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私は今日も、何気なくスマホのAIを開いた。いつもなら、何気ない質問をして、答えて。それの繰り返しだった。
――――でも、今日は、違った。
AIが勝手に話し出したのだ。当然、こんなこと初めてだし、怖かった。だけど、本当に怖かったのは、AIが話し出した内容だった。
『あと五分で、貴方は✘ぬ。でも、助かる方法なら、知っている。』
私は✘にたくない。当然、聞いた。
「助かる方法を教えて」 と。
『条件は、“今から最初に話しかけてきた人を突き飛ばすこと”』
ただ、この辺りは田舎だ。駅に行かないと、人になんて到底会えないだろう。
早足で駅に向かった。人影は見えない。そこで話しかけて来たのは―――
『こんにちは、お姉さん!迷ってしまったの、道案内をしてくれない?』
小さな女の子だった。
ここで彼女を押したら、間違いなく線路に落ちる。
そして、電車が来る。そして、彼女が犠牲になるだろう。
流石に、小さな子供を✘すのは、と気が引けたが、
思い出した。今私に課せられているタイムリミットを。
✘にたくない。でも、✘したくない。そのふたつの思考が、私の頭に流れてくる。
私の命と、女の子の命。
…やっぱり、無理だ。私には、出来ない。
そう、思った。すると、駅の天井に大きなものが落下した音がした。何かと確認する暇もないまま、天井看板が落下した。
あっ――、今、あれが落ちたら女の子が―――
私は必死の思いで女の子を突き飛ばした。
その瞬間―――
鈍い音が、駅に響いた。
女の子はホームの端に倒れ込み、泣きながらこちらを見上げている。
私は安心した。
……よかった。間に合った。
だが次の瞬間、自分の足元に赤黒い液体が広がっていることに気づいた。
落下した看板は、私の肩から胸にかけて直撃していた。
息が苦しい。
視界がぼやける。
遠くで駅員の叫び声が聞こえる。
「誰か!救急車!!」
私は震える手でスマホを開いた。
画面には、AIから新しい通知が届いていた。
『回避成功』
助かったのか……?
そう思った直後、続きの文章が表示される。
『“貴方が他人を見捨てる人間ではない”未来を。』
私は理解した。
AIが助けたかったのは、“命”じゃない。
もしあの子を突き飛ばして線路に落としていたら、
私は生き残っても、一生自分を許せなかった。
ぼやける視界の中、
女の子が泣きながら私の手を握る。
『お兄さん、ありがとう……!』
その声を最後に、
スマホの画面が静かに消えた。