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僕を救ってくれたのは

第1話 - 僕を救ってくれたのは

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2025年10月10日

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天翔(てんしょう)

「ここにも、僕の居場所はないんだろうな。」

今から四ヶ月ほど前、僕は親に内緒でテラーノベルという小説アプリにアカウントを作って小説を投稿した。

僕は元々、人と関わることがとても苦手だった。相手と目を合わせることも、何かを一緒にすることも、話すことも、何もかも出来なかった。だから僕の周りには友達も、関わろうとする人もいなかった。

【変わりたい】

何度そう思っただろう。僕が変われば、周りの人も僕に興味を持ってくれるはず、僕と友達になってくれるはず。小学生の頃はそんな希望を抱いていた。でも、人間はそんな簡単に変わることはできない。ましてや人と関わること自体出来ないのに、いきなり話しかけて、友情や人間関係を築ける訳がない。結果は予想通りだった。僕は自分自身を恨んだ。

「どうして話せないんだ。」「何で怖がるんだ。」

「家族となら話せるのに。」「一人はもう嫌だ。」

怒りと哀しみの感情ばかりが僕の頭の中にはあった。遺伝でも何でもなくて、病気でも何でもない、勝手にどこからかやってきて、勝手に僕に順応した〔言葉にできないコレ〕が大嫌いだ。学校に行っても、家族と話していても、生きていても、何一つ楽しくなかった。

そんな僕の気持ちを和らげてくれたのが、【ゲーム】だった。ゲームはインターネット上だから相手と何も話さなくていいし、会話をするにしてもチャットを使えば簡単に話せる。一時期はゲームのお陰で楽しく過ごせていた。でも、それも一瞬だった。新しく問題が出来てしまった。チャットばかりでの会話のせいで、声を出すことも億劫になってしまった。学校では一言も話さない、なんてことも沢山あった。僕のせいで親は仕事で忙しい中学校に呼び出されることもあった。

「違う。僕は困らせたかったんじゃない。」

そんな風に毎日思った。

この出来事を深刻に思った両親は、僕を転校させることにした。新しい環境なら、少しは変われるんじゃないか。両親の期待の反面、そんなことは一切なかった。ああ、やっぱり僕は変われないんだ。ずっと一人で、生涯を孤独に生きていくんだ。両親を困らせてばかりな、親不孝者だ。

中学生になった。中学生になったからって、スマホを買ってもらった。中学でも友達は出来なかった。大体の人は同じ学校で、そこで友達をつくってた。

「やっぱり僕は一人なんだな。」

ずっと孤独を感じていた僕は、もう寂しいなんて思わなくなっていた。人間関係なんかどうでもいい。一人で過ごそう。

でも、このアプリと、この人との出会いが、僕の人生を180度回転させた。

僕がソフィアチャンネルさんにどハマりして、

『ソフィアチャンネル』

と検索をかけた。沢山のページがある中で、目を引くものがあった。

【ソフィアチャンネルのテラーノベル】

テラーノベル？何それ。興味本位で開いてみた。するとそこに出てきたのは、沢山の小説とその小説と一緒に書かれているアカウント名。沢山の知らない人たちが、同じ話題に集まって自分たちの個性を出しながら輝いている場所。僕はここで思った。

「ここなら僕を認めてくれるんじゃないか。」

そう思って、簡単なアカウントを作って一つの小説を書いてみた。

『目に見えるものは本物か』

投稿してから思った。今まで現実でも、インターネットでもまともに会話出来ていなかったのに、ノリだけで始めてしまったここでも、友達も相手との関係もつくれないんじゃないか。

「ここにも、僕の居場所はないんだろうな。」

そう思ってしまった。簡単に諦めていた。

少し時間を空けて小説を確認した。そしたらそこには一つのコメントが届いていた。

「素敵なストーリーをありがとうございます」

最初に目に入った言葉はコレだった。僕が初めて書いた小説を褒めてくれた。推しと好きなペアで嬉しいとか、これからも応援してます、とか。この人は、誰とも繋がっていない僕の小説に一番に反応してくれて、フォローまでしてくれた。

ちびちゃん

名前に”ちび”と入っているのに、存在は誰よりも大きく感じた。ちびちゃんさんのお陰で、沢山の方々と繋がる事ができた。

最初にミナミさん、ルナさん、レミリサさん、他にも沢山の方々が、僕を褒めてくれて、認めてくれて、本当に嬉しかった。ドンドン会話が楽しくなっていった。自然と、皆さんの小説やイラスト、コメントを読んで笑えるようになった。声を出して笑うことも増えた。人と、皆さんと話すことを少しずつ、克服できている気がした。

皆さんとの関わりのおかげで、僕に初めての友達ができた。自分からではなかったけど、相手が僕に興味を持ってくれた。僕がこんなに変われたのは、全てちびちゃんさんの存在を始めとして、皆さんとの関わりのお陰だった。