テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
視点 🧣
最近、森の川が変だ。
前はもっと澄んでいたのに。
底の石が見えるくらい透明で、冷たくて、ただ静かに流れているだけの川だった。
でも今は。
水は濁ってるし、変な匂いもする。
土の匂いでも、腐った匂いでもない。
もっと嫌な、どこか重たい匂いだ。
最初に異変に気づき始めたのは三日前。
小さな白いものが、流れてきた。
枝かなと思って、棒でつついた。
でも違った。
――骨だ。
小動物の骨。
たぶん、リスとかその辺だろう。
その時は「まぁ森だしな」で終わらせた。
動物の死骸くらい、珍しくもない。
けど、今日は違う。
川岸にしゃがみ込んで、水の中を覗く。
白い。
白いものが、また流れてくる。
一本じゃない。
二本。
三本。
四本……
細い骨が、水の流れに乗って、静かに転がっていく。
俺はそのうちの一本を、枝で引き寄せた。
……軽い。
乾いてる。
まるで、ずっと昔から骨だったみたいだ。
「……さすがにヤバくない?」
誰に言ったわけでもないのに、声が出た。
その瞬間。
コツン。
また何かが、石に当たる音。
視線を川の上流へ向ける。
水の向こうから、また白いものが流れてくる。
今度は、少し大きい。
ゆっくり、ゆっくりと近づいてきて――
それが、頭蓋骨だと分かった。
空洞の目が、こっちを向いている気がした。
「……おいおい」
思わず苦笑する。
冗談だろ。
森の川に、骨が流れてくるなんて。
しかも、こんなに。
川の水面が、わずかに揺れる。
その奥。
まだ遠い上流から、白い影がいくつも流れてくるのが見えた。
骨が、川を下ってくる。
ひとつ、ふたつじゃない。
数えきれないほど。
俺は立ち上がって、川の流れをしばらく見つめた。
胸の奥が、妙にざわつく。
理由は分からない。
ただ、なんとなく思った。
これ、たぶん。
ろくなことにならない。
川の水面が、また揺れる。
流れてきた頭蓋骨が、岸にぶつかって止まった。
空洞の目が、夕方の光を反射する。
その奥で。
ほんの一瞬だけ。
――水が、逆流した気がした。
俺は眉をひそめる。
「……気のせい、だよな」
誰も答えない。
森は、いつも通り静かだった。
でも、川だけが。
どこかおかしかった。
「さすがにみんなに報告だな……」
何やらまた面倒事が増える予感だ。
__________________
川から離れて、森の小道を歩く。
さっきまでの静けさが、妙に耳に残る。
風もないのに、木の葉がざわついている気がした。
「……飲料水どうするか」
誰もいない森でそう呟いて、家の方へ向かう。
扉を開けると、いつも通りの空気が広がった。
台所からは鍋の音。レウさんが何か作っているらしい。
「お、らっだぁ。早かったね」
「川がさ、ちょっと変で――」
そこまで言った時。
部屋の奥にいたみどりが、ぴたりと動きを止めた。
手に持っていた本が、ゆっくりと閉じられる。
「……みどり?」
呼びかけても、返事はない。
代わりに、みどりの肩がわずかに震えた。
「……ラッダァ」
小さな声。
「ナニ拾ッテキタノ?」
部屋の空気が、一瞬で冷えた気がした。
「は?」
途端、胸の奥の何かがよどめいた。。
「……何も拾ってきてないよ?」
俺の手にはさっきの骨も、森の木の葉もない。
でも、みどりはこっちを見ていない。
窓の外――森の奥を、じっと睨んでいた。
「……」
その目線は何処か不安気なものだった。
まるで何かに怯えているような…
「……レウさん、お菓子持ってきて?」
「わ、わかった」
みどりと二者面談が必要だな。
ーーチャプター2、開始。
コメント
2件
コメント失礼します!! どっち視点も見ました!とっても大好きな物語で続きが楽しいみです 😭😭🫶🏻 これからも見ます!!頑張ってくださいっ!
#wrwrd