「ねぇ、セラ夫。心中しませんか?」
重くならないよう自然に言ってみる。
が、彼は少し戸惑った表情になる。
まぁ。それも無理はないか。
だってそんな雰囲気になるような話なんて一切していないしそもそも私なんかと心中なんてしたくないに決まっている。
『え、急にどしたの?凪ちゃん。』
その反応に少し怖くなったが言ってしまったものは仕方ない。
なんとか笑顔を作り言葉を絞り出す
「いや、ね?私、考えたんですよ。」
「死ぬときは一緒!って言ったってそんな同時に死ねるわけないんですよ!」
どこで行ったかもわからないお決まりのセリフを無理やり引っ張り出す
「そこで私、気が付いたんですよ!心中すれば解決だってことに!」
なんとか笑顔を作ってみるものの表情が引きつってしまう。
『凪ちゃん』
ふいに名前を呼ばれドキッとする。
少し早口になりすぎたか?
『寝てないでしょ?』
焦る私とは裏腹に予想外の言葉が返ってくる。
「え、?いや、寝てます、けど?」
予想外な言葉にも関わらず咄嗟に嘘をついてしまう。
やはり癖はすぐには抜けないみたいだ。
そんな私をよそに彼は続ける
『心中だか新宿だかどっちでもいいけど。とりあえず寝な~?』
いつものように冗談で返され少し向きになってしまう。
「な!?あなたちょっと適当すぎません?ちゃんと話は聞きなさいよ!」
あなたにはとってはどうでもいいことだとしても私にとっては本気だ。
『うるさっ!ちょっと凪ち。耳元で叫ばないで、』
「はいはい。すみませんね!どーせ私はめんどくさい男ですよ!」
頭が回っていないせいもありついついそんな言葉が口を出る。
ほんと、なんでこんなにめんどくさいんだろう、
『はいはい、そーですね。』
心做しか先ほどよりも適当な返事が返ってきて少し泣きそうになる。
そんな私を彼は特に気にすることもなくソファの方へと追いやる。
体は正直だ。ソファに寝転ぶとすぐに猛烈な睡魔に襲われた。
それでも彼になにか言ってやりたくて、口を開く
が、それはセラ夫の声に遮られた。
『起きたら心中でもなんでもしてあげるから。とりあえず寝な。』
そういったあと頭を撫でられる。
酷く優しい声、表情、手つきに安心してしまう。
「約束ですからね」
そう呟いたあと私の意識はゆっくりと暗闇へと吸い込まれた。
薄れていく意識の中で
『死んでも一緒だよ』
なんて言葉が聞こえた気がした。
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