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小野麗尾 守(おのれお まもる)は平均未満な高校1年生である。
顔面偏差値落第点・頭脳偏差値平均点・小太り・コミュ障気味・趣味サブカル各種と
運が悪ければイジメに遭いそうな男であり、実際中学時代は一時期イジリと称したイジメに遭っていた。
その結果、人格障害に至らなかったものの人間不信気味な気質を持ち、それがコミュ障を引き起こしてしまっていたのだが、
そんな彼でも孤独を愛する訳でもなく、高校生になってからも小学生からの同趣味の同級生二人と何とか交友関係を持っていたし、
ゲームやアニメで題材となるリア充的青春に憧れが無いわけではなかった。
大多数の人間に認められなくても良い、むしろどうでもいい。
ただ少人数の俺の味方が欲しい。
具体的にいうと彼女が欲しい。
叶うなら将来お嫁さんになってくれるような彼女が欲しい……!
そんな彼の願いは、当然のことながら待っていれば誰かが叶えてくれる物ではない。
彼は願いを自ら叶えるべく、その第一歩として改めて己を省みた。
そう、顔面偏差値落第点・頭脳偏差値平均点・小太り・コミュ障気味・趣味サブカル各種という自分を。
どうしようもないんじゃないかな、という結論に達して、心の中で泣きながらも、それを一旦は認めてしまったが、
それでも諦めたくなかった彼は改善点を列挙してみた。
顔 → 整形しろ
頭脳 → 勉強しろ
小太り → 運動して痩せろ
コミュ障 → 精神科の検索から始めよう
趣味 → 捨てられない
整形については常々考えていたので小遣い・お年玉・バイト代を遣り繰りしながら貯めてきているが、顔面全改造に必要と言われた五百万にはとても足りない。
勉強は嫌々ながら継続しているが、どうにも頭に入りづらい。
運動はこれからも努力しよう。デブと呼ばれるほどに太らなかったのは週一とか週二とか不定期ながらもジョギングを続けたおかげだ。
ただ、これ以上の運動はモチベーションが上がらない…… 食欲も制限できないし。
精神科のお世話になるのは、正直気が進まない。
病院に通う事になって誰かに知られたらと考えると、恐ろしくて仕方がない。
趣味は……うん、まあね。ほら……うん。
あ、そうか。こうして考えてみると、怠惰って欠点もあったんだなぁ……(虚
結論:現状の改善には時間・金のどちらかが必要、今のままでは高校生活中に改善できそうなのが小太りのみ。
仮に外見をどうにかできても、中身は早々変わらない……というか本当に変えられるのだろうか?
自分自身をどうこう出来ないなら、後、変えられるのは……そう、(社会的な)ステータスだ!
ステータス・オープン!(心の中で)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
小野麗尾 守
称号:
【中流家庭の高校一年生】
実績:
なし
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勢いと現実逃避のノリでやってみたが、当然冒険者でもない俺にそんな物が表示されるはずが無い。
そして己の心の中でイメージしたステータス画面でも、大した記述が無い(白目
心の中の自己分析ですらMOUSOUに逃げる事のできない現実がキツイ……
だが、この現実を何とかしなければ高校生の内に彼女が出来ない! 出来ないのだ……!(血涙
どうしようもない自分を上書きするステータス。
ダメ男でも、金持ちとか社長の後継ぎとか全国大会の選手とか「箔」があれば、恋愛対象とか見られるのではないだろうか。
いや、見られるに違いない。クラスメートで親が金持ちの井藤とかそんな感じに見えるし。
よし、まずは家に隠し財産が無いか調査だ!
30分後、父親の部屋の書棚を漁っていた所を見つかり、家庭内窃盗を疑われて頭にゲンコツを落とされるまでは、そんな事を思っていた時期が俺にもありました。
恥を忍んでダイレクトに聞いた所、隠し財産はありませんでしたが、自分用に大学に行けるだけの貯蓄はしていただけていたようです。
本当にありがとうございました。(平伏
隠し財産・隠された血筋とかご先祖様ブーストも否定された以上、後は社会的に手に入る地位とか何かしかないけど、そんな簡単に手に入るものはやはり無いだろうなぁ。
そんな事を考えつつ夕食を食べながらテレビを眺める春の日に、その番組は流れた。
「ビジターズ・エクスプロール」
「はじめてのおつかい」ならぬ、「はじめてのダンジョン探索」をテーマとしたテレビ番組だ。
世界ダンジョン連盟が企画した番組で、日本のみならず世界各国の報道局と連携して世界中の珍探索模様をお届けする内容が受けた長寿番組となり、今日はアメリカの青年の探索が報道されていた。
彼はサマナークラスで挑戦しているようで、狼か犬の様なモンスターとトーテムポールの形をしたモンスターが1体ずつ彼の護衛をしていた。
道中は何度か危険な場面があったものの、ボスを倒し無事に帰還した所でスタッフロール。
トーテムポールは凄い武器だった。いや、モンスターだけど。振って良し、叩いて良し、突いて良し。最後のボスとの戦闘場面では光り輝いたかと思うとあんな大技を繰り出すとは……
エンディングの場面で、スタッフが彼にどんな冒険者になりたいか聞いた所、アメリカンドリームのテンプレートのような将来像を語っていた。
スタッフは笑っていた。
番組の彼も笑っていた。
俺は、笑わなかった。
これだ。