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君の声を、もう一度。
僕は、夜が好き。
朝は、大っ嫌い。
明日なんて、来なければいいのに。
僕は、男子高校生として生きている。
学校は楽しくない。
いわゆる、「ぼっち」だからだ。
別に虐められているとか、
そんなんじゃなくて。
この息をしずらい世界から、
一刻も早く抜け出したかった。
そうすれば、楽になれると思うから。
日曜日の夜。
僕は大好きな夜空を見上げて、
好きな音楽を聴いていた。
ーーーーー
「綺麗な星だなぁ…。」
そう、呟いた。
「…あの。」
突然、話しかけられた。
「…どなたですか?」
警戒している事がバレたのだろう。
君は慌てていた。
「あ、怪しい物じゃなくって…!
…大丈夫、ですか、?」
…なんで急に心配してきたのだろう。
服に何か付いているのか?
それとも…駄目だ、分からない。
「…どうしてですか?」
「寂しそうに、見えたので。」
…寂しそう。
凄いな、と思った。
僕は寂しかった。
けど、誰も気付きはしなかった。
見て見ぬふりをしているのかもしれない。
僕は、嬉しかったんだ。
僕の気持ちを、君に見つけて貰えたこと。
「そっか。大丈夫ですよ。」
「本当ですか?」
「…はい。」
お願いだから、置いていかないで。
お願いだから、独りにしないで。
こんな感情は、初めてだった。
「…少し、お話、しましょうか。」
僕は心から嬉しかった。
「そうですね。」
冷静さを取り繕うのに必死だった。
心臓が何故か、すごくうるさい。
君に聞こえているのではないか、
と不安になるくらいに。
…しばらく、ずっと、君と話した。
今までで1番幸せなときだった。
僕は君と離れたくなかった。
誰かと、一緒に居たかった。
心を埋めてくれる存在が、欲しかった。
きっとそれは、君じゃなきゃだめなんだ。
だから僕は、言った。
「連絡先、交換とか、どうかな。」
ああ、なんてことを言ったのだろう。
初対面の女の子に、連絡先なんて。
ただの不審者じゃないか。
「あ、嫌だったら、全然…」
何も言わない君を見ると、
君は月に照らされて、笑っていた。
「…お願いします!」
君はそう言ってくれた。
僕は嬉しかった。
こんなに幸せなものは、もうないと思う。
ーーそれから、僕と君は常に繋がっていた。
大嫌いな学校も、
大嫌いな朝も、
まだ大嫌いなままだけれど。
「君」と言う存在が出来て。
僕は頑張れた。
だけど、世界は残酷で。
「私ね、心臓の病気なんだ。」
ある日、突然。
君にそう、知らされた。
「…え。」
言葉を発することが出来なかった。
なんて言えば良いのだろう。
僕には、分からなかった。
「…死んじゃうの?」
気づけば、そう、聞いていた。
そんな答え、決まっているはずなのに。
聞きたくないはずなのに。
…ああ。どうして聞いてしまったのだろう。
知らない方が良かった。
「うん。」
そんな答え、求めていないのに。
ーー君の余命は、あと30日だった。
君が死んでしまえば、僕は独りになる。
また、あの頃みたいに、
寂しくて、苦しくなるだろう。
そんなの、嫌だ。
今度こそ、本当に耐えられそうにない。
…そうだ。
「君が死ぬとき、僕も死ぬよ。」
僕は、自然とそう言っていた。
無意識のうちに。
目からは、涙が溢れていた。
「…そっか。」
君は、そう言うだけだった。
自分でもよく分からない。
引き止めて欲しかったのか。
賛成して欲しかったのか。
けど、きっと僕は、
…引き止めて欲しかったのだと思う。
それから僕と君は、話さなくなった。
ーーあれから、25日がたった。
僕は君とは相変わらず話していなかった。
自分はこの世には必要のない人間だから。
早く、死んでしまいたかった。
誰にも必要とされないくらいなら。
呼吸をするのも億劫で。
息をとめた。
その瞬間、電話がかかった。
「…誰だろう。 」
君からの電話だった。
出ようか迷った。
けど、君は心臓の病気だったと。
今、思い出した。
…僕は馬鹿だ。
すごく馬鹿だ。
今まで何をしていた?
どうして君を独りにさせていた?
君の余命は。
あと、5日だったのにーーー。
「…もしもし。」
「あ…ありがとう。」
「大丈夫?」
「…なんとか。」
「…良かった。」
「お願いが、あるんだ。」
「…何?」
なんだろう。
「…生きて。 」
その瞬間、さっきまで聴こえていた
君の吐息が。
聞こえなくなった。
なんで?
あと、5日…あるじゃ、ないか…。
向こうが騒がしくなった。
信じたくない。
僕は怖くなった。
早く目を背けたくて。
最後だった。
電話を、切った。
ーーーーー
目が覚めると、月曜日の朝だった。
何故かは分からない。
けど、
生きなければ。
強く、そう思った。