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ひな
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#日常
つばさ
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ライラック💜💫【🎨🫧】
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コメント
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お疲れ様です〜!第1話読了しました。 最初の「太郎は観測者である」って一文で一気に引き込まれたわ。日常のババ抜きの風景の中で、太郎だけがちょっと距離を置いて見てる感じ、すごくリアルに描かれてて刺さった。特にカード引く手が一瞬止まるあのシーン、思春期特有の疎外感がじんわり出てて良かった。透明なガラスで隔てられてる感覚、わかるなあ…。 この観測者設定が今後どう転がるのか、めっちゃ気になる🔥
太郎は観測者である。
それは、何者にも覆すことのできない、この世界の絶対的なルールだ。
しかし、その事実を知る者は二人しかいない。
私と、読者諸君のみである。
この世界に生きる者は誰一人としてこの事実を知らない。
太郎自身でさえ、自分が観測者であることに気づいていない。
太郎は高校二年生である。平凡な家庭に生まれ、父はサラリーマン、母は専業主婦という。
そんな両親を持つ太郎もまた、平凡である。
大した悩みもないが、強いて言うなら最近小言の多い母が少しウザイ程度である。
そんな彼は今、3人の友人、奏斗、タケル、ミナと共にテーブルを囲んでトランプを眺めている。
「言っておくがね、今日のババ抜きでいくら僕をハメようとしても無駄だ。昨日のババ抜きでの君たちの醜悪な連携プレイを分析し、既に完璧な対抗ロジックは構築済みだ。」
黒髪のメガネをクイッと押し上げ、早口でまくし立てるこの男は奏斗と言う。バカ真面目で勉強において学年上位をキープしている。だが少し抜けているところがあり、周りからは頭はいいけどバカ、というわけのわからないレッテルを貼られている。
「ふっ、相変わらず見苦しい言い訳だな奏斗。昨日のボクの華麗な立ち回りに手も足も出なかった敗北者が何を吠えているんだい?王子たるボクの引きの強さの前にひれ伏すがいいさ。」
白髪ショートの髪を靡かせ、鼻で笑い、足を組み直して言っているこの女はミナと言う。重度のナルシストで、自分を王子様系超絶美少女だと信じて止まない精神異常者である。だが、それに対して否定できないくらいには美しい容姿をしている。ただし、クールな反面プライドが高く、負けず嫌いである。ボロボロに負けると半泣きで言い訳を並べ、人一倍努力をする。それ故に文武両道、勉強もスポーツもできるという万能っぷりである。
「いやー、でも俺が仲間になったフリして裏切ったら半泣きで俯いてたじゃん。あれ動画で撮っとけばよかったなぁ」
金髪を刈り上げて、妙にうざったい顔をしたこの男はタケルである。勉強もスポーツも中の中程ではあるが、悪知恵だけ働く。性格が少し悪いが、明るくノリの軽いムードメーカーであるのでそこまで気にされていない。妹がいるので、意外にも面倒見がいい。割と適当に生きているので、面倒くさいことには首を突っ込まない主義である。
「なっ….!?泣いてなどいない!次なる策を練っていただけだッ!」
「裏切られて半泣きになるなんて子供じゃないか。負け犬はどっちかな」
早くも不毛な争いで口論を始める3人、タケルは2人の怒号をBGMに手札を整えながら呆れ顔の太郎へ振り返り、ニヤリと笑みを浮かべた。
「今日も今日とてこの2人がうるさいんだけど…まぁ、負けたヤツが購買のパン奢りってことで、….勝負だぜ太郎」
太郎の手がタケルの手札に触れるか触れないかの位置でピタリと静止する。その沈黙は騒がしい教室の喧騒の中で一際目立つ間だった。
「どした?早く引けよ」
「何を躊躇っているんだい?僕の完璧な戦術に怖気付いたとでも?」
「ふふ、まさかビビって手を出せないのかい?王子の僕に挑む度胸もないとは、情けないね」
3人がそれぞれ好き勝手に煽る。ミナが挑発的にカードをパタパタと扇のように広げ、奏斗が腕を組んで余裕の笑みを浮かべ、タケルだけが妙に鋭い目で太郎を観察していた。
「賭けの内容が嫌か?確かにパン奢りはダルいけどな」
「だったら降りたっていい。その変わり、罰ゲームは1番恥ずかしい秘密を暴露に変更になるが、僕は一向に構わない。負ける気がしない。」
「いいねそれ。ボクは恥ずかしい秘密なんて何も無いから大歓迎さ」
3人の視線が太郎に集まる。太郎が罰ゲームに不満を思っていると勘違いしているようだが、実は違う。
この時、太郎は思ったのだ。唐突に、そして必然的に。
自分の存在意義というものを。
何かがあった訳でもない。
本人にも誰にも、何が起きたのか分からなかった。ただ、何となく周りとは違う、蚊帳の外のような自分の存在を。思春期特有の時期とも考えられるそれは、太郎にとって人生を変える、何かなのかもしれなかった。
だがそれが何かは誰にもわからなかった。
太郎はハッとして何事もなくタケルの手札から1枚のカードを抜いて、ゲームは滞りなく進行した。
奏斗が理路整然と戦略を語り、ミナが
「王子としての引きを舐めるな」
と意味不明な強気を披露し、タケルが悪知恵でイカサマをしてジョーカーを回避し、2人からヘイトを買う。毎度お馴染みの光景。
太郎は適度に勝ち、適度にカードを切り、適度な場所で笑って見せた。完璧な観測者としての立ち回りだった。
「はい俺アガリ。奏斗、俺焼きそばパンね」
タケルが最後の2枚を捨てて勝利宣言をした。
「あ…有り得ない…僕の計算では右がババである確率が最も高いはずだったのに…!お前…イカサマをしただろ!」
「まずい…ボクも2回ババを引かされてしまった…くそ、くそくそ…!」
ミナが机をバンバン叩く音が教室に響く。
奏斗が猛烈に再選を要求し、タケルが
「じゃあ次はジュースも追加で〜」と火に油を注ぎ、またカードが配られる。
放課後も、帰り道も、太郎はいつも通り3人の隣にいた。笑い、頷き、たまにツッコミを入れる。それで十分だった。
十分なはずだった。
だが夜、自室のベッドに寝転ぶと、天井を見つめる目がふと曇る。アイツらと居るとたのしい。それは間違いない。けれど、その楽しさの中に自分だけが透明なガラス1枚で隔てられているようなあの感覚。
笑っているのに、何故か他人事の様な、騒いでいるのに振り付けだけ覚えている観客。
思春期という季節は残酷で、そういう些細なズレが、ある日突然どうしようもなく膨れ上がることを太郎はまだ知らなかった。