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『逃げられたわね。』
ヒナタさんが言った。
もう、アイツの姿は見えない。
『アンタ、アイツのこと知ってるみたいだったけど、仲間じゃないでしょうね。』
『違います。レインという男とは、前にも会ったことがあって、人を殺すことが悪いことだとは思わないって言ってたんです。アイツのことは、初めて会った時から危険な人だと思っていました。』
アイツは刀を持っていた。
普通なら、あんなものを持っているはずがない。
『アイツは、情報屋と殺し屋をしていて、昨日はある人を殺すと言っていました。そして、少しして、近くで死体を見つけました。』
アイツは昨日、本当にやったんだろう。
『結構やばそうね。あの女もかなり戦い慣れているようだったし、まだ本気じゃなさそうだったわ。』
リンネとは初めて会ったけど、ヒナタさんでも倒せなかったということは、かなり強いんだろう。
でも、僕は…
何もできなかった。
レインは、僕の弱点を知っている。
だから、刀を使わないんだ。
完全に、舐められている。
『あ、また助けてくださりありがとうございました。』
僕は、頭を下げる。
そして、ナイフを返す。
『別に、構わないわ。でもここだと、助けてくれる人なんてほとんどいないから、気をつけて。そうね、それこそ五十嵐と蒼くらいしか、他人を守ろうとする人はいないだろうね。』
そうなんだろうか。
でも、
助けてくれた人もいたような…
『皆、他人に興味ないのよ。助けてくれる人がいても、それは利用しようとしてるだけだから、騙されないようにした方がいいわね。』
利用しようとしてるだけ、か。
言われてみれば、そうだったのかもしれない。
『それだけ、ここは厳しい環境なのよ。この島自体、日本から見放されてるわけだけど、ここは無法地帯だから、特に犯罪も多いのよ。』
この島が、日本から見放されてる、か。
『さて、弾丸を買いに行きましょ。あっちで売ってるから。』
『え?』
弾丸を、買いに?
『弾丸、もうないんでしょ?殺されるわよ。』
『は、はい…』
僕は、ヒナタさんについていく。
琥珀さんと茜さんを連れて。
しばらくして、
『ここよ。』
1つのお店に入る。
『え、』
そこに、
銃がたくさん並んでいた。
『あ、あぁ…』
ナイフや、剣まで…
『マイケル、弾丸を買いに来たわよ。』
『なんだ?ヒナタ、弾丸が欲しいのか?』
そして、
ガタイのいい、外国人らしき男が立っていた。
『アタシじゃないわ、アイツによ。』
『だ、弾丸を買いに来ました…』
マイケル?がこちらを見る。
『あぁ?初めてみる奴だな。で、何ミリのが欲しいんだ?』
何ミリ…
『えと、この銃に合ったものを…』
『おいアンタ、コレをどこで手に入れたんだ⁉︎』
マイケルは僕の銃を見て、驚いた。
『その…僕、記憶喪失でして…覚えてないんです…』
そんなに珍しいのだろうか。
『8万、いや10万出す!だからコレを売ってくれ‼︎』
『・・・』
じ、じ10万‼︎
そんなにすごいのか?
だけど、
まだ使えるし、
思い出すまで、売らない方が良いだろう。
『すみませんが、コレは売れません。』
この銃を、なぜ僕が持っているのかがわからない。
だから、それがわからない今、勝手なことはしない方がいいだろう。
『そうか…コレにに合うのは、コイツだな。』
マイケルが1つ、弾丸の入った箱を取り出した。
『一箱3000円だ。コレでも、安い方だからな。』
実際、どれくらいかかるのかなんてわからないけど、
2つくらい買おう。
6000円を出す。
と、
『1000円くらいなら出してあげるわ。』
ヒナタさんが1000円を出した。
『え?えと、僕のですよね?
『出してやるって言ってんのよ。利用価値がありそうだからね。』
『あ、あぁ…』
利用されるのか。
僕は5000円出してそれを購入する。
『アンタって、騙されやすいのね。』
え?
『普通ならこうなった時は、殺される。だから、気をつけろって言ったのよ。』
『・・・』
『死にたくなかったら敵だと思ったヤツに遠慮はいらないし、他人を信じない方がいいわ。』
それだけを言って、ヒナタさんは店を出た。
そうなんだろう。
自分でも、わかっている。
レインにも、似たようなことを言われたな。
でも、
そんなことを、したくない。
するべきじゃない。
そう思っている僕がいる。
どっちが正しいんだろう。
わからない。
僕も、店から出る。
帰るか。
ここにいるのが怖い。
怖くなってしまった。
五十嵐さんと蒼さんに声をかけようと思ってたけど、
やめよう。
僕は、歩く。
『甘ちゃん…』
琥珀さんと茜さんは、心配そうにこちらを見ていた。
無理やり笑顔をつくる。
そして、無法地帯を出る。