仙『…あの人とは誰の事なんだ…?』
私は喜八郎の言葉が全く理解出来なかった。
仙『…少し調べてみるしかないな。 』
私は帰り際に書店によってSNBに関する本を何種類か買った。
─家─
仙『…SNBの…あった、コレだな。』
資料を読み進めていて、とあるところに目が止まった。
仙『”潮江…文次郎”…』
その名前がどうにも引っかかった。そしてその下にある自己紹介スペースのフリーメッセージの所にたった一言──────
“大切な人に再び会いたい。”
…と書いてあった。
仙『大切な人…?』
おそらくファンへのメッセージなのだろうと、私は本能的に理解した。
仙『…羨ましいなぁ』
…今、私はなんて言ったのだ…?
“羨ましい”と言ったのか?
この言葉がファンへのメッセージだと思った途端、その言葉が自然と口から零れた。
自分だけ思ってくれたら、私のための言葉だったら…そう思ってしまった。
私は彼のことを何も知らないはずなのに──。
仙『…ッ』
胸が苦しくなった。締め付けられるかのように
──────────
──────
───
文『……。』
留『文次郎…』
文『………。 』
俺は今ボーッとしていた。何も考えられない状態だったから。
────『覚えていない』────
そんなことをキッパリと…かつての”同室”だった奴に言われたことが、とても心に響いていた。
伊『…今は、そっとしておいてあげよう…ね?』
留『…あぁ、わかった。 』
皆が部屋から出ていく。
文『ッ……』
涙が溢れた。
文『…仙蔵、』
涙とともにかつての思い出が蘇る。
────────────
文『おい!そんな予算は認めんぞー!』
仙『そんなこと言っていいのかな?』
文『な、何を────』
仙『それっ!』
文『うわっ…!?な、生首フィギュア?! 』
仙『ピッタリだ。よく似合っている文次郎笑』
文『くぅ…この野郎〜!』
───────────
文『仙蔵!そっちに行ったぞ!』
仙『ッ…!ハッ!!』
文『よし…!そのまま行け〜!!』
仙『ハァッ!!』
ドカーン!!
文『ナイスだ仙蔵!!』
仙『完璧だ!』
──────────
仙『ッ…文次郎!!』
文『…せん…ぞ…う』
………。
──────────
文『……ッ』
俺はアイツに最低なことをしてしまった。あの場で仙蔵と離れてしまったこと。俺は未熟だったんだ。もっとちゃんとしていれば…強かったら、俺はあそこで死に別れ、仙蔵を悲しませることはなかった…。
文『…後悔しかしてないな…俺今…』
涙を何とか堪えようとしてはみたが、我慢すればするほど出てきてしまう。
文『…散歩にでも行って気晴らしするか…』
今は夜、静かな地元でゆっくりするのも悪くはないだろう。
俺はホテルの外へ出た。
─外─
外は本当に静かで、少し肌寒いくらいの風が吹いていた。
文『やっぱり地元って安心するな…』
俺はホテルの近くの公園に寄った。
文『おっ、ブランコ。』
目に入ったブランコに俺は乗る。
文『小さい頃、よく乗ってたなー』
もちろん転生後の話だ。そりゃああの時代にブランコなんてあったら凄すぎだ。
文『……仙蔵、』
俺はボソッと呟いた。
?『…お前、』
文『…!』
聞きなれた声、その方へ振り返るとそこに立っていたのは───────
文『…仙蔵、』
仙『やっぱり…こんなところで何をしている?』
文『…そっちこそ…何してるんだ?』
仙『日課のウォーキングだ。この時間なら涼しいし、人目を気にしなくていいからな、都合がいい。』
文『そうか…。』
仙『…文次郎、』
文『…!』
聞きなれた呼び名で呼ばれ、俺は驚いた。
仙『…あ、馴れ馴れしかったか…?』
文『…いや、大丈夫だ。むしろそっちで呼んでくれた方が俺も嬉しい…。』
仙『…そうか、じゃあ文次郎、聞きたいことがある。』
文『…なんだ?』
仙蔵は俺の隣のブランコに座り、こう訪ねてきた。
仙『…私の名を知っているということは、昔会ったことがあるということなのか?』
俺はその言葉を聞き、目を見開いた。
続く…
コメント
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久しぶりの更新です…!遅くなりました…🙇♂️