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あてんしょん。
怪異パロです。gtky。gtさん怪異。
キヨは高校の図書室でレポート課題に取り組んでいた。ここはこの高校にしては古くあまり人の来ないしんとした空間だった。勉強するにはうってつけなそこはキヨのお気に入りの場所でもあった。
「~~~~~でさぁ、」
·····思ったそばから人が来たらしい。キヨは口をへの字に歪めてはそこを去ろうとペンを片すもふとひとつの疑問を抱く。
───盗み聞きだって騒がれたら···?
あぁ、そんなの言うまでもなくお断りである。キヨは小さく息を吐いては誰も来ることはないであろうコーナーへと足を運び棚に置いてあったゲーム関連の本を読もうと開いた。
「~~~だよ、~で、~。」
「~~~なの?~だと思ってた」
なにか話す声は少しづつ近付いているがとある1点で留まる。その事にキヨは安心しながらも本に目を落とした。
「なんでも話聞いてくれる~~~って知ってる?」
·····なんでも話を聞いてくれる?
キヨはその言葉に耳を疑った。眉を訝しげに寄せながら女子生徒たちの話を聞く。
「その人はこの近くの橋に繋がる大通りに夕方の4:44に現れるんだって。」
「へぇー、そんなの信じる訳?」
「いやいや、隣のクラスの佐藤さんが試してほんとに来たって!」
「どんな話聞いてくれんの?」
「それがね、色々条件があるんだって。」
「条件?最近の都市伝説も平等を主張するとは···。」
「こっちが質問したら次はその逆。私たちがその人の質問に答えるんだって。」
「·····ほぉ?質問コーナーってこと?」
「まぁ、そんなもん。でも、最後の質問にはNOと答えないといけないんだって。そんで振り向いちゃダメ。」
「Yesって言ったり振り向いたらどーなんの。」
「·····分かんない。どうなるんだろう。」
「呼び出すのは勝手に来てくれんの?」
「んーん。自分のお気に入りのものを持ってその場に立つ。時間が来ればこう言うの。」
─── ××さん、私とお話をしましょう。 ってね。
「なんだそりゃ、こっくりさんみたいだね。」
「ね、でも面白くない?今どきにそんな都市伝説が出回るなんて。」
「しかもこの学校から近いしね!ウケる。」
「ま、まともに受け止める人なんて居ないよねー。」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
キヨは4時43分に橋に繋がる大通りに立っていた。人通りが少なく夕陽の光に照らされるその通りに高校生が1人で、しかも道のど真ん中に立っているなんて傍から見ればヤバい奴である。ただ、キヨはどうしても聞きたいことがあった。自分の祖母についてである。祖母は原因もよく分からない病気を患ってしまい、今や寝たきり。そんな祖母を治すために日々勉学に勤しんでいたが時間が足りずに焦っていた。そんな中耳に舞い込んできたのは「××さん」の存在。半信半疑なのは確かだが試してみて損は無いと踏んだキヨはお気に入りのものを持ちそこに立っていた。
カチ、カチ·····
秒針が進む微かな音すらも大きく聞こえるくらい緊張していたところ、ひとつの疑問が思い浮かんだ。
××さんの名前ってなんだろう。
聞こえずらくて分からないのかその部分だけ抜け落ちたのか·····。キヨは思わず眉を寄せた。もうすぐに時間が来ると言うのに·····。
カチッ·····。
4時44分になった。キヨははっ、と息を飲む。
「××さん、私とお話をしましょう。」
キヨは思わず目を見開く。名前も知らないのに何故口から出てきた·····?
そんなことに気を取られていれば背後から近付く足音に気付かなかった。付近まで来てようやく認識し、ピタリとキヨは動きを止めた。こんな所で何してる!なんて通りを通った人に言われたらどうしよう·····。そんな不安を抱えながら。
「君かな、私を呼んだのは。」
「っ、ぁ、はい。」
「そう、それじゃあ、質問は?」
「俺の、ばあちゃんは···、治りますか·····?」
「·····ほぉ、君のおばあさん。」
後ろの”××さん”はんー、としばらく黙り込んだ後、
パチンッ
キヨの耳元で指を鳴らした。
「よし、これで治った。寝たきりで辛かっただろうに、もういつも通りだよ。安心して。」
「ぁ、え、どうやって·····」
「こらこら、先に私の質問だ。」
「あ、ごめ、なさ·····!」
「ふは、気にしないで。私と話すのは初めてだし、仕方ないよ。」
案外優しいらしい、××さんはキヨの失態を笑って受け流した。
「それじゃあ、質問。君の得意教科は?」
「あ、地理が、得意です。」
なんだ、こんな質問か、なんて安心したキヨはその後いくつかのやり取りをした。
××さんが知りたがった内容はその人の素性らしく、
「君の家族は?」
「その人たちと仲良しかな?」
「好きなスポーツは?」
「ゲームは好きかな?」
なんて類のもので、キヨもすっかり緊張を解き、××さんと話していた。
「あのゲームは面白かったよ、俺ん中で1番だった。」
「へぇ、そう。ところで、君はキヨって言うのかな?」
「んー?うん。」
キヨは何気なく答えたつもりだった。突然、後ろの”××さん”が肩を鷲掴みにして指が食い込むくらい強く掴んでこなかったら焦りもしなかった。
「あっ、え、何·····!」
キヨは振り向いた。否、振り向いてしまった。
「キヨ、キヨか!」
後ろには2メートルを優に越えた男、顔は──なかった。いや、黒く塗りつぶされたような、そんな顔だった。
キヨは思わず1歩後退る。それを許さなかったのは”××さん”。
「君をずっと探していたんだ!死ぬ前にお願いごともしたのに上手く叶えてくれなかったらしい、けれどほら!またキヨと出会えた!!これはきっと運命なんだ!さぁほら、俺と一緒に逝こう!手を出して。」
一息でそう言ってのけた××さんはピキピキと黒い顔にヒビが入った。軈て現れたのはブルーの交じった黒い瞳。その瞳はキヨをしっかりと捉え、外さなかった。
「だ、れ·····」
キヨは怯みきった声でそう言えば××さんは目を細める。
「俺?俺は────」
────────ガッチマンだよ。
夕日が沈みきった大通りには、黒猫のキーホルダーがひとつ落ちていた。
了