※注意
・にじさんじ創作
・ChroNoiR
人にとって一番見られたくないのは胸に秘めた初恋の思い出なのかもしれない
恥ずかしいとも違う
過去の甘い甘い恋はいつの日も大切にとって起きたい思い出
だから、それを安易に人に覗かれるというのは、初恋の思い出を踏み躙られる様な、そんな気が僕はしている
中学二年生の頃、森の中で出会った青年に恋をしていた
いや、今も恋をしている
彼と会うのは小さな頃から山の上にある教会だった
彼は平成の時代に似つかわしくない程の不思議で綺麗な姿だったのを今でもたまに夢に見る
親には「そんなのばっか考えているから彼女が出来ないのよ」と言われたが、もう慣れっこだ
僕は昔からよく相談相手にされることがあった 話の内容は人それぞれで、とにかく沢山
でもその中で聞いていて一番辛くなったのは恋に溺れた人だ
「恋は盲目」とよく言われるが、まさにそれだ
恋に夢中になり過ぎて周りの事が見れていないのだ
そのまま僕は恋人もできないまま社会人になって行った
ある日、母から電話があった
「…おばあちゃんが、亡くなったッ」
との事だ
僕はおばあちゃんといた時よりも教会にいた時の方がよく記憶に残っているから、そこまで悲しくは無かった
それよりもまた彼に会えるのかなどを考えていた
我ながら、本当に不謹慎である
「そっか、なら御葬式しないとだね」
「..そうね」
母は何か言いたげに時間を空けてからそう言った
ピコン
母からメールが来た
『来週おばあちゃんのお家行くからここに来て
https://ja.m.konnitiwa.org/blsaiko/%E3%81%8A%E8%91%』
僕はメールそっちのけで彼への手紙を考えていた
この気持ちだけは伝えたい、その一心で 棚の中に手を伸ばす
昔使っていた手紙セットがあったはずだ
もう何年も書いてない
彼はまだ彼処にいるのかも分からないのにつらつらと僕の愛用している万年筆が紙の上を滑る
書いては捨て、書いては捨てを繰り返していると外はもう明るくなっていて、 鵯の執拗いような声が聞こえてきた
「もう朝か…」
僕はどうせ電車で寝れば良いと思い重たい瞼を無理やり上げて支度をした
ピコン
『私もうそろそろ駅に着くわよ。改札口で待ってるからね』
さて、もうそろそろ向かうとするか
そこから何時間 たっただろうか
目に余る程あった高層ビルは平たい田に変わり
狭かった電車内も、まるで貸切の気分になれてしまうような程までに僕と母2人だけになっていた
下車した後、タクシーを呼んだ
昔と差程変わらない景色に僕は笑を零した
数分後、タクシーが到着した
母は叔母の住所を運転手に伝えていた
「メモも無いのに…家の住所覚えてるんだね」
『そりゃそうよ、私の実家よ?』
確かに、僕の記憶はほとんど教会だったが、母からすれば昔から彼処で育ってきたんだ
わかって当たり前か、
『あんた、まだ寝ぼけてるんじゃない?眠そうな顔して…昨日ちゃんと寝たの?』
「それはお母さんの方じゃない?そんなに隈作っちゃってさ」
なんて、会話をずらしてみたりして
叔母の家に着くと、顔の知らない親戚のおじさんやおばさんが沢山いた
そして、叔母が飼っていた愛猫、ロトが居た
ンニャ〜
「久しぶり、ロト」
ゴロゴロ
「ふふっ」
そこからは普通にお葬式をした
別に思い入れが無かったとはいえ、人の死だ 悲しくないと言えば嘘になる
僕はその日、久々に泣いた
お葬式ではない
彼に会えたのだ
僕達はその後、叔母の家で思い出話をしていた
いつの間にか、親戚はみな酔っていた
すぐに僕へのダル絡みが始まった。最近は仕事どう?とか、ちょっとした話を何回も聞いてくる
そうだ、僕は、この空気が嫌であの教会に逃げていたんだ
そう考えると、僕は、自分が親戚からの 標的から外れた時にさっと家から抜け出した
その後ろをロトが観察するように僕の後を着いてきた
教会へ着くと僕はすぐに境内に入った
そこの空気は澄んでいて、ステンドグラスが月明かりに照らされて輝いている
コトンッ…
音が響く
「…シャーサ、いないのか 」
辺りを見回したが彼、シャーサは居なかった
居ると期待していた自分をバカに感じた
もうあれから十年以上たっているというのに、僕の心がまだここに居ると言っている
「呼んだか? 」
「!?」
「よぉカナエ」
シャーサだ、会えたのだ、やっと
色んな感情が込上がり僕の眼からは無数の雫がこぼれ落ちた
「なぁに泣いてんだよ、久しぶり」
「うんッ久しぶりだね、シャーサ」
一旦切ります
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