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今にも自身の喉元に掴みかかりそうな後輩エトワールをあしらって、職員スカイは抱えていた武器と衣装を手渡した。
「なんなんすかコレ」
エトワールの問い掛けにやっと手が空いたスカイは答える。
「君たちが先程戦った化け物の仲間から取り出したモノ。そう言えばいいかな。」
そう聞いた途端にエトワールはひっ、と声を出し薄暗く感じる廊下にマスケットのような銃とコートのような青いそれが音を立てて落ちる。また、それを聞いたダルはまじまじとそれを見つめた。見ようによっては気味が悪い笑みをくすりと浮かべ、スカイは怖がらなくていいんだよ、と述べる。その態度にまたプッツンしたエトワールが返す。
「化け物のなんかよくわからん変なモンを人に付けさせるとか正気ですか!?てか第一あんたが信用できません!変な球体浮かべやがって!!」
これはね、と周りに浮かぶ球体の説明を返そうとするスカイの肩を赤い目をした長髪の青年が手を添えるように掴み、今回の後輩はずいぶんとやんちゃなものです、と話しかけて来る。
「その声はシエルじゃないか。中層の職員がなぜ上層に?」
それほど驚いてないスカイがシエルという青年に問いかける。
「お暇が少しばかり出来たのですよ、スカイ。それと新しく来る後輩のお迎えです。」
ふぅん、とスカイは返し、シエルを横目に後輩二人に紹介する。
「この人はね、私のきょうだい。シエルと言うんだ。中層…すなわちここより深い地下に存在する部門であの化け物達を収容室へ帰す仕事をしている職員。あと私の周りに浮いているこれは君たちが持っていた警棒とかの役割を果たす物なんだ。」
突然の情報量にエトワールとダルの2人は驚きつつも、スカイよりかは胡散臭くない、だが決して深く関わってはいけない予感がする先輩のシエルを見つめた。シエルはくすりと笑ってから、こんにちはと返す。続いて2人も同様にこんにちはと返す。──今外が昼なのか夜なのかは彼らは知らないが。
「スカイがわたくしの事を言ってしまいましたし〜…そうだ、お二人のことを教えては頂けませんか?これから共にここで働くんですし。」
自己紹介をしろ、ということが伝わった2人の青年はお互いを見合わせてから、甲冑のような衣装と刀を持ったダルが先に声を上げる。
「…ロボトミー社で働くことになったダル、と申します。これから宜しくお願いします」
肩あたりで切り揃えた髪が垂れ下がるのとそこまで高くない身長が腰を折り曲げるのを見ると、シエルはにこりと笑い、こちらこそと返す。
「では次は威勢のいい方、お願いしても?」
「あー…エトワールって言いま──うわ 服グロいし趣味悪ッ」
シエルの赤黒く、所々に目玉や人間の一部が組み込まれた姿を今更よく見て、眉間に皺を寄せ引きながらエトワールは無礼講に言い放つ。
「そうでしょうか?死体を食うものと比べればマシと思いますが──」
顎に手を添え考えるシエルを無視して、スカイは床に放り出されたままのエトワールの装備を拾い上げ、また手渡そうとする。
「キモイの渡さないでくださいよ」
「キモくないよかっこいいよ」
キモイキモくない論争を繰り広げる同僚と先輩、身に付けているものが悪趣味かどうかを悩んでいる先輩をあわあわしながら眺めるダルの心境はどんなものだっただろうか。
その後、結局装備とやらを渡されたエトワールはメインルームという場所でスカイに問い掛ける。
「これって何の意味があるんですか?スーツでも別に良くないですか?」
そう聞いた途端に真顔になり、低いトーンでスカイはよくないよ、と返すのを見て、エトワールの背筋に鳥肌が立ち、冷や汗が伝う。
「…管理人にここの説明は受けているよね?」
「いや、先輩らが説明するからって…管理人?って人から特に大した説明は受けてません」
スカイが溜め息を吐き、あのクソ野郎が、と静かに呟く。 あの、とエトワールが口を開く。
「どうしたのかな?」
陰険な雰囲気を纏っていた先程のスカイが嘘や夢というように微笑み、エトワールに問い掛ける。
「…管理人って人から、昔なんかされたのかなぁって。」
困った質問だね、とスカイは返す。そして1度決心したように深呼吸をし、「実は…」と口を開く前に別の誰かがスカイさーん!と呼ぶ声が耳に響くと、急用が入ったみたいとスカイは笑い、背を向ける。── 「死にたくないならそれを今からでも着た方がいい」と一言を添えて。