テラーノベル
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【設定・注意事項】
しろせんせー×まちこりーた
※ニキ×18号前提
・マイナスネタ
・女子研究大学というグループ自体存在しません。全員一般人設定(1部学パロ)
・学校名は適当に付けました。実在していても何の関わりもありません。
・ハピエン?(気持ち的にはハピエン)
・長めのお話し(約1万字)
以上を理解した方のみお進みください。
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きっかけは、なんてことない。
本当になんてことのない、あいつの一言だった。
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しろせんせーside__
💖「せんせーってさ、ピアス開けないの?」
__ガチャン!!!
いつの間にか、己の手に収まっていたはずのティースプーンが滑り落ちていた。
たった一瞬。1ミクロさえも時間はなかったかもしれない。
それでも、深い沼の中に落とされたかのようだった思考はその音で呼び戻された。
💖「うっっっわ!まって飛んだ!」
❤️「りぃちょくん、ハンカチ、拭いて」
向かい側に座りパフェを口に運ぼうとしていたりぃちょの服袖にはコーヒーの水滴。
否、りぃちょはコーヒーを飲まない。そして、今日飲んでいたのは俺だけ。
慌ててティッシュを取り出して謝ろうとすればいつの間にかキャメがハンカチを取り出していた。
💙「……っあ、すまん、滑った、」
💖「まぁ染みてないしいいけど……せんせーおっちょこちょい?」
💙「ちゃうわ」
はは、と恐らく1ミリも気にしていないりぃちょが笑って、改めて、パフェのいちごを口に運んだ。
💖「ほら、せんせーってチャラチャラしてるけど意外とピアス開けてないじゃん、」
あ、続くのかこの話。
先程の音で途切れたと思っていた話は終わらないらしく、朝のテレビ番組で目に入った俺の星座の”もっとも悪い運勢”の文字が脳裏に過ぎった。
❤️「あー、、まぁ確かに、せんせー以外は俺達全員ピアス開けてるもんね」
💖「そ、せんせーなら高校生くらいの時からピアスなんて開けてそうだったのに」
💛「………………、」
左隣りの親友が、少しだけ顔を歪めたのに気づいて少しだけ反対側に顔を背けた。
分かってるよ、分かってるけど、
💙「…別に、開けたことないし……、開ける気はあらへんよ」
💛「っ……………………!」
あぁ、なんとも薄情な言葉だろう。
ガタッ、と大きな音を立てて立ち上がったニキ。
自分に向けられた訳でもないのに、驚いたような顔をしたりぃちょとキャメ、そして周りの人の視線がどうにも痛く感じた。
許せよ、もう。
もう、無かったことにさせてくれよ。
💖「ニキニキ…?」
💛「っ、ごめん、俺、トイレっ!w」
💖「なになにそんな我慢してたんかよww」
❤️「びっくりした…いってらっしゃい」
💛「行ってくるわ、w」
あぁ、逃げられた。
俺も、一緒に行けばよかった。
……いや、アイツは俺の事許してないし、行かなくて正解か。
トイレへと向かったあいつの顔を見て、嘘臭い作り笑いだな、と思った。
でも、赤の他人である周りや、大学からの薄っぺらい付き合いであるりぃちょやキャメでは、あの作り笑いにも気づかない。気づくことが出来ない。
きっと、俺があいつの作り笑いに気づいているのなら、同じだけあいつも俺に気づいている。
それが、どうにも息苦しい。
💙「……………………、」
💖「逆にニキニキは高校卒業してから開けてそうだよねー」
❤️「え?俺的にはニキくんこそ高校生から開けてそうだったけど」
すぐに楽しげに話を戻した、戻せた2人を酷く羨ましく感じてしまった。
何も知らない、というのは無惨で、それでいて物凄く楽だから。
💖「いや、確かニキニキ彼女いるって言ってたじゃん?清楚系らしいし、それなら卒業してからかなって」
💖「あ!確かせんせー2人と高校一緒だったよね?いつからニキニキピアス開けてんの?」
まぁ、俺に来るか、とため息をついた。
あの時のことなんて、よく覚えている。
💙「…ニキは、高二の時からピアス開けてる……、てか、ニキの彼女も同じ日にピアス開けたし、」
💖「え?!ニキニキの彼女もピアス開けてんの?!!」
❤️「意外…………」
💙「お前ら会ったことないやろ」
❤️「まぁないけどさ、w清楚って言われるとやっぱね〜」
💖「そーそー」
💖「ていうか、ニキニキの彼女も意外と凄いんだね」
💙「…………、?」
唐突に、嫌味とも取れるような褒め言葉を発したりぃちょに首を傾げる。
こういうやつだ、無意識にデリカシーがない時がある。
普段はまぁいいやつだから憎めないのだけれど。
💖「普通彼氏と同じ日に開ける勇気ある?」
やっぱニキニキの彼女も彼女だね、とりぃちょが笑う。
何も知らないのに、何も知らないから、笑っていられる。
アイツはそういうやつだった。
勇気があって、大切な人のためなら、人を叩くことなんて躊躇わないようなやつ。
憎む時はとことん憎んで、自分のテリトリーに入らせる人間は極僅かのみ。
アイツのテリトリーに入れたとして、追い出されないわけでもない。
そういう、やつ。
なんか、何も考えたくないな。
コーヒーの水面に映る自分の顔は、酷く滑稽だった。
💛「ただいま〜…なんの話ししてんの?」
💖「っあ!ニキニキ!ニキニキの彼女さ、ニキニキと同じ日にピアス開けたってまじ?!」
💛「…え、あ、マジ、だけど……え、それ、ボビーから、聞いた、?」
💖「うん?そうだけど?」
首を傾げるりぃちょの奥にいる、ニキからの視線が痛い。
珍しいとか、思ってんだろ。
自ら足を踏み込むような、そんな言動に。
分かってる、自分でも、自分でもそう思うよ。
何年も経って、なんで今。
馬鹿馬鹿しいじゃないかと、笑ってしまいたかった。
💛「…あー、そっか、!そう!俺と同じ日に、彼女もピアス開けた」
💛「ちなみに、」
水面に映る俺の顔とは正反対に、何故か少しだけ明るい表情になったニキ。
こつ、と彼が自身の指で自身の耳元のピアスを叩く。
結界の内側には容易く入れない癖に、なんやかんやコミュ力が高くて、誰とでも仲良くなれたアイツ。
意外だろ、あの日、俺だって、俺”達”だってびっくりしたよ。
💛「彼女は両耳開けたw」
💖「え”っ”っ、」
❤️「おぉ……勇気ある…」
💛「んまー、俺らの学校そういう伝統あったからなぁー」
❤️「伝統?」
あぁ、懐かしい。
俺の周りも、俺の”隣”も。そういうのが好きなやつで。
💛💙「青葉学園の三階空き教室で一緒にピアスを開けたカップルはずっと幸せでいられるらしい」
一瞬のズレもなく、俺とニキの声が被る。
この言葉を口にするのは何年ぶりだっただろう。
少し驚いたような顔をして俺を見つめたが、またニキは2人に向き直った。
💛「そのまんま、俺らが通ってた青葉学園に昔の使わなくなった備品だとかが置かれてる空き教室があってさ、」
💛「そこで一緒にピアスを開けたカップルは幸せになれる」
💛「どっちの耳とかは別になくてさ、…6…7年だっけ、くらい前から続いてた伝統?つーか都市伝説みたいなやつ」
💖「へぇ〜、、珍しいね、そういうの」
💛「りぃちょ達んとこはなかったん?」
❤️「俺らのとこはありはしたけどそういうんじゃなかったね」
💖「うん、カップルってか親友でいられるみたいな。ピアス開けるとかそんな体張れない」
💛「っはwまぁ確かに、ピアスって勇気いる」
ちなみに俺達はやった、なんて笑って片手でハートの半分を作るりぃちょ。
慌ててキャメさんがもう半分のハートを作る。歪だけど、ちゃんと繋がっているハート。
あぁ、いいな。なんか、羨ましい。
繋がってる。もう半分が、確かにそこにある。
いつの間にか届いていたアイスをぱくり、と1口食べてニキは言った。
💛「…やっぱやりたくなるよなぁ、」
そうやな、と言おうとした言葉は喉の奥でつっかえて声が出なかった。
口を開いて固まった俺を不思議そうに見ていたりぃちょは、少ししてあ!とまた大きな声を出した。
💖「俺!ニキニキの彼女会ってみたい!!」
💛「え」
思わずと言ったように漏れたニキの声が耳を通り抜けて言った。
ニキの彼女に会いたい?いつ
💖「ねぇ、今呼ぼうよ!!!」
💖「ここ来る時ニキニキの彼女買い物してるって言ってたじゃん!1人でしょ?じゃあ呼ぼ!!」
💛「いや、1人だけど、今は……」
ちら、とニキがこちらを見る。
こっち見んな、とでもいうようにそっぽを向きたかったのに、首は動かない。
神様は、俺のことが嫌いなのだろうか。
すると、今の俺の疑問に頷くかのようにテーブルにあったニキのスマホが震えて光った。
電話。発信源はニキの彼女。
💖「あ、それ彼女でしょ?!じゅうはちって書いてある!!」
💛「あー、、いや、んー、、」
💖「出よ出よ!で!呼ぼ!」
❤️「りぃちょくん、落ち着いて、」
また機会あるでしょ、とキャメが宥める。
言い淀んでいるニキに気がついたらしい。
だがキャメさんはりぃちょに甘い性格だ。りぃちょに強くは言えずにいる。
少し考えたような表情をした後、電話だけ出る、呼びはしないから。とニキが言った。
💛「……もしもし、じゅうはち、?」
懐かしい、呼び名。
よく、飼い主に駆け寄る子犬かのようにニキは何度もその名前を呼んでいた。
💛「え……あるはず…っあ”、これ前のやつだ……うん、空っぽの、え、でも買い物中でしょ、それに……あの…」
やっちまった、とでも言うような顔をするニキに向かってキャメが首を傾げる。
難しそうな顔のまま、ニキはキャメに向かって自身の財布を突き出した。
❤️「ん?開けるよ?………、なんも入ってないけど、」
💛「……すいません買い換える前のと間違えました、」
途端にリスのように縮こまって謝るニキ。
正真正銘、りぃちょがどこを探っても振っても逆さにしても有り金を探しても何も出てこない。
多分、そのことの電話か。
そして、それに対し嬉しそうな顔をしたのはりぃちょ。
💖「じゃあ持ってきてもらう?!」
💛「えぇ……でも、……ん?なにじゅうはち、うん、大学の最寄りのファミレス、いや、来たら……えっと……」
また、こちらを見るニキ。
どうにかして断って欲しい気持ちもあるが、りぃちょのキラキラした目と甘えたら?というキャメの声。そして彼女の言葉によって断りにくいのだろう。
現にアイツはまだ、声が出ずにいる俺の名前を出していない。
しょうがない。何とか理由をつけて先に帰ればいい。
どうぞ、とジェスチャーをした。
💛「ごめん…お願いしていい?入って一番左の奥から……えっと…3番目」
💛「うん、まじごめん、ありがと、なんか奢る!……それは勘弁してください…」
少しのやり取りを挟み、通話を切ったニキ。
よし、飲みきったし、レポート先に終わらせたし、いいか。
💙「俺、帰るわ」
ニキが通話を切ったと同時に間髪入れずに声を出した俺。先程までが嘘のように、その言葉だけはすんなりと口から出た。
え?と不思議そうな顔をする赤とピンク、そして気まづそうに目を逸らす黄色。
💙「レポート終わったし、用事出来てん、お金置いてくから、お釣りはご自由にどうぞ」
💖「えー!お釣りは貰うけどニキニキの彼女会わなくていいのー?!」
💙「欲に忠実やな、会ったことあるしええの」
💖「ケチーもったいないー」
💙「ケチなのかもったいないのかどっちかにしろや」
その後、帰ろうとしてもあーだこーだ駄々を捏ねて帰させてはくれないりぃちょ。
ああもう、アイツ足速いんやから、行かせてくれ。
少しの焦りを覚えて入口を見る。
💙「…………ぁ、」
いた、もう。近くにいたんかよ、はや。
いや、待て、出れない。
扉越しに、俺を見たアイツの瞳が大きく見開かれる。
何年ぶりやろ。アイツのこと見んの。
ゆっくり、ゆっくり。
アイツの足が、こちらに向かってくる。
扉を開いて、真っ直ぐ、そのまんま。俺達の方へ。
💖「うっわ美人………………」
❤️「最初に挨拶でしょ、」
💛「……あー、、っと……」
💜「………、はじめまして、ニキニキの彼女です」
💜「…じゅうはちとか、自由に呼んで?」
俺の方は見ず、見ようとせず、2人に向かって。
❤️「はじめまして、キャメロンで……えっとこっちがりぃちょくんで、」
💖「はじめまして!可愛いですね?!」
💛「人の彼女ナンパすんな」
💖「あだっ」
こちん、とニキがりぃちょの頭を突く。
小さく笑うニキの彼女。
その表情は、先程のあいつと似て固い。
彼氏彼女揃ってわかりやすい作り笑顔。今回の原因は間違いなく俺で。
💜「ニキニキ、はいこれ、」
💛「ごめん、ありがと!」
💜「ほんと忘れないようにしてよ…?」
💛「でもじゅうはち届けてくれるしー」
💜「次からはやめるね」
💛「すみません」
あぁ、ようやく、帰る。
たった数分。たった数分の出来事なのにものすごく長く感じた。
でも、終わる。
きっと全部、今日は運が悪かっただけだ。
たまたま運勢が最下位で、たまたまりぃちょがピアスについて聞いてきて、たまたまニキが財布を間違えて、たまたまりぃちょがニキの彼女に会いたいと言って。
たまたま。全部たまたま。
今日が終わればまた普通になれるだろう。
またいつも通り、少しつまらない講義を受けて、レポートを行って、帰って。
もう、昔のことなんて俺には関係などないのだ。
__チリン
視界に入った、透明な紫が音を立てた。
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ドミノが崩れるのは簡単だ。
大きな衝撃が加わるでもなく、たまたま、偶然。
手が当たってしまっただけだとか、風で揺れてしまっただけだとか。
そんな小さな、たった一つの理由で簡単に全てが崩れてしまう。
人間だって、そう。
私が壊れた時も。
たった一つの、一瞬の出来事があったから。
そして、今、彼が壊れた理由は__
__チリン。
右耳の硝子ピアスが音を立てて揺れた。
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18号side__
せんせーが、苦手だった。
……否、苦手というより、嫌いだった。
高校で初めて話した時も物静かで、あまり人と目を合わせようとしないで。
無愛想。
そう思ったのに、案外良い奴だったことも、割と話の馬が合うことも、いつの間にか幼馴染である親友と仲良くなっていることも、いつの間にか親友が彼の話をする時に顔を赤らめていたことも、彼もおそらく同じだったことも。
高校2年生の冬以来、彼が極端に私から離れようとしたことも。
全部忘れてしまおうとしたことも。
全部全部大嫌いだったのだ。
__ガタンッ!!!
💙「……っ、ふっ……っ、ぅあ”っ……ふっぁ……っう”…っ…」
💖「っせんせーっ?!」
💛「っは、ボビ……っ!」
❤️「ちょ、っ……誰か……」
💜「…………………………」
久しぶりに彼の顔を見た時、もう穴が塞がってしまった耳を見て、息が詰まりそうになった。
分かっていた、分かっていたのだ。
彼が変わっていることも。きっと、彼はもう昔のことなんかただの過去だと思っていることも。
でも、それでも。
ずっと、ずっと好きでいてくれなんて言わないから。
ただ、忘れないでいて欲しかった。
彼の過去に、必ず”彼女”はいたのだと、憶えていてほしかったのだ。
昔のアルバムの1ページにでも、残していてほしかったのだ。
__なーんだ、
💜「おぼえ、てんじゃん、せんせー」
💙「っ……ぅ”ぐ……っあ”っ……っぅ”っ……」
きっと、私と彼以外。
ニキニキでさえも、気づいていないのだろう。
小さな小さな硝子の音1つで、ここまで泣いてしまえるのだから。
きっと彼は1ページなんかではなく、無意識的に何十ページ、何百ページにも残していたのだろう。
きっとまだ、耳元と違って、彼自身の穴は塞がっていなかった。
💜「4年半、だよ」
💜「せんせーは付けなかったけど、……付けようとしなかったんだろうけど」
💜「私は4年半、付け続けたよ」
💜「右耳は、塞がらなかったよ」
💙「……だって……っ、もっ”…お”そっ……」
💜「遅くない」
💜「遅くないんだよ」
💙「っ……う”っ…………」
💜「ねぇ、せんせー、」
💜「恋人、いる?」
💙「いない”っ………っ、つく”れなかっ”た……っ”」
💜「……じゃあ、もっかい、開けてみようよ」
💜「左耳、予約されてるよ」
💙「っ……ぅ”っ……あ”っ……ぅあ”ぁっ……」
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恋人ができた。
高校1年生の冬のことだ。
💚「せーんせー、いっしょかえろー」
💙「おー、」
付き合っても比較的距離感は変わらず、のんびりとしている恋人だった。
でも、スキンシップをとった時に照れて顔を隠す仕草だったり、自分の写真フォルダの中に彼女とのツーショットが増えている事だったり。
そんなことであぁ、恋人になったんだなあ、と顔がにやけた。
彼女から、お願い事をされた。
高校2年生の夏のことだ。
💙「俺らも?」
💚「そぉ、……どお、かな、って……?」
💙「なんで疑問形なんよ」
💚「んあ”ー、やりたいです!…やっぱ昨日の見て…」
週に1、2回ほど行う寝落ち通話。
その時に少し躊躇いがちに彼女から話されたお願い事は一緒にピアスを開けたい、というものだった。
実はつい先日(と言っても昨日である)にニキとその彼女である18号が青葉学園の都市伝説通りに三階空き教室でピアスを開けていた。
それを知ったまちこは2人の遠慮のなさに若干引いていたが少し羨ましそうな顔で見ていたのを覚えている。
普段おねだりや頼み事などしない彼女にしては珍しい提案だった。
💚「っあ、せんせーがいいならだし、多分痛いし、簡単に塞がらないし、一時の彼女に捧げるのが嫌ならいいんですが!!」
💙「一時の彼女ってやめてくれへん?永遠のや永遠の、…えーよ、俺もいつか開けたいな思ってたし」
💚「ほんと?!?!」
やった、と電話越しにはしゃぐ彼女。
「永遠の彼女」という言葉をスルーされたのは気に食わないが喜んでいるのならまあいいか、と口元が緩む。
これだからニキに「愛妻家」と言われるのだろう。ちなみにそう言われた時には「お前も大概変わらんやろ」と返した。どちらも彼女側が照れていた。
実際、彼女大好きな自信と自覚はある。
その5日後、まだ怖い、まだ怖いと躊躇い続けていたまちこの勇気がついに出たのか、放課後に三階空き教室で2人の耳元に穴が開いた。
お互いに開けあって見れば案外痛くなくて。
でも、目を見開いたのはその後。
💚「……えっと……もう1個空けて欲しくて…」
そう言いながらまちこが取り出したのはもう1つのピアッサー。
あれ、いつの間に買ってた?一緒に買いに行ったよな?
その疑問が顔に出ていたのか、彼女はまた口を開いた。
💚「じゅうはちとね、買いに行ったの」
💚「じゅうはちは勢いで空けたって言ってたけど、私もピアス空けるって言ったらもし勇気があったら両耳空けて片方お揃いにしないかって」
💚「今日はまだ付けられないけど……これ、」
そう言ってまちこが見せてくれなのは、綺麗な、透明な翡翠色の硝子ピアス。
中に鈴のようなものが入っているのか、揺れるとちりん、と物凄く小さな音が鳴るピアス。
💚「じゅうはちはね、紫なの」
💚「たまたま目に入って、2人とも一目惚れw」
💚「やっぱ1人で空けるのは怖くて…せんせーなら安心できるし、」
やっぱ無理?とこちらを見上げた彼女に首を振って、もう一つ、彼女の右耳に穴を空けた。
その1週間後、デートをした時に一緒に選んだ俺とまちこでお揃いのピアスは2人の左耳に収まった。
その後の彼女は嬉しそうに、俺とのツーショットをねだった。
恥ずかしがって、彼女のスマホに残されたツーショットは俺に渡してくれなかった。
彼女が死んだ。
高校2年生の冬のことだった。
💙「は…………ぁっ……?」
初めてその事実を知ったのは彼女が亡くなった数日後のHRでのこと。
「なんで」なのか、「嘘やろ」なのか、「まちこ」なのか、口に出そうとした言葉は分からなかった。
ただ、何の言葉にもならず息のような声が俺の口からは漏れた。
涙は、出てこなかった。
その翌日。
隣のクラスから、18号が俺のところに来た。
💜「…………、これ、」
そう、躊躇いがちに俺に渡されたそれは、何度も、幾度も見て、見慣れた字で俺の名前が書かれてあった。
彼女からの、俺への謝罪の手紙だった。
実は、病気だった。
寿命が長くないことは分かっていた。
でも、それでも俺を好きになってしまった。
どうしても、俺との思い出を作りたかった。
病気のことを隠していてごめん。
長くないとわかっているのに、告白をしてしまってごめん。
“一時”の彼女のために、ピアスを開けさせてしまってごめん。
好きになって、ごめん。
俺と彼女は、ずっと一緒には居られなかった。
それを彼女は分かっていて、俺は何も知らなかった。
何も知らない、というのはとてつもなく無惨だった。
そして、分かっていた彼女は、俺を好きになったことを否定した。
好きになってしまったことは間違いだったとでも言うように、俺に謝罪した。
全部知っていた彼女が伝えてきたのだ。
「私とせんせーはきっと、付き合うべきじゃなかったの」
どうしても、どうしても涙は出てこなかった。
それから。
彼女を思い出すのかどうしようもなく怖くなってしまった。
忘れた方がずっと楽だと思った。
彼女が付き合うべきでなかったと言うのなら、きっと、俺が彼女を好きになったのも間違いだったのだから。
俺の恋心も無かったことにするべきだと思った。
彼女とお揃いのピアスも付けることをやめた。
でも、だからといって代わりのピアスをつける気にもなれなかった。
彼女の親友である18号と話すこともなくなった。
話しかけようと思えなかった。
極端に避けた。
18号は唯一、彼女の病気について知っていた。
彼女と仲が良くて、彼女の親友と付き合っていた俺の親友とも、距離を置いた。
彼女に纏わるものや人は全て避けた。
そんな生活になったばかり、年が明けた頃のことだ。
__パンッ!!!!!
💜「……、ふざけ、ないでよ」
彼女の親友に、頬を叩かれた。
💜「何のつもり?なんで昨日来なかったの?なんで避けるの?」
💛「ちょ、じゅうはち、ボビーもまだ、さ」
💜「私達のことが嫌いになった?まちこのことも嫌いになった?」
💙「………………、」
約1ヶ月ぶりに聞いたその名前に、首を縦にも横にも振れなかった。
嫌、動かなかった。
💜「…何か言ってよ、なんで嫌いじゃないって言わないの」
💜「なんで…っ、最後くらい会いに来なかったの……っ!!」
昨日は、彼女の葬式だった。
💜「ずっと待ってたの!きっと、絶対来るんだって、だってせんせーまちこのこと大好きだから、…!今日くらいっ、大好きだよって言いに来るって思ってた”っ……!」
💛「じゅう、はち、」
💜「なんでっ……ぇっ……ピアス外しちゃったの……っ?」
その言葉に、つい、顔を上げてしまった。
その耳には、何度も見ては口元が緩んだ、硝子ピアスの色違いがあった。
彼女の親友は、頬を酷く濡らして泣いていた。
俺は、泣いていなかった。
誰かが教師を呼んだのか、俺は保健室の後に、彼女の親友は職員室に誘導された後、家に帰された。
教師にあまり関わりすぎないように言われたからか、俺の態度が気に食わなかったからなのか、それ以降、彼女の親友が俺の元に来ることはなくなった。
少し、楽だと思った。
彼女の名前を聞くこともなくなったし、彼女の親友を見る度に感じる、息が詰まるような感覚を覚えることもなくなった。
それでも、1人だけ。
彼女と関わっていた人間の中で1人だけ。
俺の親友だけは意地でも俺から離れようとしなかった。
彼女の親友と交際は続けているはずなのに、彼女と関わりがあるのに。
「お前がなんと言おうと、俺はお前の傍にいる」
そう言われた時、何故か、少しだけ。
少しだけ、ほっとしたような気がした。
大学生になって、俺の親友と同じ学校に通って、2人の新たな親友ができた。
いつの間にか、左耳の穴は塞がっていた。
きっとこの先もずっと、穴が開くことはないと、思っていた。
もう、耳の穴も、俺の心の穴も。
塞がっていると思っていた。
思い込んでいたんだ。
____________________
💙「俺な、ニキがずっと俺の傍にいる言うた時、ちょっとほっとしたんよ」
そう言って、軽く、左手で耳元を触れた。
目の前に座る奴の右耳とは対象的に、右耳の分を落ち着かせるような、小ぶりのピアス。
約、4年ぶりに耳に収まったピアス。
少しむず痒くて、また、手を離した。
💙「俺はまちこを忘れるべきや思ってたけど、どっかで完全に関係が無くなるのが怖かった」
💜「…………うん、」
💙「まちこの病気も知ってて、まちこと家族の付き合いだった18号と付き合ってるニキと一緒に居たら、まだ、大丈夫や、って……多分、どっかで思ってた」
18号がそっと、手元の紙を撫でた。
まちこが生前に書いて、18号伝に俺に渡った手紙。
💙「まちこは俺と付き合うべきじゃなかった言うてたけど、……やっぱ、どうしてもそうは思えへんのよな、w」
現に、今俺の左耳に収まっているピアス。
高校生の時に開けて以来、これ以外のピアスは買ったことがなかった。
そのピアスと手紙は、どうしても見れなくても、捨てることも出来なかった。
💜「……まちこね、」
💜「病気がわかった時から、『しょうがないんだよ』って、それしか言わなかったの」
💜「まちこの家族にも、私にも」
💜「『いつか死んじゃうのが、早くなっただけだし』」
💜「『分かってたら、それまでにやりたいこといっぱいして、悔いなく終われるし、』」
💜「『だから、大丈夫』だ、って」
💜「学校も、ほぼ休まずにずっと行ってて、」
💜「強いなって、思ってた」
💜「……でも、」
また、手紙をその手が撫でる。
💜「高一が終わる時くらいから、ね」
💜「『死にたくないなぁ』って」
💙「…………、っ、!」
彼女ができた。
高校1年生の冬のことだ。
💜「高二の夏には、」
💜「『死ぬの、少し怖いかも』って」
💙「っ………っ、」
彼女から、お願い事をされた。
高校2年生の夏のことだ。
💜「高二の冬に、最後に病院に行った時は、」
💜「ごみ箱にいっぱい、いっぱい、濡れて書き直された手紙が捨てられてた」
💙「………っ…っ、」
彼女が死んだ。
高校2年生の冬のことだった。
💜「これね、ずっと渡したかったの」
そう言うと、18号は大事そうにカバンから1つの箱……いや、額縁を取り出した。
💙「これ、……ぇ、……あ、…」
何よりも濃かった3年間、身にまとっていた少し鮮やかな色味の制服。
彼女が気に入ってる、と言っていた制服。
それを身につけた俺と彼女が写っている、写真。
彼女の右耳には翡翠色の硝子、俺と彼女の左耳には小ぶりのストーン。
見たことはない写真。でも、分かる。
撮りたいとねだられて、でも、恥ずかしがって渡してはくれなかった、きっと、それ。
💜「まちこの部屋と病室に1つずつ、飾ってあったよ」
💜「1つ、せんせーが、持ってて」
また、数日前のように涙が溢れた。
あの日以来、すんなりと涙が出てくるようになった。
目の前の彼女の親友を見る時に感じていた、息が詰まるような感覚もなくなった。
💙「おぅっ”……っ!も”っ”とく……っ…!!」
左耳には穴が開いた。
心の穴は、やっと、塞がった気がした。
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お久しぶりです!久々から長めのお話を挙げさせていただきました。
まちこさんが卒業する前に一部の女研リスナーの中でイラストでピアス開けてないのしろまちだけだよね、尊!!みたいに騒がれてたなぁっていうのを思い出して書きました(騒いでた人)
普段マイナスネタは書くことはあるのですが復縁オチとか転生オチしか書かなくて。
相変わらず心は救われるお話ですが(大好き)少し珍しい終わり方だとは自分で思っています。
𝐓𝐡𝐚𝐧𝐤 𝐲𝐨𝐮 𝐟𝐨𝐫 𝐰𝐚𝐭𝐜𝐡𝐢𝐧𝐠.
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