅっとなりました。でも「顔上げろ」って言うリュウの言葉に、仲間の絆を感じてじーんとしました。覚醒したスカイが暗黒騎士になってしまう展開は切なくて、でもソラが「千尋」って呼びかけた瞬間、心が震えました。最後の「おかえりなさい」「ただいま」のやり取り、本当に温かくて、読んでよかったです。ぽちたんさんの描く4人の絆が、とても丁寧で素敵でした🌷