テラーノベル
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「ねぇ、いるま」
帰り道。
夕焼けに染まった住宅街を二人で歩いていた時だった。
「ん?」
「もしさ」
なつは前を向いたまま言う。
「俺に恋人できたらどうする?」
その言葉に、いるまの足が止まりそうになる。
けれど何とか平静を装った。
「どうもしねぇよ」
「ほんとに?」
「友達なんだから祝うだろ」
嘘だった。
自分でもわかるくらい下手な嘘。
なつは「ふーん」とだけ返した。
それ以上何も聞いてこない。
なのに胸の奥がざわついた。
その話題を出した理由は何だ。
誰かいるのか。
好きなやつでもできたのか。
考えたくもない想像ばかり浮かぶ。
◇◇◇
その日から数日。
いるまはずっと機嫌が悪かった。
自覚があるくらいに。
「いるま最近変じゃない?」
友人にそう言われても否定できなかった。
なつと話していても調子が狂う。
笑顔を見るたびに安心して。
他のやつと話しているのを見るたびに面白くなくなる。
そんな自分が嫌だった。
でも。
もう誤魔化せなかった。
◇◇◇
放課後。
教室には二人だけだった。
窓の外は夕焼け。
静かな空間。
なつが荷物をまとめながら言う。
「帰ろっか」
その時だった。
「なつ」
気付けば呼び止めていた。
なつが振り返る。
「どうしたの?」
いつも通りの顔。
いつも通りの声。
それなのに。
今日で終わる気がした。
この関係が。
友達という距離が。
「この前の話」
声が掠れる。
「恋人できたらってやつ」
なつの表情が少しだけ固くなった。
「うん」
「やっぱ無理だ」
言った瞬間、自分でも笑いそうになった。
何が無理なんだ。
何を今さら。
何年一緒にいたと思っている。
「祝えない」
なつが目を見開く。
いるまは視線を逸らせなかった。
逸らしたら最後な気がした。
「他のやつの隣にいるの想像しただけで嫌だった」
教室が静かになる。
心臓の音だけがうるさい。
止まらない。
「友達だからって思ってた」
ずっと。
ずっとそうしてきた。
このままでいいと思おうとしてきた。
でも無理だった。
一緒にいる時間が増えるほど。
笑いかけられるたび。
名前を呼ばれるたび。
好きになっていく。
「けど」
いるまは小さく息を吐いた。
そして。
ずっと胸の奥に閉じ込めていた言葉を口にする。
「もう、友達のままじゃ無理だ」
沈黙。
数秒。
いや、もっと長かったかもしれない。
なつは何も言わない。
いるまはただ返事を待った。
怖かった。
断られるかもしれない。
今までの関係が壊れるかもしれない。
それでも。
言わなきゃいけなかった。
すると。
なつが小さく笑った。
泣きそうな顔で。
「それ」
震える声。
「ずるい」
「は?」
「俺が先に言おうと思ってたのに」
いるまの思考が止まる。
なつは目元を擦りながら笑った。
「俺も無理だった」
夕焼けが差し込む教室。
二人の間にあったはずの距離が、少しだけ縮まる。
長かった片想いが終わる音がした。
そして同時に。
新しい関係が始まる音もした。
#📢🍍
いちご@低浮上中。。。
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いちご@低浮上中。。。
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コメント
3件
何て言うんだろ、両片思いだったみたいなの、いいよね…
うわ、この第9話…最高だった…。 いるまが「祝えない」って言った瞬間、こっちまで息止まったわ。ずっと友達のフリして誤魔化してた気持ちが、夕焼けの教室で溢れ出した感じ、すごく伝わった。 「俺が先に言おうと思ってた」ってなつのセリフで涙出そうになったよ。両片想い、長かった分だけ報われた気がする。続きが気になりすぎる!