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桜奈
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pixivで書いてるやつテラーにも下ろすことにしました。これお気に入り作品。すっごい好きなんでみなさんご愛読ください
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【設定】最敵財閥
長男 :キルシュトルテ
専属メイド:弐十
次男 :ニキ
専属メイド:しろせんせー
三男 :キャメロン
専属メイド:りぃちょ
末っ子:シード
専属メイド:はとね
最高位メイド:18号
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ーside rch
「…お腹すいたなぁ」
親に捨てられて10年。もう顔は忘れた。
いつもどうりの見慣れた路地裏で、今日を生き継ぐための飯を探している。治安も悪くて、いるのはホームレスか野良猫のみ。みんなタバコを吸って喧嘩をして殴り合って。こんな所でいるならもう、と思うが実際に勇気はなく今日も死にそこないの生活を送っている。
学校に行っても虐められて終わりだしね。最後に行ったのは小2の夏だったっけ。それすらも覚えていないほど俺にとってはどうでも良かった。
どうやって生きよう。どうしよう。何を食べよう。今日はどこで寝れるだろう。それで頭はもういっぱい。生きるための選択肢を探さなければならなんてこの国は終わってるな、なんて考えながら重い腰を上げ、生きるための必需品を探しに出かけようとした。
その時だった。
「なにっ?まぶし…」
突然俺の目の前に現れたソレは、現代に所存されているのか疑うくらいの明々としたライトが照っていた。
「何してるの?こんな所で」
だが車から出てきた彼はライト以上の輝きを放っていた。
「…あんた、誰」
閉じそうな目をようやくこじ開けた先にいたのは赤髪で透き通った緑の目をした人。
こんなに綺麗な人、初めて見た。
「俺?俺の名前はねキャメロンだよ。」
「キャメ…なんて?」
「キ・ャ・メ・ロ・ン!俺最連財閥の息子だよ?知らない?」
「なにそれ、初めて聞いた」
「えぇ〜!?嘘でしょ!?」
最連財閥とか何それ?お偉いさんなのかな?
十数年人目につかないような所で住んでるから知らないに決まっているのに。何を聞いてくるんだ。
「なに、何の用?お金くれないならどっか行って」
「お金欲しいの?」
「当たり前でしょ」
生憎お腹は空いているが一文無しだ。同情するなら金をくれと言う言葉があるが、それが今の俺以上に会っている人は中々いないと思う。なんかくれないかな。100円でもいいから。
「いくら?」
「いくらでもいい。飯が食えるならなんでもいい。」
それと同時に俺のお腹からは大きな音が。
「お腹すいてんならさ、俺の家きてよ。そんで一緒にご飯食べよ」
「…え?いいの?」
「いいよ、お金も欲しいならいくらでもあげる。なんだってしてあげるし欲しいものは全てプレゼントするよ」
「ほんとに!?」
「うん。ほんとほんと。その代わりにさ、」
彼が放ったのは俺が生きてきた16年の中で初めて聞いた1番衝撃的な言葉だった。
「俺のメイドになってよ」
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「え…すっごぉ…」
甘い言葉に誘われてついてきた先に見えたのは絵本でしか見たことのないような豪邸。白い外壁に青いステンドガラスがよく映える。どこまで続くんだと突っ込みたくなるほどの建物を囲っている門は今まで住んでいた路地裏の10倍はあるだろうか。
「ほんとに此処に住んでんの?」
「そーだよ。逆になんで住んでないとこに連れてくるの笑」
「まぁそりゃそーだけど…」
こんなすごい所とは思わないじゃん。
財閥とかメイドとか言ってたし金持ちなのかなとは薄々思ってたけど…此処までとは、ねぇ?誰も思わないよ。
「アンタって金持ちだったんだ」
「リムジン乗ってる時点で察さなかった?」
リムジン?なんだそれ?こんな学がない俺に難しい言葉投げんじゃねーよばか。とか言ってやりたかったけど心に抑えて置くことにした。金持ってるやつは大体なんか訳ありで怖いからね、注意しとかないと。
「じゃ、ついてきて。この家の作りちょっと難しいから」
「わかった。」
まぁ、怪しかったらご飯食べて帰ればいっか!と浅はかな判断でついて行ってみる。
この甘い選択が数分後の俺を後悔させることになるのだが、そんなこと誰が予想できただろうか。
「キャメロン様、おかえりなさいませ」
「あぁ、ただいま。」
「え、待って?なにこの人の数。」
開けられた玄関の先には終わりが見えないほどの人の行列が待っていた。
「俺の家のメイドと執事だよ。」
「すっご…」
「まぁまぁ、りぃちょくんも今日からこの家のメイドになるんだから」
「いやそれさ、ガチで言ってんの?」
だって普通に考えて男がメイドになるとか可笑しいもん。
しかも此処にいるのはとても綺麗な方ばっかり。こんな分不相応な俺がいていいのだろうか。
なんでこの人は俺を選んだんだろう。
「ガチだよ、りぃちょくんがいいからあそこで声をかけたんだ。ほら、向こうで他のメイドが待ってるから着替えておいで」
「…うん、分かった。」
「じゃ、おねがいね。」
「はい。わかりました」
少し中に入って周りを見上げていると目の前にいた綺麗なお姉さんが俺を試着室のようなところまで連れて行ってくれた。その間、俺はずっとキャメさんの言葉を脳内で反復していた。
俺が良いんだ。俺がいいから選ばれたんだ。なんか、それって。へんなきもち。
心がぽかぽかするような。こんなの初めてだ。
「こちらがりぃちょさんのお召し物です。」
「え!?これって…」
お姉さんが渡してくれたのは胸元のリボンがよく目立つフリフリのメイド服だった。長袖になっていてベルスリーブなのが可愛い。目の前のお姉さんのはロングスカートなのに、なぜ俺のは膝上丈なのだろうか。
これを女性が来たら可愛いだろうね。でも俺は男。こんなの似合うはずないじゃん。
「ではお召し替えがお済みになりましたら、また声をおかけください。」
「え、ちょっ!まっ…」
俺の言葉が伝わる前に目の前の扉は閉まってしまった。
「ううぅ…こんなの…絶対似合わない…」
もう本当に泣きそう。逃げたい。
案の定、細いと言っても男の骨格をしている俺に可愛いメイド服は似合わなかった。似合わないっていうか違和感みたいなものがある。やはり男の骨格をしているから出ている膝はゴツゴツだし肩幅も大きくて似合っていると言う言葉はお世辞にもならないほど遠かった。
これを他のメイドさんたちに見られるのも嫌だしキャメさんに見られるのも嫌だ。本当に逃げたい。なんであそこで簡単にメイドになるとか返事しちゃったんだろう。まだご飯も食べてないからお腹も空いたし。どうしよう。誰か助けろ。
そんな後悔をしているのも束の間、ドアがノックされ、嫌な予感が俺の頭を駆け巡る。
「りぃちょくーん?着替えれた?」
ほら、やっぱり。今1番見られたくない人で事の発端No. 1がきたよ。
だがこの際恥じ入ってばかりいても仕方ない。覚悟を決めていくしかないのだろう。俺は腹を括ってドアを開けた。
「どー、ですか…」
「…」
「、なんか言ってよ」
俺が扉を開いて前に現れると彼は黙りこくってしまった。
もう!穴があったら入りたいよ!てか着てって言ったのキャメさんなんだから似合わなくても一言くらいくれても良いでしょ!!
なんて彼に聞こえないであろう思いを訴えながら目を上げるとそこには
「いやかわい、似合いすぎでしょ…」
顔を真っ赤にしたキャメさんがいた。
「はぇ、かわいい、って…」
「あ…ごめん。忘れて、」
忘れてって…忘れられるわけないじゃん。可愛いなんて言葉。またさっきと同じ感覚に身体が襲われる。心がポカポカして、耳が熱くて、なんだか溶けてしまいそう。キャメさんを見るとこの感覚がずっと俺の心を締め付けてくる。なにこれ、なんなの?きっと俺の顔は今赤く火照っているだろう。目の前にいる彼と同じように。
そんな甘い空気感を破ったのはノックの音だった。急なことで驚き、体が跳ね上がってしまう。
「失礼します。お夕飯の支度が整いました。」
「あー、ありがとう。今行くね。」
「承知致しました。失礼します。」
「じゃあご飯食べにいこっか。」
「やったー!お腹すいてたんだよね」
「そうだよね。お腹なってたもんね。すぐに食べさせてあげられなくてごめんね。」
「ううん!キャメさんが謝ることじゃないよ。それにご飯食べさせてくれることにめちゃめちゃ感謝してるし。ほんとありがと!」
「りぃちょくん…」
感動しているキャメさんを前にメイド服なのは意味わからないけどと笑いながら横槍を刺す。でも拾ってくれて衣食住を提供してくれることに感謝してもしきれないのは本当のことだし、俺にとってはきっと人生で最高の好機だろう。
それに可愛いとか言ってくれたの、人生で初めてなんだもん。まだ警戒はしているが悪い人のような感じはしない。少し信じてみてもいいのかもしれない。
そんなよくわからない気持ちを抱えたままキャメさんと雑談しながらお食事処につくと、俺を待ち構えていたのは何人もの執事やメイドと豪華な食事だった。
「っうわ〜!!すっげ〜!!!」
夕餉の席は目が眩むほどの絢爛さに包まれていた。声を出さずにはいられないほどに。人生で一回見るか見ないかレベルで広く、まるで高級レストランだ。
「キャメさんいつもこんなところでご飯食べてんの?」
「そーだね。それとりぃちょくんと同じ仕事をするメイド達が2人いて、一緒にご飯を食べるんだ。きっと仲良くなれるよ」
「え!そーなの!お友達になれる?」
「うん、なれるんじゃないかな。俺の兄弟もいるしね。」
「へー。キャメさん家って大家族だねー。」
「まーそーだね。人いっぱいいるしね。」
いっぱいとかいうレベルじゃないでしょ。そんなことを思ったけれど、口に出すのも何か違う気がしたので飲み込んでおくことにする。
人生で初めての友達ができるという期待に胸を膨らませながらキャメさんの大きい背中について行った。
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ーside kym
退屈な会議の帰り道に無駄に大きい車窓から外を眺めていると、天使かと思うくらいの外見を持っている子が目に留まった。運命的に惹かれて専属メイドにするならこの子が良いという本能に抗えないまま車を止めさせ、家まで迎えた。
ボロボロな服に痩せ細った手足はその綺麗な顔に似合わなかったから絶対に俺が顔に釣り合う美人な身体にすると心に決めた。
最初は警戒心剥き出しだったが懲りずに話しかけると彼は沢山会話をしてくれた。どうやら世間知らずで俺らのことや誰もが知っているようなこともわかっていないようだった。でもその方が丁度いい。変に狙われたりしないから。
「名前なんていうの?」
車の中で尋ねた。
「桃原りぃちょだよ」
「へー、りぃちょくんっていうんだ。」
案外素直に名前を教えてくれて驚いた。だってずっと目が強張っていたから。警戒心が解けてきたとはいえまだ懐がなつかないところはあるのだろう。一線を引かれている感じがする。そんな心理的距離を俺はどうしても詰めたかったから沢山話すことにした。次第に彼からも質問をくれたり笑ってくれたりするようになった。
「アンタは何歳なの?」
「アンタじゃなくてキャメロンとかキャメとかにしてよ」
「えー、まぁいいよ。キャメさんは何歳なの?」
『キャメさん』。初めて呼ばれた名前に胸が熱くなる。家族にも友達にも呼ばれたことのない呼び方。何故、彼の一言一言にこんなに胸が昂るのだろうか。言語化するには少し難しかった。
家に着いた時りぃちょくんの目は輝いていてとても可愛かった。ピンク色の瞳を一生懸命踊らせて落ち着かない様子だった。見慣れている俺にとっては何処に心が惹かれたのかはわからなかったが、そんなりぃちょくんを見るのが好きだと気づいた。
「このお花かわいいね!」
「すっごい広いお家だね!メイドさんとか執事さんとか初めて見た」
「綺麗だねー。なんていう絵なの?」
「ここの手すり可愛い色してる!」
俺の方がずっと長く住んでいるはずなのに、俺の知らない素敵な箇所を沢山見つけてくれる。たった玄関からメイドに預けるまでの道のりなのに。そんな彼に俺は見入ってしまっていたことに気づいたのは後からだ。
ほんの数十分話しただけなのに今はもう君から目が離せない。まるでずっと俺の隣にいたかのようだ。
この家の決まりでメイドか執事にはそれぞれの対応したメイド服、執事服を着せることになっている。その為、りぃちょくんには専用の服を着てもらわないとこの家にはいてもらえないのだ。彼をメイドに引き渡し、地獄の部屋へ向かう。
そう、俺は父さんがすごく苦手なのだ。メイドを新しく増やす際に父さんの許可がいるのだが、父は何を考えているかわからないため、その選択が良いのかどうかもわからない。それなのに間違ったことをすると軽蔑した目で見られる。
そんな父さんに今から直談判しに行くのだ。
「あの、キャメロン様。少し良いですか?」
「あぁ、なんだ?」
今話しかけてきたのは俺の1番直近にいる執事だ。この裏切りなどがある厳しい競争世界の中で俺が数少なく信用している人物である。
「専属メイドののことなのですが…りぃちょ様でよろしいのですか?」
「…それはどう言う意味だ?」
空気が強張るのを肌で痛感する。
「専属メイドですので一生キャメロン様のお側に控えるメイドとなります。そんな重大な決断の相手をさっき拾ってきたばかりの方に託していいのですか?それに私は大帝主さまがお許しになるとは思いません。」
確かに、それはそうかもしれない。全員が次期社長候補に上がっている中で一般人、それも今日であったばかりの見知らぬ人を直近になる専属メイドにさせるのはおかしいことのかもしれない。それでも俺はりぃちょくんと一緒にいたい。
俺はもう自分の気持ちが引き返せないところまで来ていることに気づいた。
「…心配してくれてありがとう。でも、俺はりぃちょくんがいいから選んだんだ。彼は君が心配しているようなことは起こさないよ。父上に反対されたとしても俺が説得するから大丈夫」
「キャメロン様…」
執事は口を継ぐんだまま黙ってしまった。
え、俺変なこと言ってないよね!?沈黙の長さと比例して不安は押し寄せてくる。だがそれに反して俺の決意も強くなっていった。俺が決めたことだから。後戻りはしないって決めてりぃちょくんを選んだんだ。
信頼している人と意見がぶつかり失うことは怖いけれど、執事なら分かってくれるだろう。だってずっと俺の味方でいてくれたんだ。彼にはそれくらいの信頼を置いているのだ。
「…すみません。私が間違っていました。余計なお世話でしたね。キャメロン様の選んだ相手ならきっと間違いないでしょう。」
「執事…ありがとう。」
やはり分かってくれた。執事の一言が俺に自信を持たせてくれる。このまま父さんにも分かってもらえるように。認めてもらえるように。
扉が無機質な音を立てて、中と外を隔てる。
「失礼します。」
ここからが、俺の勝負だ。
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緊張が解け、現実へと少しずつ引き戻される。今までしてきたことを振り返るために頭はフル稼働されていた。
結局父上は構わない、とだけ言って立ち去られた。だが俺を蔑むような目ではなかった。今世紀1番の課題だったものがすんなりと解決し、胸を撫で下ろす。
父さんが認めてくれて本当に良かった。
「キャメロン様、りぃちょ様のお召替えが済んだようです。」
その一言は俺の脳内に全てを理解させる。そして頭の回転がどんどん早くなった。
そういえばそうじゃん。俺、りぃちょくんのメイド服見ることができるんだ。しかも俺好みのやつ。クソ楽しみなんだけど。
父の部屋から離れ彼がいる部屋へと向かう。いつも歩いているはずの廊下なのに今日はかつてない長さに感じた。
やっとついたドアの前で一旦立ち止まる。俺は期待を馳せ、心を躍らせながらドアをノックした。
そこから出てきたのは、紛れもない天使だった。
「え…」
「、なんか言ってよ」
なんか言ってよも何も…
可愛すぎて言葉が思い浮かばないんですけど!?
小さい手は袖から出ておらず、恥ずかしいのか癖からかはわからないが少し内股になっているのがとても可愛らしい。大きなリボンでより小さく見えるその顔は赤面していて俺の欲を掻き立てる。
そりゃこの数時間でりぃちょくんのメイド姿なんて数億回妄想した。父親と話している時でさえ頭によぎった。だがやはり実物は違う。一千億倍くらい可愛い。いやほんとに。似合いすぎてる。今まで他の人のは何度も見てきたはずなのに好きな人のメイド服はこうも違うものなのだろうか。
「はぇ、可愛いって…」
まずい、声に出てしまっている。あまりの可愛さに開いた口が塞がらなかったんだ。仕方ない。
てかはぇってなんだよ!可愛すぎないか流石に。できれば5000枚くらい写真を撮りたい。動画もずっと回しときたい。できることなら仕事用以外のアプリのアイコン全てこれにしたい。印刷してりぃちょくんのぬいぐるみでも頼もうかと本気で悩んでいるところだ。
「あ…ごめん、忘れて。」
一旦冷静さを取り戻し我に返った。変に勘違いされてこの関係が終わるのも嫌だ。こうしてチキンな俺が爆誕するのだなと納得して首を縦に振る。
とか考えてるうちにぼそっと聞こえた「忘れられるわけないじゃん…」というりぃちょくんの一言を俺は聞き逃してはいない。りんごのように染まった頬と一緒に。
はぁもう本当に可愛い。抱き潰したい。好きな人のこの姿を前にして甘ったるいセリフを聞くとそんな汚い欲しか湧かないのだ。こんな可愛い姿を誰にも見せたくないという気持ちと早く俺の専属メイドがりぃちょくんになったと自慢したい気持ちが入り混じる。俺の理性をなんとか繋いでいると、ドアのノック音が聞こえ一気に自分を取り戻した。生憎今から夕食なので前者の希望は通らないが仕方ない。
りぃちょくんの頬のあからみもどんどん引いてきているようだ。それと同時に彼の細い腰回りから可愛らしい音が。
そうだ。りぃちょくん超腹ペコだったんだ。ご飯を食べるという程で呼んだのに忘れていたな。申し訳ない。
彼の小さい手を取り、誘導の準備につく。
「じゃ、行こっか」
「うん!」
夕食の席までの道のりは本当に短かった。まるでさっき歩いてきた廊下とは別のものであったくらいに。緊張と同時に溢れんばかりの期待を寄せていたようで、彼の瞳は輝いていた。他のメイドと友達にもなれるんじゃないかな、と言うともっと顔いっぱいに宿望を滲ませているのが可愛くて自然と笑みが溢れる。
彼を席に着かせ俺も横に座ると横から鳥のようにあれやこれやと絶え間ない質問がうるさく飛んできた。まぁいつものことだから慣れてるんだけどね。
りぃちょくんの方を見ると集中攻撃されて思考が迷走している。そんな彼に相好を崩しながらも一つずつ答えていく。
「この子は今日から俺の専属メイドになるりぃちょくんだよ」
「桃原りぃちょです。よろしくお願いします。」
「えー!そかそか遂にキャメにもできたのかー。俺はニキ!よろしくな!」
「キャメさんいい趣味しとんなー。俺はシード。よろしくー」
「俺はキルシュトルテだよー。よろしくな。」
「また俺らの仲間できたんや!うれしー!ニキの専属メイドのしろです。よろしく!」
「ちょっとちょっと笑、一気に話しかけるからりぃちょくん混乱してんじゃん笑。俺は弐十。キルシュトルテの専属メイドだよー。よろしく!」
「???しと?にき?シロトルテ?なんて?」
「笑笑りぃちょくん困惑しすぎてる」
「しろトルテやばいわwwww俺の名前覚えてくれてんのサイコーかよ!」
「いやニキだけじゃなくて俺も覚えてくれとるはずやろ。な?りぃちょくん!」
「え、えっと…」
「ちょっと笑りぃちょくん困らせちゃダメでしょー」
この家はやはりいつも通り騒がしい。それに馴染んでいるりぃちょくんを見て、彼も俺らの家族の一員のように見えてしまった自分に驚くと共に唐突に肩が軽くなる。そうなんだ、りぃちょくんのことばかり心配してたから気づかなかったけど俺も緊張してたんだ。彼が馴染めるのかとか嫌にならないかとか色々。でもそんな心配をするのが無駄なくらいこのメンバーに馴染んでいる。それは俺にとって1番嬉しいことだった。
「ふー、こんなにお腹いっぱいになったの初めてだよ!ご馳走様。」
お皿にカチャリとフォークを置くと、どうやら満腹になった彼はは満足げな顔をしていた。
「ほな、風呂入りにいこかー」
「風呂?今日入るの?」
「今日入るのって、風呂は毎日入るもんやろ。あいつを除いて。」
「あれw俺のこと呼んだ?」
「そっか、りぃちょくんはあんまりお風呂にも入れてなかったんだ。」
何かを察した弐十ちゃんがどうでもいいようなニキしろの会話をぶった斬ってりぃちょくんと話を続ける。
「そーなんだよね。だから毎日風呂に入るとか贅沢だなって」
「りぃちょくん…。じゃ、今日はみんなで長風呂しちゃお!仕事内容とかも詳しく話したかったし!」
「丁度良い機会やしええやん。そーしよそーしよ。」
「え!ほんとに!?やったー!」
どうやらもうメイド組は仲良くなったようだ。りぃちょくんも弐十ちゃんやしろせんせーと既に打ち明けていて、安堵と共に少し暗い渦が取り巻く。俺ってこんなに人を深く愛して嫉妬深くなってたんだ、と自分に感心しながらも風呂に向かう3人を見送り届けた。
「いやー、良かったねキャメさん。りぃちょとボビーや弐十ちゃんが仲良く慣れそうで。」
「ほんとだよ。みんなりぃちょくんが入りやすい雰囲気作ってくれてありがとね。」
「まーせっかくのキャメさんの専属だしね。仲良くなりたいじゃん?」
「これから家族になるのも同然やしもっと打ち解けとけてけたらええよね」
本当に俺の兄弟が優しくて、俺のことを理解してくれていて良かったと心から感謝すること限りなかった。
俺らも風呂から出た後はお互いに髪を乾かし合い、一つのベッドでお互いの方を向いておしゃべりしながら眠りにつくことにした。最初は彼は一緒に寝ることに抵抗があったようで床で寝るだのなんだのごちゃごちゃ言っていたが、専属メイドと一緒に寝るのはこの家の決まりだと言うと渋々布団の中に入ってくれた。ダブルサイズのベットだったため丁度良い広さだ。
「ねーえ、キャメさん。寝た?」
「んーん。寝てないよ。どしたの?」
「いや、なんか顔近いの違和感だなって。今まであんまり人と一緒に寝たことないから。」
「へー…」
彼は誰かと一緒に寝たのはいつぶりなんだろう。おれはいつでも兄弟がいたから怖い日も耐えられた。でも彼はどうしていたのだろう。怖くても辛くてもしんどくても。1人で、きっと。そう考えると胸が締め付けられて急に彼を抱きしめたい感覚に襲われた。
「ちょ、なに急にwどしたの」
「いや、なんかわかんないけど、急に抱きしめたくなったって言うか…」
「いやなんだよそれw」
彼の顔がくしゃっと崩れ笑顔が溢れる。まるでおれの体温を受け取って人の温かみを感じるのがすごく嬉しい、と言っているみたいに。
「おやすみキャメさん。いい夢見ようね」
「うん、いい夢見よう。おやすみ」
そう言って、おでこにキスをした。
彼が息を立てながら眠りに落ちていく中、おれは緊張と胸の鼓動の高鳴りで目を瞑るのも難しかったので、明日のおれに任せて見ることにした。もし明日日中眠くても、それはりぃちょくんのせいにしよう。彼が可愛すぎるのが悪いんだから