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タイトル「笑顔」
1994年1月24日 母が98歳で亡くなった
葬式は暗く重かった
帰り、車に揺られながら友人と雑談をしていた
暗い内容だけど
1章「ピエロ」
2014年8月1日 44歳になった
今は道化師の仕事をしてる
マジック等で客を寄せ集める簡単な仕事
給料もそこそこで、楽な仕事で気に入っている
今日もマジックを披露していた
すると、友人のジャックが声をかけてきた
「何してんの?」
「何って…ピエロの仕事」
「へえ……ピエロねえ」
つま先から頭のてっぺんまで観察しながらジャックはそう語った
「……御前……24の時の母の葬式、どう思う?」
急に疑問を投げ掛けられた
「え?俺の母の葬式?…いや…俺は養子だから…まあでも、思い出はあったし、辛かったさ」
車でジャックと雑談していた内容と一緒の内容でびっくりした
「12の時に引き取られたしなあ……本当の母みたいだったよ。母なんていないけどね。捨てられて拾われたんだし」
「…嗚呼…」
微妙に噛み合わない会話を聞きながら、ジャックは煙草をふかした
「ゲルシー」
「?」
「ゲルシー・メディックって知ってるか?」
「いや、知らない」
ゲルシー・メディック?
ああ、あれか
「人気アイドルか?それが?」
「御前に会いたいってよ」
どうやらジャックは、それを伝えたかったらしい
そう言えば、ジャックはゲルシー・メディックのボディーガードに就いたんだったな
2章「鏡」
ゲルシー・メディックとテレビで共演した
3年前に、ゲルシー・メディックの家に火災が起きて、中にいた息子を助けてくれた礼で共演させて:貰った
僕は顔にピエロの仮面を被った
見られたくないんだ
僕は人見知りなんだ
休憩に入り、トイレに行った
小を済ませ、手洗いをしていた
鏡の僕が、気味悪く笑ったんだ
違う
違う
辞めろ
目を瞑った
でも消えない
肺が押しつぶされるように痛くなった
数秒後にやっと収まった
ああ、そうだ
道化師の仕事は確かに楽だ
ただ、いじめてくる上司がいるし、仕事中は卵を投げられたり蹴られたりされる
24からずっとされてきた
でも、母を心配させたくなくて続けてきたし、今更辞める気も無いし、ここは給料も高い
辞めたくない
でも、キツイ
正直辞めたいけど、楽しいって思いながらしてる
笑顔になれば、幾らでも幸せになれる
母さんも言ってた
「笑顔でいれば、全部上手くいく」ってね
3章「JOKER」
バーでウォッカを飲み干した
体が熱い
呂律が回らない
震える手で煙草を口に運び、咽せる
肺が痛い
煙草の粉が肺に入ったんだろう
まあ、すぐに治るか
無理のある言い訳をしながら料金を支払い、外に出る
ベンチに子供と母親が仲良く雑誌を見ていた
懐かしい
街灯が嘲笑うかのように点滅する
その点滅をスポットライト代わりに、チラシが貼られていた
「指名手配 JOKER」
JOKER
5年前の連続殺人事件の犯人の名称
今はもう死刑に処されてたんだとか
僕でも、なれるか?
JOKERに
そうしたら、ムカつく奴等に恐怖を植え付けられて、それで、それで
「殺せる」
思わず口にしてしまい、慌てて手で口を封じる
誰も聞いて無くてよかった
そのまま電車に乗り、吊革を握る
電車がトンネルに侵入し、暗闇に包まれる
窓に反射した自分と、窓の自分を見ている自分は別人なのか、わからなくなった
ふと、葬式を振り返った
アレ?母、いつ死んだ?俺、何歳の時拾われた?
あ、11に拾われたんだ
で、母が22歳の時に俺を拾ったんだ
それで死因が…死因が…
母が……59で、俺が、殺した
ああ、そっか、殺したか
思えば、虐待とか、されてたな
ああ、そっか、そっか、そっか
もうJOKERじゃん、俺
じゃあ、いいか
あの3年前の火災も、5年前の連続殺人も、俺だっけ
注目されたいんだよな
火災で助けてそれで満たされてた
連続殺人は……あれは鬱憤晴らしだったな
罪を見知らぬ人に擦り付けたなあ
楽しかったなあ
4章「病院」
病院に行って、薬をもらった
最近幻覚と幻聴が酷いし、頭痛も酷い
昨日だって、吐いてしまったし
と言うか、昨日何時の間にか電車にいたんだよな
僕、何かしたか?
俺が何か…嗚呼…なんだっけ
覚えてないな…
俺は…俺は…
そう言えば、たまに記憶が飛ぶ
なぜかはわからないけど
医者から、「多重人格」と言われた程度だし、多分別の人格が何かしたんだろう
まあ、テレビを見ながら、ヨーグルトでも食べるか
「アイツの母は59で死にました。12歳の時に拾われてからずっと過ごしてたので、さぞキツイことでしょう…あと、何故かアイツは日記の日付が全部おかしいんですよ。今だって、2005年なのに2014年だと思ってるし…アイツは24歳で59の母を殺しましたよ。アイツはズレてるんですよ」
そう語るのは、ジャックだった
5章「独房」
目が覚めた
昔の記憶を見ていた
多重人格が見ていた記憶がごちゃごちゃしていた
「起きたか」
「…ああ」
嗚呼、本当はジャックはボディーガードじゃないんだったな
警察官か
「今何年?」
「2005年だよ」
「………俺は、誰だい?」
「さあな」
「…俺は、いつ母を殺した?」
「24の時に59の母を殺した」
「そっか」
ーーENDーー
作:私