瑠美が物語を書く上で、真っ先に課題となったのは言葉遣いである。というのも、気づいたのにはちょっとしたキッカケがあった。
「まじルルミンの話し方変なんだが?」
ユーミンが登校中、ふと呟く。
「なに?」
「嫌さーなんかー。ウチが風邪で休んだ辺りからおかしくね?」
それもそのはず。同じ日本人とは言え、何百年も時が経てば言葉遣いも変わるものである。瑠美の前世(女作家)は、貴族出身であり、女官(身の回りの世話係のようなもの)をしていたため、相手に対して敬意を払えば丁寧に。払わなければ命令するように話す癖が抜けていないのだ。なお、最初の頃は丁寧に話していたカタハッシーにも、今は命令するように話す。
「うむむ…。物語を書く上で必要なのは、まず言葉遣いというわけか…。」
「つーか何でいきなり話し方変わったわけ?」
「気にするでない。ただの私の気分だと思えばよい。」
「ふーん。あ、もしや厨二病?」
クスクスと笑いながら尋ねると、瑠美はキョトンとした表情で逆に尋ねた。
「チュウニビョウ?」
「え、ま!?分からない感じ?こりゃ重症だわ。」
驚きつつも、ユーミンは冷静に考えた。自分は語彙に自信がないし、かと言ってネットの有耶無耶な情報を当てにするわけにもいかない。どーしたもんやら。
すると、学校に入ったタイミングで誰かが話しかけてきた。
「語彙が…なんと?」
「うわ!?なんだ山ちゃんかー。」
「なんだじゃないです。山ちゃんでもないです。」
山ちゃんこと山田優は、クラスの端っこでいつも辞書を読んでいるような変人である。
「で?語彙がどうかしました?」
「ちょうどいいや!山ちゃんさールルミンに言葉教えたってよ。」
「は!?」
「確かに。適任ではあるな。」
「ちょっと待ってください!読むのは好きですが、人に教えるのは…。」
それを聞いたユーミンは、ノートと筆箱を取り出し『防人』と書いて山ちゃんに見せた。
「なんて読む?」
「さきもり」
間髪入れず答える。
「説明は?」
「できます。」
「じゃあ合格!山ちゃん、ルルミンの先生けって〜」
「なんて適当な…。」
「まあ良いではないか。」
「えぇ…」
結局、瑠美の気迫に押され、山ちゃんは渋々首を縦に振った。瑠美は強引であった。
コメント
1件