初雪兎【iris】 - 小説 (nosv.org)
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夏祭り、
一人きり、
寂しい…のかな
去年までだったら、
また、何かの動物を作り出して一緒に屋台を回っていたんだろうか。
「動物を作り出す」。
俺は、昔から作ったものに命を吹き込むという能力があった。
だけど、今年の冬に俺が作ってしまった初雪兎の初兎ちゃんが、
自分の体と一緒に、俺の能力を溶かして消えてしまった。
でも、俺はそれでいいと思っている。
初兎ちゃんと一緒にいた時間はすっごく楽しかった。
そして、俺は初兎ちゃんが溶けるとき、泣いてしまった。
初兎ちゃんは俺がこれ以上泣かないように能力を持って行ったんだ。
だったら、俺もずっと笑っていないといけない。
『あっ、』
赤「ないくんじゃ~ん」
青「ないこ家に居ないから探したんやで~?」
りうらといふまろが俺の方へ歩いてきた。
二人とも、手にブルーハワイとイチゴのかき氷と、イチゴ飴を持っていた。
(持つの大変そう…())
赤「どしたないくん?かき氷ほしい?」
青「そうなん?あげよか?」
『だ、大丈夫。俺も買ってくる!』
いや、りうらといふまろのかき氷食べるとか無理、いろんな意味で
二人から逃げるように、かき氷を売っている店へと走る。
かき氷、
イチゴ、ブルーハワイ、マンゴー、レモン、メロン、
王道ばっかだな…
…なんか、かき氷って、冬の雪が夏に冒険してきたみたいだな。
そう思った途端。
俺は初兎ちゃんと重ねた。
『あの……シロップかけないかき氷ください』
屋台の店番の人は、ちょっと驚いたような顔をして、
ちゃんと作ってくれた。
なにもかかっていないかき氷は、
雪そのものだった。
(二人がいたのはあっちの方だったよな…)
俺はさっき二人がいたところと真逆に歩き出した。
ある神社の端っこで、
俺はかき氷で小さな雪兎…いや、かき氷兎をつくった。
手は、冷たかった。
冬の時は、手袋をしていたから冷たくなかったから。
雪兎の初兎ちゃんは、
ずっとこんなに冷たかったのかな…
その辺にあった石で目を作り、
長細い葉で耳を作った。
”あの時”の初兎ちゃんとは、ちょっと違っていた。
だけど、
俺にはそれで充分だった。
また。雪兎が目の前で溶けないように、
俺は神社の隅っこに雪兎を隠した。
心の中で「ばいばい」と言って、
俺は二人のいたところへと歩き出した。
君を作るのは、最後にするね、
さようなら、大好きだったよ、
俺のせいで生まれた初雪兎…夏兎の初兎ちゃん。
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