テラーノベル
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「世界都市さんは忙しい」
※世界都市擬人化創作
“ついてない1日”
今日はとことんついてない。
今朝はタイマーのかけ忘れ、電車は乗り遅れるし、信号にも全て引っかかった
更には昨日スマホを落とす始末…まぁ壊れてなかったし昨日の事だけど
会社に到着したのは11時半
仕事の出社時間は10時
遅刻の報告はなし。
さぁどう言い訳をしようか
遅刻は今回で4回目。さすがにまずい
きっと扉の向こうにはあのしっかり者で超真面目なベルリンが待ち構えているだろう
お説教を長々と聞くのもめんどくさい
かと言って、共同で仕事を任されているので無視もできない…
詰んだ。
神様は不平等だ…
仕事場に入ることも出来ず、扉に前からもたれかかっていると後ろからコツコツと音がした
誰かきた。別に見つかってもいいや
どうせ怒られるし…
足音が自分の数歩後ろで止まる
割と近くで止まるのね…
「あれパリさん?」
聞き覚えのある声。この会社で俺に”さん”付けをするのは一人しかいない
「あ…東京ちゃん…」
振り返るといつもとかわりない表情の東京が立っていた
「どうしたんですか?なんかげっそりしてますけど」
「あはは…ちょっとね…うん……」
相変わらずストレートに言うねぇ…
………ん?待って?
東京ちゃんも今日は10時からの出社じゃなかった??
あれ?今なんでここに?
「……東京ちゃん、今日10時から仕事じゃなかった?」
「え?」
え?はこっちのセリフなんだけど
なんでキョトン顔なの?
東京は肩に下げてた鞄からスマホを取り出した
まさか………
「……今日は9月2日ね」
スケジュールを確認してる事を仮定し日付を付け足す
「あ」
今!?!??!嘘だろ…
「え?え?スケジュールみてなかったの?」
「僕そんなにポンコツじゃないです。スケジュールは確認してます」
じゃさっきのはどういう反応?
それとポンコツとは言ってないんだけどなー…
「…もしかしてさ、他の曜日と時間帯間違えた?」
「……はい」
やっぱりね!
なんだか少し気が軽くなった気がする
とはいえ状況は先程と変わってない
どうするか…
口元に手を当てて考えてるとその隣に東京が立つ
何食わぬ顔でそのままドアノブに手をかけた。
……は?
「ストープ!!!」
腕を掴んで動作を静止させる。いや、何を考えてるんだこの子は…
「と、東京ちゃん?何しようと?」
「え?いや…これ以上遅れたらまずいなって」
いやこれ以上遅れるよりこれからのお叱りの方が怖いんだけど!?
「な、何か言い訳でも考えとかない?」
「正直に言った方が怒られないですよ案外」
こ、こんなに年下の子に正論パンチ食らうとは…
「でもさぁ…」
「大人気ないですパリさん」
うっ…。
事実なんだけど…!事実なんだけど、!
もー少しオブラートに包んでくれないかなぁ…
昔はもっと柔らかかった気がするんだけど
ニューヨークじゃあるまいし…
いや待って、東京がこういう口調になったのってニューヨークの影響じゃない?
「はぁ…」
細い腕から手を離して俯いた
東京の不思議なものを見るような視線を感じる
やめてよその目…
とはいえばか真面目に話たところで叱責されるオチは見えている
それなら少しでもそれを抑えた方がいい
「東京ちゃん…君がその気なら…」
扉の前に立って腕を広げる
「お兄さんはここを通さないよ!」
「え?」
東京は不服そうな顔をした
きっと何言ってんだこの人みたいな感情だと思う
そりゃそうだ
俺も何言ってんだ自分と思っている
しかし冷静に考えて東京がここに居るのは好都合。
ベルリンも400歳ちょっとの年下を一緒に攻め叱るわけにはいかないだろう
それでも遅刻は遅刻。
少しでも当たりを和らげたい
「でも早く行かないと」
「考えてみてよ東京ちゃん。今行っても叱られるし、後で行っても叱られる…けどなにかまともな自己弁護さえあればちょっとでも和らげられると思わない?」
「どっちにしろ怒られるなら僕は今行きます」
「話聞いてた?それにさー?叱られたらモチベも下がるでしょ」
「通してください。パリさんに邪魔されて遅れましたって言いますよ」
なんて脅し。一体誰にすり込まれたのやら…
それでも退かずとしてると東京は諦めたように肩を落とした
「えーっと…それなら…電車が遅れてた」
「いやバレるでしょ。調べれば出てくるし〜…」
「鍵をかけたか不安になって戻ってた」
「日本まで?宿泊先なんだからそれは無理じゃないかなー…」
「変な人に絡まれてた」
「お兄さんは絡むほうだから」
「カタツムリを観察してた」
「それは東京ちゃんだけしか通じないと思う」
「……おばあちゃんを助けてた」
「それは…お兄さんの道徳心的に…ちょっと嘘の罪悪感が」
「パリさん一応そういう感情あるんですね」
「ちょっとぉ!?」
ダメだ。全然思いつかない
今思ったけどこの状況でまともな言い訳なんてあるのだろうか
さすがに遅刻の弁護で大嘘はつけない
ぐるぐると様々な単語が頭の中を巡っている
すると、廊下の奥から同僚の声が聞こえてきた
その声は俺がこの扉の向こうに居ると予想していた人物…
反射的に身体が動く
東京の手を引っ張り、曲がり角に隠れた
声が段々と近づいてくる
「やはり遅刻か…今回はしっかりと罰を与えなければな…」
「まあまあそんなに怒んないであげなよ」
やはりベルリンだった
多分その隣にいるのはローマ
思わず隠れちゃったけど…
いやここで見つかってもまずいな
「あの、パリさ」
静かにしなさいと東京の口を手で塞いだ
この子には毎回ヒヤヒヤさせられる
歩いてきた2人が扉の前で止まった
ベルリンが扉の前まできてドアノブに手をかけた
よし!バレなさそう…
ピロンッ
通知音。
音的に東京のスマホだろう
なんてタイミング。もはや褒めたくなる
「…パリ?」
ですよねーバレますよね〜…
ベルリンから呼ばれ、恐る恐る後ろを振り向く
意外にも怒っている様子ではなさそう……
と、いうか
むしろキョトン顔…なんで??
「えー…あのー…ごめん!」
パチンッと手を合わせる
「…は?何がだ?」
え??
ベルリンはよくわからないと言うように首を傾げた
「いや、さっき遅刻がなんだとか…」
「あぁ。あれは上海のことだ」
上海?あぁ…まぁそれはそれでも…
「でも遅刻は…」
「あのさー…」
横からローマがなんか勘違いしてるでしょという顔で話し出す
「東京もパリも今日は午後からでしょ?」
「え?」
嘘?そんなことはないはず…
「でもローマさん、予定表には…」
そう。俺の予定表にも東京の予定表にも同じ時間の記載があった
東京がローマにスマホを差し出す
ローマはそれを見て東京の頭に手をのせた
一旦落ち着けと言わんばかりだ。
「……東京。今日は9月1日」
「……2日じゃ」
「1日だよ」
あれ?それもありえない
だって俺のスマホには…
確かに9と2の数字が画面には写っている
それを見せようとしてはっとした。
昨日、スマホを落とした。
なるほど…謎が解けた…
つまり…
「ごめん!東京ちゃん…お兄さんのスマホ日付狂ってて…」
そう伝えると東京はしばらくロード中になったものの理解できたようだ
「やっぱり2人とも勘違いしてたんだね」
苦笑いのローマと呆れるベルリン
なんだ結局は勘違い…
それならここにいる必要もなくなった。
一気に解放されて気持ちが軽くなる
何だったんだ今までの気持ちの葛藤は…
「なんだ〜…よかったー
じゃ、お兄さん寝不足だから一眠り…」
そう言って場を後にしようとする
が、
「待てパリ」
ベルリンからお呼び止めがはいった
なんだか良くない気がする声だ
「お前昨日の資料作成終わってないだろ」
ご機嫌ななめなご様子
「………」
「その前もだ」
「あー…えー…そーだっけ…」
嫌な予感がする
ご機嫌ななめではなくかなりお怒りのご様子…
「お前はどの道積説教だ」
「やっぱりこういうオチなのね!?!!」
引きずられながらも会議室へ連行される
なんてついてない1日…
どちらにせよモチベは下がりそうだった。
オマケ
ローマ「…東京もなんで日付勘違いしたの?違和感とかない?普通…」
東京「最近寝てなかったので体内時計がバグってました」
ローマ「……ちゃんと体調管理しなよ…」
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