「…あった」
棚と壁の隙間に落ちていた。これは気づかない。
リボンについた砂をはらった。
たまたま顧問の先生がいてよかった。いなかったら部室を開けられない。
部室、だいぶ汚れてるな。
掃除して帰る?
いや、さすがに変か。
脳内会話が多い自分が少しおかしかった。
部室を出ると、斜め左方向からボールが転がってきた。
「あっ取ります!」
拾おうとすると、部員の人がこっちにやってきてすぐに拾った。
「あ、幡中さん、ごめん大丈夫だった?」
去年同じクラスだった人だ。上岡と仲が良いはず。
「うん、全然」
「よかった、部活?」
「いや、昨日部室に忘れ物してて」
「あ、そうなんだ」
休憩ー、という声が向こうから聞こえた。
「テニス部、雨だとできないよね」
「そうなんだよね、だから今日はそこで筋トレとか。ちょっと暇だったからキャッチボールしてて」
そっか、と私は軽く笑った。
「明日、上岡と花火なんだよね」
「ああ、うん」
「楽しんで。上岡とだったらきっと楽しいと思う」
「うん、ありがとう」
「上岡呼んでこよっか?」
「え、あううん、大丈夫」
奥を見ると、上岡はこちらには気づかずわいわいと喋っているようだった。
「そっか、じゃあ俺そろそろ戻るね」
「うん、頑張って」
ありがとう、と言って向こうに戻っていった。
「…あれ、幡中?」
校門へ向かおうとすると、微かに後ろからそう聞こえ振り向いた。
「あ、お疲れ様」
こちらに走ってきた上岡は、お疲れ、と軽く微笑んだ。
「あれ、今日部活?」
「ううんオフ。昨日部室に忘れ物したの気づいて」
「そうか、わざわざ?言ってくれたら届けに行ったのに」
上岡はそう言うと、あっ、と少し焦り出した。
「いやごめんこれはきもいよなさすがに!」
「あはは、大丈夫ありがとう、でも多分女バドの部室は入れないんじゃない」
「、、あ、確かにそうだわ」
お互いに笑った。
「部活終わったらすぐ連絡するから」
明日のことだろう。
「うん、ありがとう」
「まじ楽しみにしとくわ」
じゃあな、と上岡は手を振って戻っていった。
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