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Ⅺ
『うっ……ぐぅ……っ』
僕はゆっくり目を開ける。
開けているはずなのにまだ暗い。
ここは?
頭が痛くて、重い。
立ちあがろうとした。
でも、腕が思うように動かせない。
足も、動かしにくい。
何か、ある。
手錠のようなもので両足を縛られていた
多分、腕にも同じものが…
背中側で縛られているようだ。
『やぁ、やっとお目覚めかァ?』
僕は声のした方へ振り向く。
そこに、鉄格子と、
その奥に、
『お前…っ!』
あの時の男が立っていた。
男が、鉄格子の扉に鍵を刺して、開ける。
男が入ってくる。
『何をする気だ!』
男は怪しく笑う。
『ヘッヘッヘッ!そんなの決まってるじゃないか!』
!
男の手に、また注射器が、
『私の、この傑作をお前の身体にィ!』
男が歩み寄る。
僕は、なんとか立ち上がり、
男にタックルしようとした。
でも、
『ハァイ‼︎』
男が、僕の頬を殴ってきた。
僕は倒れた。
『その状態で勝てると思ったかァ?残念だったなァ!』
男が、僕の頭に足を乗せる。
そのまま、ぐりぐりと体重をかけてくる。
『ぐぅっ!』
痛い、
『辛いだろ?怖いだろ?死にたくないか?』
辛いけど、
怖いけど、
『死にたくはない!』
琥珀さんが教えてくれたんだ。
生きる意味を。
男は足を戻した。
『そうかそうか。なら、先にあの女からにするかァ。』
男が見た先に…
『琥珀さん!』
琥珀さんはまだ、倒れていた。
僕はなんとか先回りして、
『琥珀さんに手を出すな。』
琥珀さんの前に立つ。
『ヘッヘッヘッ!さすがは人狼!大切な奴のためなら、命をかけてでも守ろうとするなんて!』
男は怪しく笑いながら言う。
『素晴らしい!なんて面白い生き物なんだ!だけど…なんだァ、その目つきはァ?気に入らないなァ?』
男が、僕の頬をまた殴る。
『あぁっ!』
僕はまた倒れる。
『まぁいい。お前が死にたくなるまで、コレはお預けだァ。』
男は、鉄格子から出る。
身体が重い。
何か、されたのかな。
もちろん、銃は盗られていた。
今のままじゃ、勝ち目はない。
『こは…く……』
僕は、這いつくばるように琥珀さんに近づく。
身体を動かしながら近づいた。
琥珀さんはまだ、目覚めない。
でも、
死なせない、絶対に。
あたりを見る。
1面は鉄格子で、他は、
冷たい、コンクリートだ。
出られそうな場所はもちろんない。
あるのは、端にある段ボールのようなものだけ。
とてもあれだけで脱出はできないだろう。
化学薬品のようなツーンとした匂いがする。
実験施設だろうか。
新田先生が言っていたことを思い出す。
人狼を閉じ込め、実験体にした。
そんな実験施設が、この島にあったと。
!
また、あの男が戻ってきた。
『ヘッヘッヘッ!お腹すいただろォ?ほら、食えェ!』
雑に置かれたなんなのかもわからない食べ物。
2つ、
1つは琥珀さんの分だろう。
『あれェ〜?まだ寝てるのかァ?ねぼすけさんだこと!』
僕は反応が遅れてしまった。
男が、琥珀さんの身体を足で揺らし、蹴る。
『やめろ‼︎』
僕は止めようとした、
でも、
『勝てるわけねぇって言っただろォ?』
僕も、腹を蹴られた。
僕は倒れた。
けど、
男が髪を引っ張り、持ち上げる。
『今の状況、わかってるかァ?無駄なんだよォ!』
そして、
僕の頭を掴み、
壁に押し付ける。
『うぐっ!』
『お前らはァ、ただのォ、実験体ィ、抵抗ゥ、してもォ、無駄ァ!』
頭を何度も、壁に押し付けてくる。
絶望。
それだけが、強くなっていく。
男が手を離すと、僕は倒れた。
床が赤く染まっていく。
僕は、目を閉じた。