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1ヶ月、経った。あと、1ヶ月しか命がない。
まだ、蒼良には伝えていない。伝える気は、ない。
教室の扉を開ける。歩く。椅子に座る。
「蓮花。おはよう。」
「おはよう…」
「どうした?元気ないな。」
「大丈夫だよ。」
「…そうか。」
10日後。残り20日。
「蓮花。来て。」
「どうして?」
「話したいことがある。ここじゃ言えない。」
「分かった。」
話したいこと…?
「蓮花。お前、隠し事してるだろ。」
「え?隠し事?」
どうして…
「1ヶ月前くらいから…ずっと。」
「っ…………」
「図星だな。」
「どうして…どうして…気づいたの?」
蒼良には…言ったほうが、良いかもしれない。誤魔化しても、意味がない気がする。
「最近のお前は、何をするにもどうでも良さそうな感じだったからな。」
分かってたんだ…
「何を隠してるんだ?蓮花。」
「…君が、苦しむことが、分かる…。」
「言ってくれ。」
「……蒼良…落ち着いて聞いてね。私…余命20日なの…」
「っ……!」
「ごめんね。隠してて。言ったら、君は、心配ばかりするだろうから。」
「…嘘…だろ…?ドッキリか何かだよな…これ…」
今、ドッキリだと言ってしまっても、ダメな気がする…
「本当に…あと20日なんだよ…」
「…もう…普通でいられなくなるじゃねぇか…」
「…ごめん…」
「いや…仕方ない…」
「帰る?」
「ああ…」
…かなり、ショックを受けている…ごめん…
「ごめん」
「もう…謝らないでくれ。」
「あーあ。他人の不幸が、全部、自分のところに来て、私以外の人全員が、幸せになれば良いのに…。」
不幸になるのは、自分だけで良い。他の人に…笑っていてほしい。誰も、悲しまないように。
「蓮花。ありがとう。言ってくれて。分かったよ。君の、覚悟が。」
「そう…」
それから、16日が過ぎた。残り、3日。
もうすぐなんだね…
「蓮花……」
「まだ大丈夫だから。まだ早いよ。」
「だよな。」
そして、残り、1日。明日…死んでしまう…
「蒼良。ありがと。」
「…蓮花…」
「今まで、楽しかったよ…私、蒼良には、感謝してもしきれないくらい。ありがとう。」
「明日は、病院なんだろ?」
「うん………私…まだ…まだ…死にたく……ない…。」
「ああ……」
「蒼良…明日は、来てね。絶対に…」
「ああ…」
次の日…病院。
「蓮花。」
「ちゃんと…来てくれたんだね…」
「当たり前だろ。」
「蒼良。私…幸せだったよ。」
「…蓮花。俺は…俺は…君のことが、好きなんだ…。俺の、彼女になってくれない?」
「それ…今言っちゃう?嬉しいけどさぁ。私も、好きだから。」
「そうか…今日だけの、彼女…」
「ごめんね…多分…もう…終わっちゃうよ…」
イヤだ…イヤだイヤだイヤだ!
「まだ…生きていたかったなぁ…」
「っ……」
「蒼良…たったの数分の、私の、彼氏。幸せになってね。蒼良。ありがとう。さよなら。」
「蓮花…蓮花ー!」
彼女は、応えてくれず、ただ、ピーという電子音が、鳴り響くだけだった。
俺は、幸せになる。蓮花の分まで。絶対に。
end