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黒名「…..降ってる」
窓の外を見たまま、黒名先輩が言う。
さっきまで曇りだったのに、いつの間にか本降り。
帰るタイミング、完全に逃してる。
真白「どうする?帰る?」
聞きながらも、少しだけ期待してしまう。
黒名「…..無理」
即答。
その一言に、少しだけ心臓が跳ねた。
真白「タオル使う?」
濡れたままの紙を見て差し出すと、
黒名「…..借りる」
短く返事して、そのまま受け取る。
でも────
黒名「……」
なぜか、使わない。
真白「使わないの?」
黒名「…..やる」
真白「え?」
次の瞬間、距離が近づく。
ほんの一歩分だけ。
それなのに、やけに近い。
真白「ちょ、ちょっと待っ────」
言い終わる前に、髪に触れられる。
優しく、でも迷いない。
タオル越しに水気を取る手つきは、やけに丁寧で。
黒名「…..濡れてる」
真白「そりゃ雨だし…」
声がうまく出ない。
近い。普通に近い。
黒名「….動かないで」
低い声。
反射的に、止まる。
顔を上げると、ほんの少しだけ目が合った。
すぐに逸らされた。
黒名「…..これでいい」
最後に軽く撫出るみたいにして、手が離れる。
その一瞬が、やけに長く感じた。
真白「ありがとう….」
小さく言うと、
黒名「…..どういたしまして」
変わらない声。
なのに、空気だけが違う。
黒名「…..まだ降ってる」
真白「うん」
黒名「…..帰らない」
それは確認じゃなくて、決定みたいな言い方で。
真白「…..いいの?」
聞くと、少しだけ間があって。
黒名「….いい」
それだけ。
外の雨音が、やけに大きく聞こえる。
でも、それよりも────
さっき触れられた感覚が、ずっと残っていた。