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【ずっと】: knbr
kn視点
br『今日も来てくれたの?』
kn「毎日来るよ」
真っ白で無機質ながらも つんとした匂いが鼻を刺す空間にも慣れてきた頃。
ベッドの横の椅子に腰掛けて彼の頭を撫でる。
kn「身体はどう?」
br『だいぶ良くなってきてるって』
kn「よかった、 」
br『でも、っ…』
kn「ん?」
br『僕さ、ちょっとした記憶障害が出ちゃって』
kn「記憶障害?」
br『うん、』
記憶障害だなんて聞いてない。
当の本人は笑って誤魔化そうとしているが泣きそうなことがバレバレ。
そんな彼の表情をみていると、より一層その事実を現実のものだと突きつけられているようで目を逸らしたくなる。
窓に覗く新緑の匂いだけが強くなって、 いつもの彼の匂いが少し薄くなった気がした。
kn「それって、どんな?」
br『なんか、僕もはっきりわかんないんだけどね?』
br『ちょっとずつ古い記憶から順に忘れていっちゃうんだって』
br『1回忘れちゃうと、なにかきっかけがあったら思い出せるとかもあんまりないって』
kn「今は、?」
br『10歳くらいまでのことは忘れちゃった』
kn「それいつ分かったの?」
br『5日前くらい』
kn「その時に言えよ」
kn「何のために毎日来てると思ってんだよ」
br『ごめん』
へらへらと平気そうに笑う彼に少し腹が立つ。
だが、それどころではない。
いつか俺らの思い出も忘れていってしまうということが何よりも悔しい。
どうして、こんなことに。
br『ごめんね、きんとき 』
kn「謝ることじゃない」
br『でも顔が悲しそうだよ』
kn「…まぁ、流石にちょっとはショックだよ」
kn「身体が元気になったら思い出作ろう」
kn「忘れるより早く作っていこう」
br『…さすがきんときだ』
作ったって、次々に忘れていってしまうかもしれない。
それでも、生きていてくれる限り俺は、諦めない。
たとえ生きていけなくなったとしても俺は、諦めない。
忘れてしまうなら、思い出せばいい。
思い出せないなら、覚え直せばいい。
覚えられないなら、作り続ければいい。
一秒たりとも、無駄にはしない。