こんばんは、御宿です。クリスマスなのにクリスマスにちなんだ投稿できずすみません…「無情」は通常運転とさせていただきます。(即興でカンヒュのクリスマスにちなんだ小説書けと言われて書けないこともないですが、部活の同輩に無理やり誘われてカラオケ行ってきた後で支離滅裂なこと書きそうで怖いので辞めときます…)
ということで始めます!
※続きです!
⚠️旧国表現あり。戦争賛美・政治的意図共にありません。
「………はい、はい…………はい、分かりました。ありがとうございます。では、そのように。はい、………いえ、お気になさらず。ありがとうございます。では………はい、アメリカさんも。……………それでは、おやすみなさい」
電源を切った携帯をデスクに置くと、そのままざっと資料に目を通し、パソコンに情報を打ち込んでゆく。
「…………」
目の下に濃いクマを作りどんよりとした目でデスクトップを見つめた日本は、入力した情報に誤りがないのを確認してからため息をついた。実を言えば、数十分前までドイツとも連絡を取り合っていたのだ、全く心身ともに休まる暇がない。
デスク上の置き時計に目をやった日本は先ほどよりももっと大きなため息をついた。すでに5時を回っていた。もちろん朝の5時だ。これでは残業以外の理由で徹夜だ。ふざけんなと叫びたい衝動を抑えつつ日本は伸びをした。と、その時だった。
ガチャ、と部屋のドアが開く音に続き、可愛らしい高い声が室内に響いた。
「お兄ちゃん……」
振り返れば、そこにはセーラー服を着込んだ妹・にゃぽんが立っていた。チャームポイントの大きな猫耳が元気なく伏せられている。彼女が心配している時の癖だ。
「にゃぽんか。どうしたの?」
おそらく寝不足のひどい顔をしていただろうから、精一杯優しい笑顔を作ってから日本は振り向いた。にゃぽんは、どこか沈んだ顔をしていた。
「お兄ちゃん……」
「……ああごめん、もうそんな時間だっけ。朝ごはん、作らなきゃだね……もしかして、起こしちゃった?声大きかったかな、ごめんね」
にゃぽんはフルフルと首を横に振った。耳の辺りにつけられたアクセサリーの鈴が、チリチリと音を立てる。にゃぽんが口を開いた。
「お兄ちゃんがアメリカさんと話してたの聞いたの……お兄ちゃん、日本はウクライナを支援するって、本当?」
日本は少しばかり詰まった。それから、若干逡巡しながらも答えた。
「まぁ……それはそう、だよ。それでもドイツさんやアメリカさんとは違う。僕らは人を傷つけられるようなものは支援としては送らない。ヘルメットとか防弾チョッキとか、まぁまだ保留事項はあるけれども……」
「それでもウクライナを支援することには変わりは無いんでしょう?」
日本の声に被せるようににゃぽんが言った。その言い方にどこか怒りが滲んでいるようで、日本は身構えながら聞いた。
「そうだけど……それが、どうしたの……?」
「ねぇロシアは?」
「……へ?」
「ロシアはどうするの?」
「ロシアさん、は…………」
にゃぽんが口元を歪ませた。
「ロシアはどうなるの⁉︎ 」
ビク、と身を震わせた日本は戸惑ったように動きを止め、妹の顔を見た。どこか父親に似ているその目元が悔しそうに光ったのを、日本は見逃さなかった。
「……ロシアさんが、どうなるかって、どういう意味?」
日本はにゃぽんの気を鎮めるように穏やかに聞いたが、ドイツに使ったその手はにゃぽんには通用しなかったようだ。にゃぽんは声を荒らげた。
「ロシアへの支援は誰がやるの⁉︎ 話を聞いた限り、ほとんどの国がロシアのこと考えてない!そりゃロシアに肩入れするわけじゃ無いよ⁉︎ ウクライナだって被害者だもん!でも……でも!ロシアは!孤立してるロシアを、あのままほっとくって言うの⁉︎ 」
「にゃぽん!落ち着いて‼︎ 」
日本は慌ててデスクを立つとにゃぽんのところまで小走りに歩いて行き、その細い肩を掴んだ。
「にゃぽん落ち着いて聞いて!」
「私は落ち着いてる!」
「落ち着いてない!」
「落ち着いてるってば‼︎ 」
「にゃぽん!良いから聞いて。今、ウクライナさんは実のお兄さんであるロシアさんから侵略を受けてる。僕らは西側諸国として、今はウクライナさんのことを助けてあげなきゃならない。でないとウクライナさんが───」
「うるさいっ‼︎‼︎ 」
バッ、と日本の手を跳ね除けたにゃぽんは涙の浮かんだ目で日本を睨みつけた。
「お兄ちゃんのそれはお兄ちゃんだけの決断によるもの?違うでしょ⁉︎ 私が言いたいのはそういうことなの!」
「⁉︎ にゃぽん、何、言って………っ」
「お兄ちゃんはアメリカさんの言うことを聞いてその決断をしたんでしょう⁉︎ ねぇ‼︎‼︎ 」
にゃぽんが怒鳴った。日本が苦しそうに顔を歪める。にゃぽんは止まらなかった。
「ウクライナが被害を被ってるのもロシアがウクライナに侵攻を始めたのも全部、全部分かってるよっ‼︎ だからウクライナに支援してあげるんでしょ⁉︎ 私だってウクライナの味方だよ!でもロシアだって大切な友達だもん!なんでロシアのことは考えてあげられないの?アメリカさんと話したからでしょう⁉︎ アメリカさんは、アメリカさんは………っ‼︎ 」
「にゃぽん‼︎‼︎ 」
日本は怒鳴っていた。いつもの兄のように優しい、柔らかい物腰の口調からは想像もつかないようなどすの利いた声で怒鳴られ、にゃぽんはびっくりして身を震わせた。しかしにゃぽんはそこで引き下がるようなやわな女では無い。闘志の燃えるような悔し涙の浮かぶ目で日本を睨みつけた。日本はいくらか声の調子を緩め、にゃぽんに諭すように言った。
「いい?にゃぽん。今世界では、多くの国がロシアさんをウクライナさんへの加害者として見てる。もちろん全部の国じゃ無いよ。でも僕ら日本は、ウクライナさんの味方としてこの世界に存在している」
「………なんで。どうして⁉︎ どうしてウクライナだけなの⁉︎ 」
「ウクライナさんが一方的に攻撃を受けてるからだよ。あの攻撃はあまりにも理不尽すぎる。それにほとんどの国が、ロシアさんを……」
「でも全部の国じゃ無いって言ったじゃん‼︎ 」
「にゃぽん、僕だってどちらのことも見捨てたわけじゃ無いしロシアさんのことだって考えてる。でもアメリカさんは完全にウクライナさん側だ。忘れたのか、にゃぽん。今の僕らがあるのはアメリカさんのおかげなんだよ。それに……どちらかというと、僕の天秤もウクライナさんに傾いてる。だったら、彼の意向を取り込みつつ僕らだって支援の方向を固めなきゃ……」
「何それ………」
にゃぽんの肩が怒りに震えた。
「何それ!まるでアメリカさんに育てられたような口振りね‼︎ 私たちはアメリカさんの子供だって言いたい訳っ⁉︎⁉︎ 」
「違う!なんて事言うんだにゃぽん‼︎‼︎ 僕らの父親は、父上は!大日本帝国ただ一人に決まっているだろう⁉︎ 何も分かってないくせに、それをお前は‼︎ 」
「分かってないのはお兄ちゃんの方だよ‼︎‼︎ 」
悲痛な声だった。心の痛みを、思い切りこちらにぶつけてくるような。眼前で、扉が音を立てて閉められた。板一枚挟んだ向こう側で、にゃぽんの叫声が遠く、鈍く響いていた。
「…………」
今にも泣きそうな顔で、日本はたった今目の前で閉じられた木目調の扉に手を置いた。にゃぽんが出て行ってから、重苦しい静寂が重くのしかかってきた。その見えない重圧に押しつぶされそうになりその場にずるずると座り込んでしまう。
「………なんで……」
ポツリと呟く。
「なんで……あんなこと、言っちゃったんだろう」
分かっていた。にゃぽんはいわゆる、日本の精神的なもの、言うなれば日本の本来の性質、文化の化身のような存在だった。にゃぽん自身によって行われる、いわば“異文化交流”ともなれば、その範囲は国境を、大陸を、時空をも越えることがある。だからにゃぽんの他の国との交流の範囲は全くもって未知数だった。それほどまでに多いのだ。その交流圏は欧米に始まり、西欧の国々はもちろん、東欧、アジア、中東、果てにはアフリカ大陸に君臨する国々にも国として仲の良い友達を何人も持っている。言わずもがな、日本が苦手意識を持つ中国や韓国、ロシア、その弟であるウクライナともすこぶる仲が良いのである。
だからなのだろう。
にゃぽんはにゃぽんなりに、ロシアとウクライナという二人の大事な友達を平等に守ろうとして……そして先ほど、玉砕したのだ。……日本が数刻早く、ドイツとアメリカとのウクライナの支援の意向を口約束として固めてしまったことによって。
「……にゃぽん、ごめん……」
日本は俯いた。正座した太腿に、涙が落ちた。
「……ダメなお兄ちゃんだなぁ……僕は……。僕は、どうすれば、良かったんでしょうか……教えてください……父上……」
その声は、誰にも届かない。
ただ、夜明けの光がカーテンの隙間を割って部屋の中に差し込み、日本の華奢な背中を照らし出すのみだった。
※私の中で日本一家は仲が良い設定なので、今回喧嘩別れみたいになってしまいましたが、多分あのあときちんと仲直りしてます。ご安心ください…
あと余談なのですが、スマホ正式に返還してもらいました(今まで半分取り上げられてた状態だった)X(Twitter)垢復活させようか迷ってます…。Xの方のカンヒュ界隈って今どんな感じなんでしょうか…?
余談でした。ここまで読んでくださった方、ありがとうございました! メリークリスマスです。
コメント
5件
あぁ。、、、ついに日本まで、、、
そーだよなぁーロシアにもロシアなりの理由があるもんなぁ。今の世界情勢が全てじゃないもんなぁ……。やっぱり戦争には善も悪もないんだろうな 考え深いですなぁ
違う視点で物事を見るのも大切だな、と思わされる回でした。日本文化の化身にゃぽちゃん素敵!いろいろな気持ちが爆発して言語化できませんが大好きです!!メリークリスマス!!