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2週間前に、体の異常に気がついた。
大きな花が咲いた。
腕に。 こんなことはもう……ごめんだ。
これは花咲き病らしい。
感染るかはわからないが仁王に感染したく無かったので、気づかれたく無かったので、治るまで距離を置くことにした。
それが間違いだった。
今のが約1週間前までの話。
仁王と距離を置いてからというもの、仁王とはどんどん気まずくなっていき、僕の体には花が増えていった。
もう、これ以上仁王と気まずくなるのが嫌だった。
僕から仁王に別れを切り出した。
「仁王、ごめんね、呼び出して」
「なんじゃ」
「……僕たち、別れない……?」
「別にいいぜよ」
「友達として…仲良くしていきたいな」
「じゃあ俺はこのあと用事あるから行くぜよ、じゃあの」
「……うん……」
あっさり別れることができた。それでいいはずなのに涙がとまらなかった。
次の日、僕は学校に行かなかった。別れてからというもの、急に病状が悪化し、花が急に増えた。
家のチャイムがなった。だが出れなかった。
もう僕の足は機能していない。
玄関のドアが開いた。足音が近づいてくる。
「誰…だろう…」
僕の部屋のドアが開いた。
「……仁王……」
「プリント届けに来たぜよ」
「ありがとう……」
「机の上に置いとくなり」
「ん……」
「みんな心配してたぜよ」
「……」
「それじゃあの」
「ありがとう……」
仁王には気づかれなかった。布団で隠していたから。
ただ、僕の心には大きな穴がぽっかり空いた。
それを埋められるのは仁王だけだとわかっていた。
1週間後
1週間が経った頃には腕や足に花が綺麗に咲いていた。そして、腕も機能しなくなった。
三日後には片目に花が咲いた。
片目も機能しなくなった。
家のチャイムが鳴った。
仁王だったらどうしよう。
部屋のドアが開いた
仁王だった。
「僕、前より可愛くなったでしょ。」
「何じゃそれ」
「お花だよ。身体に沢山、咲いてるの。」
仁王は布団をめくった
「なんで言わなかったんじゃ」
「心配かけたくなかったから。」
「それ、痛くないんか」
「何もしなければ痛くないよ、触ってもだいじょうぶ。でも抜こうとすると痛いんだ。」
「そうか」
「仁王は今日部活でしょ?僕のことなんかほっといて早く行きな。真田に怒られるよ?」
これを話したときの僕の表情はきっと泣きそうだったんだろう。
「サボるぜよ」
「だめ…だ」
「俺のわがまま、聞いてくれるじゃろ?」
「……ぁ……」
こんな会話を思い出した。
まだ付き合ってた頃、仁王が全然わがままを言ってくれないので
「仁王、わがまま聞くから、沢山わがまま言ってほしいな!」
「プリッ」
こんな会話をしたっけ
どうしてこんなに泣きたくなるんだろう
どうしてこんなに…寂しくなるんだろう。
きっと死ぬのが怖い。それだけだ。
そう言い聞かせていた。
「仁王、僕もうすぐ死ぬよ。」
「は?」
「心臓の位置に蕾ができたから。それが咲いたらもうおしまい。」
「…治す方法は…」
「無いよ。」
「僕もわがまま、言ってもいいかな。耳を傾けてくれるだけでいいよ。」
「なんじゃ?」
「もう恋人なんかじゃないけど、抱きしめてほしい。」
仁王は、無言で優しく包み込むように抱きしめてくれた。
涙が溢れた。
心に空いた穴が塞がれていくような気がした。
「ありがとう…」
「もうひとつだけ、聞いてほしい。」
「ん?」
「僕は、仁王のことが嫌いで振ったんじゃないよ。」
「知ってるぜよ。話をしてるお前さんの顔、今にも泣きそうじゃった。」
「うん…」
「じゃあ俺もわがまま言うぜよ」
「…?」
「恋人に戻りたいぜよ。」
「ぇ…?」
「恋人に戻って、俺のわがまま沢山聞いてほしいぜよ」
「…だって、僕、死ぬんだよ…?」
「生きるぜよ、たとえ体が死んだとしても俺の心の中では生き続ける。永遠に一緒じゃ」
「僕もっ、戻りたい…」
仁王は僕の頬にキスをした。
それからしばらく仁王と他愛もない話をした。
急な眠気に襲われた。
「あぁ……もう、おしまいだね…」
仁王は僕を抱きしめたまま何も言わなかった。
「死んだら、僕おばけになろうかな。仁王は霊感あるから僕の事が見えるかもね、そうだなぁ…思いでのある場所を彷徨うか仁王に取り付くかでもしようかな」
一人で喋り続けた。
「……でね…」
「もう無理に喋らんくてええよ」
仁王は泣いていた
「じゃあ最後に…」
「仁王、今まで、ありがとう。今もこれからもずっと大好きだよ。」
「俺も、すいとうよ」
そうして僕は、二度と目覚めることのない眠りについた。
雪斗が死んだ。
俺の腕の中で。
俺は雪斗が死ぬ前に言ったノートを探すことにした。
机の引き出しにはノートが沢山入っていた。
ノートをめくると雪斗がレギュラーメンバーだけでなくそれ以外の部員の、人それぞれに合った練習メニューを組んで、ノートにまとめてあった。
もちろん俺のもある。俺に関しては最後の方に「しっかりカロリーを取ること!!」とあった。
他の人のに比べて俺のだけ少し細かく書いてあったりと特別扱いされているのがよくわかった。
ノートを引き出しから全部取り出すと小箱が入っていた。
小箱を開けてみると、Happy Birthdayと書かれた紙とともにネックレスが入っていた。
小さなリングがついたネックレスで、リングの内側にはYとMのイニシャルが彫られていた。
俺はネックレスをつけ、ノートを持ち、雪斗を抱きかかえて家を出た。
最初に向かった場所は二人でなにかあるたびに行った花畑だ。そこは人がめったにこないので雪斗を寝かせるにはぴったりだった。
俺はそっと雪斗を花畑に寝かせた。
「また会いにくるぜよ」
俺が次に向かった場所は立海だ。
ノートを幸村に渡した。
三強は悟ってくれたのか何も言わなかった。
そして俺はもう一度花畑に行った。
「おまたせ、雪斗。俺の家行くぜよ。」
雪斗を抱き上げて連れて帰った。
俺の部屋にあるソファーにそっと寝かせる。
俺もベッドで横になり、そのまま眠りに落ちた。
「……きて」
「なんじゃ…」
「起きて」
「…!?」
「おはよ、仁王」
俺の上に乗っていたのは幽霊になった雪斗だった。
片目に咲いた花だけ残っていたがそれ以外はいつもの雪斗だった。
「会いたかったぜよ」
「僕も会いたかった」
雪斗はいつも恥ずかしがって自分からキスしないのに俺の唇にキスを落とした。
「ん…」
「好き」
雪斗が自分の横に寝て猫のように甘えてくる
「俺も好きじゃよ」
「ん!」
「おまんといつかまたテニスしたいのぅ」
「やろうよ!絶対!」
雪斗は小指を差し出してきた
俺はそっと小指を絡める。
本当に、いつかできる日が来るんだろうか。