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世界精神が僕を苛ますというのならば、僕はどうすればいい?
フリーゲート42415番、そこが僕の終着点のような気がする。
そんなことを思いつつ、今日も馴染みの喫茶店に立ち寄る。
そこではいつも珈琲とケーキを貪ることにしているのだ。
『君はいつも天才であることを自負してましたね?
しかし、君のいったいどこに天才性が存在するとでも?
私の目の前にいるのは、ただの自己欺瞞の気狂いじゃないか』
そんな声が、どこからともかく僕を苛ます。
十九世紀様式の僕にとって、二十一世紀は身に合わない服だった。
それを多少なりとも理解してくれるのであれば、幸いだっただろう。
しかし、いずれにしても僕が理解されることはありませんでした。
僕の文はいつでも好奇と軽蔑の目に晒されていたのだ。
まるで動物園の檻に入れられた黒ん坊のような気分だった。
店内に流れるのはショスタコーヴィチの1905。
僕はそのリズムにゆったりと身を委ね、椅子にもたれかかる。
「あっ、李箱さん、こんにちは!」
僕の前に現れたのは、ツルだった。
例にもよって、こんな場所にまで現れるとは。
彼女は僕のファンだといい、僕も悪い気分じゃない。
少しずつでも、僕を理解してくれようとしているんだから。
ねえ、だとすれば、僕に救いがあるとでもいうのですか?
「あっ、前の席、よろしいでしょうか?」
「ああ、いいよ」
こうして向かい合ってテーブルを挟む僕とツル。
彼女が注文したのはサンドイッチとグレープフルーツジュース。
アスリート精神というか、尚武精神ともいうべきか?
落ちぶれた文士の僕とはまさに対極的といえましょうとも!
珈琲とケーキ、サンドイッチとグレープフルーツジュース。
珈琲とケーキ、サンドイッチとグレープフルーツジュース。
珈琲とケーキ、サンドイッチとグレープフルーツジュース・・・。
「李箱さんって、ここによく立ち寄るんですか?」
「うん?ああ、そうだよ」
「・・・やっぱり。なんか李箱さんに似合ってるなって」
さて、この場合、二つの意味が取れることでしょう。
貴方によく似合った、落ち着いた喫茶店ですね。
または、お前なんかにはこのくらいの店がお似合いだ!
もちろん、僕はツルさんを信頼しているので、前者だと信じる。
僕だって人間とウマ娘を信じているんだ。
ただ、人間社会がどうにも僕の肌に合わないだけに過ぎないのだよ。
なあ、そうとは思いませぬか?
「この喫茶店にはたまたま出会っただけだったけどね。
でも、なんだか好きになって、ちょくちょく訪れるようになった」
「・・・私も好きになりましたよ、ここ」
気に入ってもらえて何よりだったが、僕は寒気を感じた。
どうして僕はこの子に何か僕が避けたいものを感じたのか?
まるで僕が神棚に飾られている気分だった。
いやはや、まったくもって気のせいでしょう!
彼女が僕のファンだとしても、彼女が僕に恋をしてることはない。
トレセンの生徒というのは、トレーナーと付き合うものだ。
決して、現役生徒が僕みたいな文士にぞっこんになることはないでしょう。
逆にそんなことがあるとしたら、僕は三女神を恨むことでしょう!
まったく!ありえませぬな!
「奇怪ッ!こんな文章を書く輩がいるとは!」
「・・・理事長、トゥインクルは誰もが読む月刊誌だ。
カフェテリアにも置いてしまっている。
編集部に彼の詩や巻頭言を掲載するのはやめるように言った方がいい」
「賛成ッ!なんかカルト的なファンも生まれそうだしな!」
「かくいう私も理解しようとして、精神が変な方向に歪みそうになった。
・・・他にいないといいんだが・・・まあ、大丈夫だろう」