コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
山ちゃんという語彙の先生は優秀であった。放課後の時間を使い、30分程度の授業をしてくれる。その時間のうちに、瑠美が意味を知らない単語や、日常時によく使う言葉遣いを教える。一緒に聞いていたユーミンでさえ、国語の成績が上がるほどだ。
「では、今日はここまでにしましょう。」
「マジ山ちゃん頭良すぎなー。ルルミンめっちゃ日本語上手くなってんじゃん。」
「一応日本語は話していたんだが。まあ、ある程度マシだな。」
「語彙はまだしも、話し方はそのままですね?」
「親しい奴にはこのまま話している。」
「ルルミンとーとつに告白ぅー?だいちゅき♡」
放課後の授業の後、3人で話すこの時間が瑠美は楽しみになっていた。しかし、いつからか冷たい視線を感じるようになっていた。それに関しては、勘が鈍いユーミンも気づいた。
「やっぱ居るよね?」
「居るな。視線がバレバレだ。」
「えぇ僕なにかしましたか?」
「心当たりある感じ?」
「あるわけ無いですよ…。」
そこで、瑠美は廊下にいたソイツらを問い詰めた。
「何様だ?用でもあるのか?」
「ヒッ!」
そこには、同学年と思われる女子が1名に男子1名。どちらも瑠美が廊下に出てきた瞬間に逃げようし、すぐに瑠美に捕まった。
「でー?お隣のクラスの2人が何の用?」
捕まえた2人は、隣のクラスの生徒だったことが分かった。その後も、瑠美とユーミンの質問攻めは続く。どうして覗いていたのか?何が目的なのか?いつから覗いていたのか?そういう趣味なのか?
永遠と続く質問攻めを断ち切るようにして、覗き魔の1人が答えた。
「よ、妖怪だと…。」
「なんて?」
「よ、妖怪に取り憑かれたんだと思って…。」
「…は?」
なんでも、その2人はオカルト研究同好会に所属する部員だそうで、いきなり口調の変わった瑠美と、身近な所にいたユーミン・山ちゃんを妖怪に取り憑かれたと勘違いしたのだと言う。妖怪の尻尾を掴むべく、放課後の授業が始まった3日後あたりから覗き始めていたらしい。
「いくら何でもやり過ぎじゃ。それにシンプルに失礼じゃぞ。」
「そう!その喋り方!」
次の瞬間、2人は同時に語り出した。妖怪は昔ながらの話し方をする個体が多いが、それが完璧に瑠美と一致している!さらに、瑠美がよくする袖で口元を隠す仕草や紙を巻物のように束ねる仕草など、まさに昔を生きる妖怪である事を暗示するようなもの!はたまた現代の言葉遣いを他人に教わるなど、若者がする様な行為ではない!さらには…。
止まる気配がない2人を置いて、3人はそそくさと帰ってしまった。
「置いていって良かったんでしょうか?」
「いんじゃね?面倒だったしさー。」
「失礼な野郎どもと絡むのは御免だ。」
「お!今の言い回し、いい感じに現代風だよ。妖怪ミン!」
「やめぬとその口、裂いてしまうぞ。」
「口裂け女は勘弁して、リップが足りなくなる…。」
「そこですか!?」
今日も今日とて、瑠美は笑いながら3人並んで帰る。妖怪呼ばわりされたことも忘れて。
瑠美は忘れっぽかった。