広島との激闘のあと。鳥取は砂の上で仰向けになり、空を見上げていた。
「……俺、やっぱまだまだだな。」
広島に圧倒され、大阪にも敵わず、兵庫には全て見透かされた。そして何より、自分に何が足りないのかが、まだはっきりと分かっていない。
「もっと強くなるには……俺自身を、変えないといけない……」
その言葉を繰り返すように、鳥取は立ち上がる。彼の背後に、ふと気配が現れる。
「おいおい、そんな顔すんなって」
――愛知だった。
名古屋を中心に、独自のスタイルを持つ愛知は、いつの間にか近くで戦いを見ていた。
「努力はしてるみたいだけどな。お前、まだ自分の武器を分かってねぇだろ?」
「……武器?」
「そう。兵庫も大阪も、広島も“自分の戦い方”を持ってる。お前は……“全部吸収しよう”として、器用貧乏になってる。」
図星だった。鳥取は兵庫の正確さ、大阪の豪快さ、広島のスピード……全部を真似ようとして、結局“自分”を見失っていた。
「じゃあ……俺は、どうすれば……?」
愛知はニヤリと笑って、指で鳥取の胸をトンと突く。
「自分の地元を、ちゃんと見つめ直せ。お前には“鳥取”っていう、誰にも真似できない土台があるはずだ。」
「鳥取……」
砂丘、梨、神話、山陰の静けさ――鳥取には、他のどこにもないものがある。
「よし、じゃあ今からちょっと付き合え。愛知流の“変化の極意”、見せてやるよ。」
「えっ……いまから!?」
「文句あんのか? ほら、行くぞ! 名古屋の喧騒と、静かな内面を両立させた俺の“二面性”、見せてやる!」
愛知が歩き出す。鳥取も慌ててその後を追った。
「やれやれ……またとんでもないのに巻き込まれたな……」
でも、不思議とワクワクしていた。兵庫、大阪、広島、そして今は愛知。みんなが鳥取に“何か”をくれている。
それをどう形にするかは、自分次第。
――そしてこの時、鳥取は気づき始めていた。
“変わる”ということは、誰かになるんじゃない。
“自分自身を、より深く掘り下げること”なんだと――
〈続く〉
コメント
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初コメ失礼します( . .)" 最高です👍私見たいなバトル狂には堪りませんぜ、、