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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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また…死んだの? …それとも、これが本当の地獄なの?

嫌だ!こんなの嫌だよ…怖いよ…誰もいないのなんて嫌だよっ!!

誰か助けて…僕を一人にしないで…ここで一生なんてやだよ…

真っ暗で何も見えず、何も聞こえない。

僕以外何の気配もしない空間で、すごく怖い。でも、次第に

白い光が辺りを照らし、空間が真っ白になる頃には

全身や意識がふわふわして不思議な感覚に苛まれた。

「はあっ、はあっ、はっ…はあ…なんで僕…ここにいるの?」

僕は気が付いたら見覚えのある白い部屋の綺麗なベッドに

横たわっていた僕は余計パニックになっていた。

僕の右隣にあったパイプ椅子に誰かが座っていて

その人の声が聞こえたと同時に、あの時と同じ様な

手の温かさが僕の頭を優しく撫でた。

「大丈夫?魘されてたよ?…よしよし」

僕を撫でてくれたその人の少し細い手はあの懐かしい手と

同じだった。あの時には既に一人で生きられない僕を、

最期まで助けてくれたあの手と。

「…あれっ、貴方は…」

−あの時−

「もうしんどいよ、限界なんだよ。全部どうでもいいんだよ!」

そう言って僕は後先考えず、机の上にあった物をなぎ払い、

壁に投げ、ひたすら頭を掻きむしりながら叫び、暴れた。

「うあああああっ…!もうっ、もう、もう…あぁ、はああっ…

 しんどいよおっ…はあっ、壊れる、こわれるっ、こわれる…」

ひたすら暴れた僕は全身に力が入らず、そのまま床に座り込んで

辺りは元に戻せないくらい、乱雑していた。

優しい言葉をかけられる度、安心する事ができるけれど、

毎回息が出来なくなるほど、苦しくて辛かった。

「大丈夫、大丈夫だよ。俺はここに居るから。辛いよね。

 苦しいよね。よしよし、春はいい子だから。」

そして親友は僕をぎゅうっと抱きしめ、頭を撫でた。

「ぐすっ、うっ…ううっ…」

「よしよし。ほら、おいで。」

僕は薬のせいか記憶が飛び、いつの間にかベッドで寝ていた。

先に起きると部屋は片付けられて、僕の横に親友が寝ている。

親友の言葉は凄く優しくて、心が暖かくなって、幸せだったけど

僕の深く抉られた傷を埋めたりなんか誰も出来やしなかった事、

とっくの昔に分かってたから、ずっと親友に申し訳なかった。

その事も は気付いてたんだろ?

今なら言えるけど、僕も の事で気付いてた事があるんだ。

いつもは優しくて、テンション高くて、ヘラヘラしてる癖にさ

僕が起きた後、毎回 の寝顔を見ると目が赤くなってた。

  が起きた時には治ってたから気付かれてないって思った?

毎回鏡で確認してたの見てるから、それだけでもバレバレだよ。

でも、僕が苦しむ度 も辛いの気付いてたのになあ…

それなのに死ぬ事がどうしようもなく怖かった。

でも、生きるのも死ぬ事と同じくらい怖くて。

だから、自分の腕や脚にカッターで何度も 何度も 何度も

傷を付けて自分の“生きたい”って感情を誤魔化してた。

死ぬ勇気とか度胸とかなくて、勢いで死のうとしても

睡眠薬や、飛び降りた高さが足りなくて未遂に終わってたから

その度に搬送されてあの白い部屋に何度も入らされてさ。

通話してた時に が僕の前で泣いてる所を見て

やっと死ぬ決心ついたんだ。だから今回は首吊りにしてみた。

…そしたらやっと成功したよ。首に縄をかけた瞬間さ、

玄関から音がしたんだよ。鍵は閉めたはずなんだけどなあ…

  が来てるの知ってたけど、今しかないと思ったんだ。

−現在−

隣に座っていた人の顔を見ながら、僕が覚えてたことを告げた。

「…あの、僕に水買ってくれようとしてたお姉さんですよね?」

僕がそう言うと彼女は照れて、少しニヤニヤとしながら

僕から目を逸らして、頬を掻きながらこう言った。

「覚えてたんですね、ふふ。戻った時とっても焦ったんですよ…」

かわいい。…なんて思ってしまった自分が凄く恥ずかしくなって

僕も咄嗟に目を逸らしてしまった。

聞きたい事があったのをふと思い出した。

そして、この白い部屋を見てから疑問に思っていた事を質問した。

「そういや、なんで僕…ここに居るんですか?」

いつも僕が自殺未遂をした後に、何度も、何度も訪れた場所。

“病室”と言った方が早いだろうか。

彼女は僕の質問にびっくりしたのか少し目を見開いた。

「え…?覚えてないんですか?!熱中症で倒れてたんですよ!?

 私、すごく怖かったんですから…死ぬんじゃないかって…」

勿論、覚えているに決まっている。

眩い光が反射し、キラキラと光り輝くコンクリート。

葉が青々として、生暖かい風に吹かれて揺れている広葉樹。

空は一面が天色で誰も隠れる場所さえ無く、

太陽、ただ一人だけがこの世界で僕達を嘲笑っていたのだ。

そんな世界を忘れるわけがないだろう。

「…覚えてますよ。

 だけどそんな心配する程でもないですよ、はは」

死人だらけの世界なんだから、何故そこまで心配するのか

理解することができなかった。でも僕がそう言った瞬間、

彼女は少し怒って僕に言った。

「自分の命、大事にしてくださいよ。

貴方の事を大事に思ってくれる人、絶対に居るはずですから。」

…誰からも愛されて生きてきたんだろ?だからそう言えるんだろ?

僕の事、何も知らない癖に!そんな事軽々しく言うんじゃねえよ!

友達だと思ってた奴からは悪口吐き捨てられて、クラス全員から

何回も、何回も、殴られてさ。先生も助けてくれた事なんか無くて

母親には「あんたの存在を気付いた時に堕ろせばよかった」って。

妹は溺愛されてる癖に…!なんで僕だけが拒絶されるんだよ!

なんで なんで なんで なんで

「はあっ、はあ…はぁ、ぐすっ…ううっ、うあぁっ」

「ご、ごめんなさい。貴方の事、何も知らないのに…

 勝手な事言いましたよね…ごめんなさい」

僕が泣いた事にびっくりしたのか、彼女は下を向き弱々しい声で

ごめんなさい、ごめんなさいと謝り続けていた。

彼女を傷付けてしまった。また傷付けてしまった。

誰も傷付けたくなくてここまで来たのに。自分が憎い。

あぁ、なんか眠いや…

−続く−

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