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ホワイトハウスで色々あった後、私達はそのまま異星人対策室の本部ビルへ招待されることになった。交易品の受け渡し等を話し合うためであるし、ジョンさん達にばっちゃんやフィーレを紹介したかったからちょうど良かった。なんだか某国が大変なことになっているみたいだけど、ここはハリソンさん達に任せるしかない。ばっちゃんも気にするなと言ってくれたし、最悪日本に被害が出ないならそれで良い。暴発とかしてまたミサイルを撃つようなことをしたら、私だって怒るからね。その辺りはしっかりとハリソンさんに伝えた。 まあ、ばっちゃんが言うにはアードの力を見せつけられて起きた問題だから、暴発する可能性は少ないみたいだけどさ。まあ良いや。
相変わらずの国賓待遇でちょっと肩が凝るけど、フィーレが車に興味津々だったから送って貰うことにした。明らかに重武装な車に護衛されて、私達は用意してくれたリムジンで移動する。車窓からはワシントンD.C.の町並みが流れてフィーレは楽しそうに外を眺めて、フェルが相づちしながら楽しげにお喋りしてる。同族だからか、フィーレはフェルにべったりだ。いやまあ、フェルの溢れる母性に抗えないのは仕方ないけどさ。
「フェルちゃんの言う通り、みんな服装がバラバラなんだねぇ☆」
「ファッションは個性を表す記号みたいなもの……らしいよ?」
「ファッションかぁ。やっぱりあのメイド服?☆」
「あれは違うから、別の意味でのファッションになっちゃうから」
少なくとも一般的な服装じゃない。この辺りの違いを教えておかないと、ばっちゃんは暴走するからなぁ。
とは言え、統一された衣服が当たり前のアード人やリーフ人からすれば地球人の服飾関係を不思議に思うのは無理もない。
アード人にとって個性はそこまで重要じゃない。種族の一員であることに誇りを持ち、日々アードのために生きるようにと教えられて育つ。つまり、個より集団としての役割が重視される社会だ。
それに関連する地球との大きな違いは所謂名字、ファミリーネームが存在しないことかな。私もアードっぽく言うなら“ドルワの里のティナ”。それだけだ。ばっちゃんもドルワの里長ティリス。名前も似たようなものばっかりだしね。
「取り敢えずティナちゃんにはこれが似合うと思うんだけど、フェルちゃんはどう思う?☆」
「素敵だと思います」
「ちょっと待った、フェルに何を……何を見せてるのさ!?」
気を抜いたらばっちゃんがフェルに端末で何かを見せてた。確認すると、そこにはフリフリの服、つまりゴスロリ服が表示されていた!確かに銀髪だけど、こんないかにもな服は流石に抵抗がある!フェルも目をキラキラさせない!
「ほう、同志ティリス殿は良く分かっていらっしゃる!」
「ほら、地球人も似合うってさ☆」
「ジャッキーさんは一般的な地球人じゃないから!」
案内役として同乗しているジャッキー=ニシムラ(残念ながら紐パン装備)さんがばっちゃんの提案を即座に誉めたけど、それは違う!
「一般的、スタンダード。その様な言葉に惑われて自らの個性を捨ててはいけませんぞ!自分を偽らず、ありのままの自分をさらけ出す!それが人生に彩りを与えてくれるのですからな!」
「良く言った、同志ニシムラちゃん!☆」
「限度があるから!いや、流石に恥ずかしいって……」
個性の塊どころか化け物みたいな二人には敵わない。このままじゃゴスロリにされる!
ここはフェルを説得して……
「……着ないの?」
「着る」
うん、涙目&不安げな上目遣いは卑怯だと思う。
「HAHAHA!それなら話も早い!ドライバー!目的地を変更する!ここへ向かってくれたまえ!」
「ええ!?悪いですよ!」
「なぁに、構いませんとも!ティナ嬢の要望を最優先にするようにとケラー室長から言われていますからな!」
「ジョンさん……」
尚、急に警備対象の目的地変更を知らされた担当者達の頭痛と胃痛はあったが珍しくティナのせいでは無いので割愛する。
ジャッキーさんの指示で私達を乗せたリムジンと護衛の車両は異星人対策室本部ビルの近くにある大きな服飾専門店にやって来た。警備の人たちがバタバタしているのに対して、異星人対策室の皆さんは落ち着いているのが印象的だ。
「ここは私が贔屓にしている店でしてな、種類も豊富で良い店ですぞ!
ああ、警備の皆さんは解散で構いません。後は我々異星人対策室が受け持ちますので」
「うわぁ……」
「ティナ姉ぇ、これ全部服?」
「そうだよ……凄いなぁ」
広い店内にはレディース、メンズ、キッズ、更にスポーツ関係まであらゆる服が所狭しと並べれていた。まさにアメリカンサイズなお店だね。
どのシーズンにも対応可能な種類、デザインも色々だ。私やフィーレだけじゃない。フェルやばっちゃんも圧倒されている。これが合衆国の物量か!
「この店に来れば必要な服は一通り揃いますからな。しかし、私のお勧めはあちらのエリアでして」
ちぃ!無視しようとしたのに強引に視線を向けさせられた。お店の一角には明らかに普通じゃない服が並ぶコーナーがある。SMとか掛かれているものから所謂コスプレグッズまで目白押し。子供を連れてきて良い場所じゃない……。
「ほらティナちゃん、やっぱりあの服は一般的なんだよ☆」
「違うから、ここが特殊なだけだから」
数々のメイド服を見てドヤ顔してるばっちゃんに注意をしていると……目をキラキラさせたお姉さん達に囲まれた。
「ではティナ嬢、新しい自分に会いに行きましょう。皆さん、お願いします。くれぐれも丁重に頼みますぞ?」
「はーい!」
「可愛いーっ!テレビで見るより百倍可愛い!」
「ジャッキーちゃん、この娘お持ち帰りしちゃダメー?」
「HAHAHA!それはちょっと諦めて欲しいですな。さあさあ!彼女を可愛らしく生まれ変わらせてあげなさい!」
圧が凄い……!だってあのフェルが圧倒されて私に近付けないんだからっ!
そのまま私はお姉さん達に更衣室へ連行され……まあ、揉みくちゃにされることになった。
しばらく後、フラフラしながらティナが戻ってきた。青と黒と白のコントラストが美しいゴスロリ服を身に纏うその姿は大変愛らしく皆を喜ばせた。
「ティナ可愛い!」
「へー、変わるもんだねぇ」
「ティナ嬢!最後にこの台詞をお願いします!」
疲れきったティナは渡された台本を手に、良く考えずに内容を読み上げた。ただし、少し恥ずかしがりながら、である。
「お……お馬鹿……さぁん?」
頬を赤らめつつ某キャラクターの台詞を読み上げたティナ。
「んぉ? 何かの台詞? 同志ニシムラ? ん? ニシムラー?
……あっ、死んだ」
可愛らしいが元ネタを知らないティリスは尋ねようとして隣を見ると、そこには握り拳を作った右手を高々と掲げて昇天している一人の漢が居たと言う。